BEGIN「3人で作ってきたから今がある」 こだわった“MADE IN 石垣島”…同級生に戻れる関係性
今年デビュー35周年を迎えた3人組バンド、BEGINが7年ぶりとなるオリジナルアルバム『太陽』を7月2日にリリースした。今作はメンバーの比嘉栄昇、上地等、島袋優が、故郷・石垣島で制作した原点回帰の作品でもある。そんな“MADE IN 石垣島”にこだわったフルアルバムへの思いや、35周年を迎えた3人の関係性について話を聞いた。

7年ぶりとなるオリジナルアルバム『太陽』インタビュー
今年デビュー35周年を迎えた3人組バンド、BEGINが7年ぶりとなるオリジナルアルバム『太陽』を7月2日にリリースした。今作はメンバーの比嘉栄昇、上地等、島袋優が、故郷・石垣島で制作した原点回帰の作品でもある。そんな“MADE IN 石垣島”にこだわったフルアルバムへの思いや、35周年を迎えた3人の関係性について話を聞いた。(取材・文=福嶋剛)
――オリジナルアルバムとしては7年ぶり、通算21枚目の作品となります。今回は原点に立ち返って3人で地元・石垣島で制作したそうですね。
上地「今までも何度か『地元で作ろうか』という話はあったんだけれど、今回みたいに曲作りからレコーディングまで全ての工程を石垣でやったのは、初めてだったかもしれないですね」
島袋「今、栄昇は石垣に住んでいますけど、僕は沖縄本島で、等は東京に住んでいて、僕が石垣に里帰りしたとしても2、3日ぐらいの滞在になるんですが、今回は2週間ほど、3人でじっくり顔を合わせて、地元のパワーを感じながらレコーディングができました。なので“MADE IN 石垣島”とか“MADE IN 八重山”って言えるアルバムなんじゃないのかなって」
比嘉「僕が石垣島に里帰りしたのは、もちろん家族と一緒に暮らしたいという理由もあったんだけれど、やっぱり『島人ぬ宝』『涙そうそう』『三線の花』を歌う者として、その歌に似合う人間でありたいと思ったことも理由なんです。だから、僕にとっては、石垣島の暮らしがベースにあって、そこから全国を旅するという感覚があります。石垣にいると都会にはない生活のスピード感もあって、それと一緒で音楽のテンポやリズムのとり方も東京とは違ってくるんです。だから例えばアルバム収録曲『なんくる君であれ』という曲もたぶん石垣で作ったからこそ、その空気感を詰め込むことができたんじゃないかなって思います」
上地「地元でのアルバム制作は昔を思い出すようなパワーをもらえましたし、やっぱり初心に戻れましたよね。35年やると、今だから言いますけどやっぱり険悪なムードになったこともちょっとはあるんですよ。でも、こうやって3人で集まると同級生に戻れるんです。3人でやっている時に、栄昇が星座占いみたいな話題を出してきたりね」
比嘉「お前また、そんなくだらない話をするなよ(笑)」
上地「まあまあ(笑)。そのくだらない話ができるのも3人だからなんですよ。それがいいじゃないですか」
――上地さんが書いた『星空の下のRADIO』『開拓者』はまさに初心(=原点)を振り返るような曲だと感じました。
上地「おっしゃる通り、掘っ立て小屋をはじめから作るように石垣にある全ての素材を題材にして曲を書きました。僕は石垣島でずっとラジオのレギュラー番組をやらせてもらっていますが、『星空の下のRADIO』は僕らが音楽を始めた当時を振り返りながら、地元への感謝みたいなものを曲にしました。『開拓者』は、僕の親父やその世代の方々が、沖縄がまだアメリカの統治下だった1950年代に沖縄本島から石垣島に渡り、農地開拓をしたという歴史があって、そんな親父たちのことを歌にしたいってずっと思っていた曲で、石垣島で作ったからこそ、今回意義もあったと思います」
――島袋さんは、ドライブミュージックにぴったりな『沖縄Sunshine Day』、インストナンバー『4匹のチワワ』、そして『夜空にブルースを』と3曲書きました。『夜空にブルースを』は、まさに優さんのブルース魂を感じました。
島袋「僕は、憂歌団さん、上田正樹さん、有山じゅんじさんといった先輩ブルースマンに憧れて音楽を始めたところもあって、彼らみたいになりたいってずっと思ってやってきたんです。だけど、一生追いつけないと分かった時、そんな自分の生き方もブルースなんだろうなって思ったんです。『夜空にブルースを』は自分の中でのブルージーな世界を描きました」
