【スターダム】10年の歴史を凝縮した記念大会を大成功させたなつぽいが語る“同期”の存在
めまぐるしい時間を過ごしているプロレスラーがいる。「なつ&さおりー」のパートナーでありCOSMIC ANGELSのメンバーでもある安納サオリとともに、プロレスデビュー10周年を迎えたなつぽいその人だ。5.31大田区大会で開催された10周年記念興行は大成功に終わったものの、6.21代々木大会ではゴッデス・オブ・スターダム王座の奪回に失敗してしまった。4月には大きな別れも経験したなつぽいに、前編では5.31を中心に振り返ってもらった。

私もサオリも記念試合で戦いたかった選手、それが橋本千紘と岩田美香
めまぐるしい時間を過ごしているプロレスラーがいる。「なつ&さおりー」のパートナーでありCOSMIC ANGELSのメンバーでもある安納サオリとともに、プロレスデビュー10周年を迎えたなつぽいその人だ。5.31大田区大会で開催された10周年記念興行は大成功に終わったものの、6.21代々木大会ではゴッデス・オブ・スターダム王座の奪回に失敗してしまった。4月には大きな別れも経験したなつぽいに、前編では5.31を中心に振り返ってもらった。(取材・文=橋場了吾)
2015年5月31日、なつぽい(当時のリングネームはなつみ)は、タッグマッチでプロレスデビューを果たした。対角には、同じくデビュー戦となった安納サオリがいた。その二人が、ちょうど10年後にあたる2025年5月31日に10周年記念興行を開催、二人がタッグを組み、同じく2015年デビュー組の橋本千紘&岩田美香と対戦し、見事勝利を収めた。
「サオリはもういなくてはならない存在になっています。お互いの考えもなんとなく察する仲にもなっていて、意外と浮き沈みはありますし、こじらせたりもしますけど、5.31が終わった今は自分が今どう進むべきなのか見極めてるんだろうと思います」
少し離れていた時期があったものの、10年前に出会ったなつぽいと安納サオリは今も濃厚な時間を過ごしている。逆に安納から見たなつぽいとは。
「多分、初めて会ったときから“友達”でもないし“親友”でもないし、だからといって“共演者”という感じでもないし、“仲間”でもないし。うーん、“空気”かな。ないとしんどいし、生きていけないじゃないですか。だからといって常に意識しているわけでもない。でも……“負けたくない存在”なんですよ。私はなつみにはなれへんし、なつみは私にもなれへんし。一番信頼しているけど、一番警戒している相手、ですね。なつみが動き出したら『私もなにかしなくちゃ』って思わせてくれる存在が、一番近くにいるんですよ。それは、一番恐怖でもあるんですよね。(なつぽいと)会っていなかった5年間、なつみがスターダムにいて、私がフリーのときは、会いたくなかったですし、話したくもなかったですけど、なつみみたいな存在は常に探していましたね」
こんな二人が10年後のまったく同じ日に10周年記念興行を行ったのだから、“奇跡”に近いことが起きたということだ。そして橋本と岩田という他団体(センダイガールズ)にいながらにして、なつぽいに刺激を与えてくれる二人が対戦相手となった。
「(橋本と岩田は)ここ2~3年ですごく意識し始めた2人ですね。私が数年前にSNSで『最強になりたい、ぽーい』みたいな感じのことをポストしたのをきっかけに、橋本さんとシングルマッチが決まるところまでいって。最初はもうやっちまったなと思いましたよ(笑)。でも(試合は)すごい楽しかったですし、いまだに自分の体感が覚えているんです。なので、橋本さんとはもう一回やりたいなってずっと思っていましたし、自分の復帰戦(2024.3.9)でもSareeeと橋本さんに相手になってもらいました。
節目節目で橋本さんという存在はすごく大きくなっていましたね。そしてサオリにとっては岩田さんとずっとやり合っていて、サオリをこんなに夢中にさせる岩田さんって何なんだろうって戦ってみたいと思っていたんですよ。それでサオリとカードを決めるときに、思い描いているカードを一緒に言おうって。そうしたら、サオリも私もこの二人の名前を出していました。もともとは同期だから意識していたのではなく、気になる二人がたまたま同期だった、という感じなんです」

アクトレスの練習場は景色も何も変わってなかった
なつぽいのデビュー戦は、Beginning(現アクトレスガールズ)のリングだった。彼女が退団する際にはいろいろあったわけだが、今では笑い話にできる関係性だ。
その後、東京女子→スターダムと渡り歩いたなつぽい。その10周年を祝福するために、東京女子の甲田哲也代表とアクトレスガールズの坂口敬二代表が同じリングに上がったのはちょっとした“事件”だったといえよう。
「アクトレスをやめた後にお客さんとしてこっそり見に行ったときに、ばったり坂口さんと会ってしまったんですが『あの時はさ~』とめちゃくちゃ笑顔で話しかけられて (笑)。(5.31前に)久々にアクトレスの練習場に行ったんですが、景色も何も変わっていなくて、懐かしいなという感じでしたね。階段を登る前のロビーで練習前にみんなでまったりしていたんですけど、ここでみんなで気合い入れて練習に向かったこととかも思い出しました。
(アクトレスガールズ提供試合に出場した)茉莉さんと惡斗さんはネームバリューもあって欠かせない二人で、夏葵ちゃんと植原(ゆきな)選手は何か背負っているものがあるんだろうなと感じました。実は舞台『カウント2.9』で私がやっていたヒフミ役を引き継いだのが夏葵ちゃんだったので、コスチュームをプレゼントしたこともあったんです。彼女が今アクトレスを背負って頑張っているんだなというのがわかりましたし、“陽“のオーラもすごく出ていましたね」
5.31の10周年記念大会は大成功に終わった。しかしなつぽいの視界からはその1か月前に、大切な人が消えてしまっていた。
(17日掲載の後編へ続く)
