木村了「このままじゃダメだ」と舞台に飛び込んだ20代 演技人生の転機とは

俳優の木村了が、テレビ東京系連続ドラマ『レプリカ 元妻の復讐』(月曜午後11時6分)で、トリンドル玲奈扮する主人公の元夫を演じている。優しさの裏に優柔不断さを抱え、気づかぬうちに周囲を傷つけてしまう“ダメ男”をナチュラルに体現。自身が「吐き気がするほど嫌な役」と明かす人物を、リアルに演じきる覚悟とは——。役柄への向き合い方や今後の俳優人生、さらには夫婦円満の秘訣まで語った。

ドラマ『レプリカ 元妻の復讐』に出演する木村了【写真:藤岡雅樹】
ドラマ『レプリカ 元妻の復讐』に出演する木村了【写真:藤岡雅樹】

『レプリカ 元妻の復讐』で主人公の元夫役

 俳優の木村了が、テレビ東京系連続ドラマ『レプリカ 元妻の復讐』(月曜午後11時6分)で、トリンドル玲奈扮(ふん)する主人公の元夫を演じている。優しさの裏に優柔不断さを抱え、気づかぬうちに周囲を傷つけてしまう“ダメ男”をナチュラルに体現。自身が「吐き気がするほど嫌な役」と明かす人物を、リアルに演じきる覚悟とは——。役柄への向き合い方や今後の俳優人生、さらには夫婦円満の秘訣まで語った。(取材・文=幸田彩華)

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 本作は、同名電子コミック(原作・タナカトモ、作画・ひらいはっち)が原作で、『夫の家庭を壊すまで』『財閥復讐〜兄嫁になった元嫁へ〜』など同局“お得意”の復讐(ふくしゅう)ドラマ最新作に。

 子どもの頃から自分をいじめ抜き、さらには夫まで奪った幼なじみの女性へ復讐を誓い、顔も名前も捨て別人となり、人生を奪い返す整形復讐エンターテインメント。整形前の藤村葵と整形後の伊藤すみれを、トリンドルが一人二役で演じる。宮本茉由が幼なじみの花梨を、木村はすみれ(葵)の元夫・藤村桔平に挑んだ。

 木村は今回の役について、「吐き気がするほど嫌な役でした。クズではあるけれど、そこに嘘はない。だからこそ、誇張せずナチュラルに演じるべきと思ったのが最初でした」と語る。

 桔平は優柔不断な性格だが、木村自身「僕も優柔不断。結構、決められないです」と心境を明かす。

「例えば『何食べたい?』と聞かれても『なんでもいいよ』って言っちゃう。本当はガッツリ食べたいと思っても、相手がヘルシーなものと言えばそれでいいよって。そういう共通点はあるかもしれないです」

 そんな桔平を演じることに「好感度が下がったら勝ち」と明言し、実力派の顔をのぞかせる。

「とことんゲスいことをしているので、好感度が下がれば、桔平が存在できているということ。藤村桔平をちゃんと生きられているっていうことにもつながるので、僕としてはそっちの方がうれしいですね」

 撮影現場の雰囲気はいいようで、共演者についても快活に明かす。初共演となった主演のトリンドルについては、「すごく明るくて、よく笑う人。(現場では)基本的にどうでもいい話をたくさんします。あと、わざと冗談で嘘をついたりするので話していて面白いですね」と印象を明かした。

 また、謎のバーテンダー・ミライ役を演じる千賀健永(Kis-My-Ft2)とは以前に共演歴があり、「普段は自分から教えてっていうタイプじゃないのですが、千ちゃんとは以前共演したドラマの現場で撮影がその日しかなかったのに、短時間の間に自分から番号を聞きました。千ちゃんとは波長が合う。1時間くらい電話で話すこともあります」と意外な親交を打ち明けた。

 花梨役の宮本とは夫婦役として共演シーンも多い感じだが、「本当にかわいい天然記念物みたいです。『私たちは犬の家族だったんと思うんですよね』と話し出し、そこから”ストーリー“が始まるんです。こっちを気遣って作り話をしているわけじゃなくて(笑)。だから、こんなドロドロドラマですが、和気あいあいとしている現場です」と笑顔を見せた。

舞台と映像の違いについて語る木村了【写真:藤岡雅樹】
舞台と映像の違いについて語る木村了【写真:藤岡雅樹】

舞台と映像の違いは「呼吸」

 一方、今作は整形がひとつのテーマ。整形について尋ねると、「自分としては元々その人の好きにすればいいんじゃないのかな、っていう気持ちが強かった」と考えを述べる。ただ、私生活では親だけに、「子どもを持つようになってみると、ちょっと抵抗あるかなって思いました」と本音を語った。

「高1と中2の娘がいるので、正直なところ、整形はやめてって思ってしまいます。崩れるリスクもあるし、完璧に維持できるわけでもないと思うので。でも他人に対しては、今も『好きにすればいいのでは』って思います。不思議な感覚ですね」

