“たたき上げ”の磯村勇斗、32歳で受けた民放連ドラ初主演の背景「この人たちとやりたかった」

俳優・磯村勇斗が、14日スタートのカンテレ・フジテレビ系『僕達はまだその星の校則を知らない』(月曜午後10時、初回は15分拡大)で独特の感性を持つ私立高のスクールロイヤー(学校弁護士)・白鳥健治を演じる。17歳で役者の道を歩み始め、22歳で事務所に所属。さまざまな役を経験しながら、オリジナル脚本のこの作品を初の民放連ドラ初主演作に選んでいた。文字通り、満を持しての挑戦。ENCOUNTは磯村のキャリアを振り返りながら、そのマインドに迫った。

満を持して、民放連ドラ初主演を飾る磯村勇斗【写真:増田美咲】
満を持して、民放連ドラ初主演を飾る磯村勇斗【写真:増田美咲】

14日スタートの『僕達はまだその星の校則を知らない』でスクールロイヤー役

 俳優・磯村勇斗が、14日スタートのカンテレ・フジテレビ系『僕達はまだその星の校則を知らない』(月曜午後10時、初回は15分拡大)で独特の感性を持つ私立高のスクールロイヤー(学校弁護士)・白鳥健治を演じる。17歳で役者の道を歩み始め、22歳で事務所に所属。さまざまな役を経験しながら、オリジナル脚本のこの作品を初の民放連ドラ初主演作に選んでいた。文字通り、満を持しての挑戦。ENCOUNTは磯村のキャリアを振り返りながら、そのマインドに迫った。(取材・文=柳田通斉)

 「お久しぶりです」。磯村は8年前から知る記者に声を掛けてきた。当日は制作発表から立て続けに媒体の取材を受けていた。負担は大きいはず。「さすがに疲れているでしょ」と聞くと、「いやいや、ぶっとんでますから大丈夫です」と笑って返した。

 磯村はこれまで数多くの作品に出演し、テレビドラマは45作を重ねてきた。昨年1月期には、TBS系『不適切にもほどがある!』でコミカルに二役を演じて話題になった。そして、46作目にして民放連ドラ初主演。実はこれまでも主演のオファーはあったが、「初めてはこのプロデューサー陣とやりたい」と思っていたという。カンテレの岡光寛子氏とホリプロの白石裕菜氏だ。両氏とは2019年7月期の連続ドラマ『TWO WEEKS』で出会い、当時から「いつか主演で一緒に」と声を掛けられていた。そして、時をへて提示されたのがオリジナル脚本。磯村は実感を込めて言った。

「非常にうれしかったです。僕も『この人たちと主演作を』と思っていましたが、『自分自身が頑張り続けなければ』と思っていたのでかなえられて良かったです」

 静岡・沼津市で生まれ育った磯村は、中学時代から俳優を志し、高2で地元劇団に入った。そこで芝居の基礎を学び、大学進学と同時に上京。小劇場に出演しながら、芸能事務所に入所希望の願いと履歴書を送っていた。しかし、門前払いで「もやもやする日々」を過ごしていた。その後、静岡市出身の演出家・伊藤靖朗氏が手掛けた舞台に出演。伊藤氏の紹介で現在の事務所に入所したことが転機になった。2015年のテレビ朝日系『仮面ライダーゴースト』のオーディションに合格。17年には、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』で好青年の料理人役を演じて知名度を高めた。日本テレビ系『今日から俺は!!』では不良高校生の役。以降も役を幅広く演じ、「カメレオン俳優」と呼ばれるようになった。同世代や年下の主演クラスは、大手事務所などで10代から育成されてきた俳優が大半。その中で磯村は異彩を放つ“たたき上げ”だ。

「それを考えると、感慨深いですね。10代の頃は『20代前半で主演を』とは想像していましたが、そんな甘い世界ではありませんでした。ただ、諦めずに自分を信じてやってきて良かったと思いますし、サポートしてくださる周りの人々にも恵まれてきました。この点は本当に大きかったです」

 そして、今作は、NHK連続テレビ小説『あさが来た』やNHK大河ドラマ『青天を衝け』などを手がけた脚本家・大森美香氏による完全オリジナルストーリー。独特の感性を持つがゆえに何事にも臆病で不器用な主人公の白鳥が、少子化による共学化の影響を受けた私立高にスクールロイヤーとして派遣され、法律や校則では解決できない若者たちの葛藤に向き合っていく学園ヒューマンドラマだ。