――『空気いただきます』は、オールドファンにはイカ天(1989年~90年、TBS系『三宅裕司のいかすバンド天国』)に出演していた頃の3人を思い出すような、ユーモアのあるロックを感じました。
比嘉「僕たちの大好きなエルビス・プレスリーも忌野清志郎さんもアコースティックギターを持ってロックンロールしていましたよね。この曲もそうなんですけど、そんなスタイルのロックも受け継ぎたいなって思っています」

35周年ツアーは「選曲に悩んでいます」
――では、改めてデビュー35周年を振り返って今の心境を聞かせてください。
島袋「例えるならデビュー当時生まれた子が35歳ってことじゃないですか。そう思うと長い年月ですよね」
上地「今年3月に、日本武道館や大阪城ホールでライブができたっていうのは、本当にたくさんのお客様のおかげなんですよね。ステージに上がった時にそれを感じることができて、とてもいい機会を与えていただいたなって思いました」
比嘉「今、思い返すと、あんな小さな石垣島から3人そろってデビューできるなんて本当にありえないことだったんです。デビュー後に凱旋ライブをやった時、石垣の空港に大勢の方々に集まっていただき、両親から花束をもらうなんて、そんな人生が自分に来るとは思ってなかったですから。でも今は、石垣島で暮らしていてホームセンターに行っても誰も話しかけてくれないんです……」
島袋「そんなことないでしょ」
比嘉「いや、冗談だって(笑)」
全員:(笑))
比嘉「みなさんには本当に感謝しています」
島袋「このアルバムに入る前、自分のソロアルバムを作ったんですけど、その時に思ったのが、やっぱり良くも悪くも俺は、栄昇と等に頼って生きてきたんだなって。3人で音楽を作ってきたから今があるって確信しました」
比嘉「やっぱり人間だから、迷うことだっていっぱいあるし、3人それぞれの生き方だって音楽に向き合う姿勢だって常に揺らぎはあるんです。だけど今でもBEGINでいられるのは、お客さんがずっと僕たちをBEGINでいさせてくれているからなんです。特にSNSの時代になって、みなさんがいろんなBEGINの情報を世の中に発信してくれるじゃないですか。今回、日本武道館のMCで『みなさんがBEGINです』って言ったんですけど、今のBEGINは、僕たちじゃなくて、ファンのみなさんが作ってくれているんだと思います」
――そして、ニューアルバムを引っ提げ、9月19日から35周年を記念した全35公演のホールコンサートツアーも始まります。
比嘉「オリジナルアルバムを引っ提げてのライブは楽しみな反面、選曲では悩ましいところもあるんですよ。新作を出すとやっぱり新曲が多くなる分、演奏できない曲もあって……。このライブでしか会えない人たちだっていると思うと、その人たちの期待にも応えたい思いもあって、いつも悩みながら選曲しているんです」
上地「確かにね」
比嘉「だから僕、考えたんです。今回は35周年なので新曲もたくさんやりますけど、みなさんが聴きたい歌をたくさんやろうって。その代わり今回はテンポを速めにさせてもらってもいいですかね」
全員:(笑)
□BEGIN(ビギン) 比嘉栄昇(ボーカル)、上地等(ピアノ&ボーカル)、島袋優(ギター&ボーカル)の3人によるバンド。メンバー全員が沖縄県石垣島出身。1990年『恋しくて』でデビュー。その後もコンスタントにリリースを重ね、数多くのステージに出演。代表曲の『島人ぬ宝』『涙そうそう』『笑顔のまんま』『海の声』をはじめ、老若男女に歌い継がれる楽曲を生み出し続けている。ブルースから島唄まで多彩な音楽性と幅広い年齢層から支持を集めている。2025年7月2日、7年ぶりのオリジナルアルバム『太陽』をリリース。9月19日から全国ホールコンサート『「さにしゃんサンゴ SHOW!!」 ~35年目の音楽旅団ツアー~』を開催。
全国コンサート『BEGIN 「さにしゃんサンゴ SHOW!!」 ~35 年目の音楽旅団ツアー~』
HP:https://www.begin1990.com/35show-tour/