 さて、復讐を描く同作品。「復讐心を抱いたことがあるか?」との質問に、制作発表でトリンドルは夫とけんかしたときに「歯ブラシを洗濯機の横の棚に隠します」、千賀は頭が良くゲームもうまい弟に20回に1回しか勝てなくて「その時は現実世界でいつ倒してやろうかなって思ってました(笑)」と幼少期のかわいらしいエピソード”を明かしていた。

 インタビューで同じ質問に木村は、「ないです!」と一言。ただ、「うちは女系家族というか、男1人で。奥さんと娘が2人、完全に女子が多いじゃないですか。猫もいるんですけど、オスが2匹いて3匹目がメス。ワンちゃんもメスなんですよ。比率では女が多いので、落ち着ける自分の部屋は欲しいですね」とおちゃ目に話した。

 その木村は2002年、第15回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで審査員特別賞を受賞したのをきっかけに芸能界入り。2003年に5人組ロックバンド・FLOWの楽曲「ブラスター」のPV出演で俳優デビューした。04年には藤原竜也主演映画『ムーンライト・ジェリーフィッシュ』で映画初出演を飾った。

 14歳で芸能界に入り、18歳で「この道で食べていこう」と覚悟を決めたという木村。20代前半には「このままじゃダメだ」と思い、自ら舞台出演を願い出た。これが転機になった。

「ある日、突然『舞台の方に行きたい』って当時のマネジャーに言いました。このままの感じでずっとやり続けるより、舞台で一度リセットしたいと思った自分がいて、そこから10年ぐらい舞台作品に傾倒しました。その間、映像作品にも出させていただきましたが、間違いなく舞台での経験が今の自分につながっていると思います」

 演じる上で、舞台と映像の違いはあるのだろうか。そこを問うと、「呼吸が違う」と持論を展開した。

「本当に違います。そこでしかない呼吸があって、毎日同じことをしているように見えて、毎日違う。例えば相手のメンタル、体調、声の出し方……。常に呼応しながらやっていかなきゃいけないので、毎日同じように見えても、毎日違うことをしているっていうのが舞台の常。あとはお客さんをいかに見飽きさせないように見せていくかっていうのもあります。変な話、舞台はその一回だけだし失敗はできない。失敗する時もありますけど(笑)。舞台の場合はお客さんの反応がリアルに返ってくるっていうのも、やりがいにつながりますね」

 そして、俳優として大切にしているのは「疑問を持ち続けること」だという。

「例えば今作だと桔平の表現に正解はないので、それが良かったのかどうかなんていうのは誰にも分からない。もちろん現場では監督がOKは出しますが、正解だったかどうかっていうのは結局は視聴者に委ねられるものだと思っていて。『これでよかったのか?』とか常に疑問を持ち続けることが、僕の俳優としての在り方です。俳優は表現者なので、まずはその役を生かしてあげなきゃいけない。そこに存在させてあげなきゃいけなくて、それは役者にしかできないので、仕事として魅力的なんだと思います。ただ、その代わり、めちゃくちゃ体力もフィジカルもメンタルも削られますけど(苦笑)」

 今後については「なんでもできる俳優に」と力強く語った。

「結果、“カメレオン俳優”になればいいかなって。違う役を演じる時点で俳優ってみんなカメレオンだと思うのですが、今回ダメンズやってますけど、次はものすごい紳士を演じるとか、役の変化をお客さんが喜んでくれたら役者冥利に尽きます。何でもできる俳優だって思われればうれしいですね」

 年齢を重ねることも歓迎しており、「早く40歳になりたいと思っています。また役の幅も広がるし、できることが増えるんじゃないかなって思っています」と明かした。

 プライベートでは2016年3月に奥菜恵と結婚し、10年目に突入した。夫婦円満の秘訣を尋ねると、「話を聞くこと」と即答した。

「とにかく話を聞く。聞いてあげてるとかっていうんじゃなくて、聞く。奥さんが言ってることを聞いて、同意。何に悩んでいるとか、考えていることを共有することが、やっぱりそれが一番大事かなって思います。結局、血はつながってないわけだから、それを忘れないことですかね。そこに溝ができちゃうと、修復が難しくなってきちゃう。割合でいうと、聞く8、話す2くらいが夫婦円満になるんじゃないでしょうか」

 最後に改めて作品について聞くと、熱っぽく語った。

「『レプリカ』は、緻密に計算された痛快な復讐劇。どこかの1話だけ見ても全容は見えません。すみれの復讐がどう消化されていくのか、ぜひ最後まで全部見届けてください。暑い夏、このドラマを見て翌日も頑張ろうと思ってもらえたらうれしいです」

 俳優として、父として、さまざまな感情と向き合い続ける木村。それは演技の引き出しを増やすことにもつながり、“正解のない役”に挑み続ける姿勢こそが、明日を作り出していく。今後の表現が楽しみだ。

□木村了(きむら・りょう)1988年9月23日生まれ。東京都出身。ホリプロ所属。2002年、第15回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで審査員特別賞を受賞したのをきっかけに芸能界入り。03年にロックバンド・FLOWの楽曲『ブラスター』のPV出演で俳優デビューした。04年には藤原竜也主演映画『ムーンライト・ジェリーフィッシュ』で映画初出演。現在NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』にも出演中。16年に俳優の奥菜恵と結婚。二児の父。

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