「1回読んだだけではつかめない不思議な物語でした。ファンタジー的要素がありながら、白鳥が来て先生や生徒の悩みを解決していく。そんな硬さと柔らかさが魅力ですが、白鳥のような役は初めてでどう伝えていくかは悩みました。ただ、オリジナル脚本の醍醐味は、自分たちでキャラクターを築けること。僕は他の役者さんのマネをすることは大嫌いなので何も参考にしていませんが、くせ毛のキャラにしたかったのでパーマをかけ、シャープさを出すために体重を5、6キロ落としました」

 磯村によると、1年半前から管理栄養士とトレーナーの指導を受けながら、「いつでも体重を増減できる状態」にしているという。

「減量中も糖質を取りますが、日々、そういう体の代謝を作っています。役者としての自分を高めるためにです」

オリジナル脚本で『ぼくほし』に主演する磯村勇斗【写真提供:カンテレ】
オリジナル脚本で『ぼくほし』に主演する磯村勇斗【写真提供:カンテレ】

生徒役から慕われるヒーロー「タイミングを見ながら合った言葉を」

 そんなプロフェッショナルな磯村に、生徒役の面々は憧れを抱いている。制作発表の場では、磯村に泣きの芝居を教えられたエピソードが飛び出し、「生徒一人ひとりのケアまでちゃんとしてくださる。スターというかヒーロー」と称えられてもいた。本人は「照れくさかった」と言ったが、「若い才能」へのケアは経験済みだった。

 2023年7月22日、磯村は地元の沼津市民文化センター大ホールで行われた沼津市制100周年記念事業『きらり・沼津。磯村勇斗と~新しい100年へ~』と題したイベントに出演。高校時代に所属した沼津演劇研究所の恩師2人、学生キャスト4人と1日限りの演劇『プロポーズ』を上演した。演技経験がほとんどないキャストもいたが、4人は磯村からの指導を生かして舞台で輝いていた。そのうちの1人、山田健人は今年1月期のTBS系『御上先生』に生徒役で出演。今回の作品にも出演している。当時を踏まえて磯村は言った。

「確かに若い役者を応援したい思いはあって、親的な目線になっています。次の時代を担うのは彼らの世代なので、自分が経験して『いいな』と思ったことは伝えていきたいです。タイミングを見ながら、その人に合った言葉をかけるようにしています」

 民放ドラマ初主演は、家族も喜んでいるという。

「まず、ビックリしていましたが、すごく喜んでいました。月曜日午後10時、毎週の楽しみを作れたことは僕としてもうれしいです」

 世は配信ドラマの視聴者が増え、テレビドラマもリアルタイムでの視聴者は減ってはいる。そんな中でも、磯村は「視聴者の皆さんの声も、ストーリー展開に反映させていくのがテレビドラマの良さ」と言い、この作品の持っているスペシャリティーも口にした。

「『ぼくほし』は、従来の民放ドラマとは違います。僕は『革命を起こすドラマに仕上がっている』『映像でここまでのクオリティーを民放ドラマでも出せるんだ』と思いました。なので、まずは第1話を見てほしいです。そうすると、第2話を必ず見たくなる。その自信は僕にもチームにもあります」

 最後に「今、最も願っていること」を磯村に聞くと、「この作品が視聴者の心に届くことです。そして、月曜日午後10時を楽しみにしてくれることです。一つの楽しみがあれば、日々の生活も頑張れますから」と返した。役に全力投球しながら、チームをけん引している32歳。自身にとっても、『ぼくほし』が代表作になることを強く願っている。

□磯村勇斗(いそむら・はやと) 1992年9月11日、静岡・沼津市生まれ。中学時代から俳優を志し、高2で地元劇団の沼津演劇研究所に入所。上京後は小劇場を転々とし、作品に出演。その後、現在の事務所に入り、2015年のテレビ朝日系『仮面ライダーゴースト』で、16年のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』で注目され、数々の映画、舞台、ドラマ、バラエティー番組などに出演。映画では、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をはじめ多くの受賞歴があり、『ビリーバーズ』『若き見知らぬ者たち』で主演。176センチ。

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