『ウルトラマンオメガ』主演・近藤頌利の素顔 舞台で活躍→映像挑戦「勝つために必要」

俳優の近藤頌利が、7月5日から放送スタートしたウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンオメガ』(テレ東系列/土曜午前9時)で主人公・ウルトラマンオメガ/オオキダ ソラトを演じる。31歳でつかんだ“ウルトラマン俳優”という憧れの大役。舞台を主戦場としてきた近藤が歩んできたこれまでの道のりとは――。

『ウルトラマンオメガ』で主演を務める近藤頌利【写真:藤岡雅樹】
『ウルトラマンオメガ』で主演を務める近藤頌利【写真:藤岡雅樹】

ウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンオメガ』で主演を務める近藤頌利

 俳優の近藤頌利が、7月5日から放送スタートしたウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンオメガ』(テレ東系列/土曜午前9時)で主人公・ウルトラマンオメガ/オオキダ ソラトを演じる。31歳でつかんだ“ウルトラマン俳優”という憧れの大役。舞台を主戦場としてきた近藤が歩んできたこれまでの道のりとは――。(取材・文=中村彰洋)

 31歳の近藤にとって“ウルトラマン”は幼少期から憧れのヒーロー。「この年齢でヒーローをやらせていただけるとは思ってもいませんでした」と喜びを語る。今回の大役は、“審査”を経て決まった。

「1時間半ぐらいの審査の中で、演技のほか、アクションやマット運動、変身ポーズなども一通りやらせていただきました。演技の手応えはあまりなかったのですが、運動やアクションには自信がありました。そこから2週間後に決定の連絡をいただき、後々お話を聞いたら、退室してすぐに『あの子にしよう』と決まっていたらしく、本当にうれしかったです」

 撮影は昨年10月にクランクイン済み。舞台で培った経験が特撮の撮影でも生かされた。今は、どういった形でテレビの前の視聴者に届くのか、期待に胸を膨らませている。

「役者歴10年になるので、新人っぽく見られないようにと考えていました。経験があるからこそのクオリティーを求められているとも感じていました。撮影を終えて、自分に対しての反省点は多いですが、面白い作品にはなっていると思います。見てもらう方々に、純粋に楽しんでいただけたらうれしいです」

これまでの歩みを振り返った近藤頌利【写真:藤岡雅樹】
これまでの歩みを振り返った近藤頌利【写真:藤岡雅樹】

学生時代から人前に立つことが好き「良くも悪くも1番目立っていた」

 近藤が役者の道へ足を踏み入れたのは大学2年生の時。関西を拠点に活動する劇団Patchの3期生オーディションに合格。俳優活動をスタートさせたが、そこに至るまでには紆余曲折があった。

「小さい頃から人前に立つことが好きで、俳優に憧れていました。高校生の時に劇団Patchの1期生オーディションが開催されとる知って、高3の時に応募しました。最終審査まで進んだのですが、バレー部の試合と重なっていて、本気で部活に打ち込んでいたこともあって辞退しました。

 その後は大学進学しましたが、『やっぱり俳優をやりたい』とPatchのオーディションに再挑戦しました。高校生の頃は爽やかな坊主の少年でしたが、当時は自分の中で『Men’s egg』ブームで、盛り盛りの髪型でした。加えて、屋外でアルバイトをしていたので、日焼けで肌も真っ黒。まさにギャル男みたいな風貌だったので、めちゃくちゃイメージダウンだったと思います(笑)。でも、そういうのを面白がってくださる方がいて、合格することができました。本当に運が良かったです」

 学生時代から目立つことが大好きだった近藤。「良くも悪くも1番目立っていたと思います。『とにかく1番になれればそれでいい』みたいな考え方でした」。今思い返すと、家庭環境が影響していたと振り返る。

「0歳の時から母子家庭で兄弟もいませんでした。たぶん寂しかったんだと思います。1番になると、誰からも認識される。自分の存在を証明したかったんだと思います。最近、『自分の性格の根源は何なんだろう』と考えた時に、そういった答えにたどりつきました」

 しかし、入団後2年間は、なかず飛ばずの期間を過ごした。

「演技経験ゼロでしたが、なぜか自信があって『なんで俺を選ばないんだ!』と思っていた時期もありました。でも、いざ稽古をしたら、できなくて怒られるわけです。そこで『俺ってできないんだ』と現実にようやく直面しました。『じゃあやってやろう!』と気合いを入れるのですが、何をしたらいいかも分からない。そんなどうすることもできない期間が続きました。

 今でも覚えていますが、Patchのオーディションに受かった日に友達と銭湯に行ったんです。『俺の人生、今日から変わるわ!』って宣言したんですけど、現実は何も変わらなかったです。『事務所に所属して、こんな変わらんもん?』と自分でも驚いたくらいでした(笑)」

息の長い俳優になることを目標に掲げている【写真:藤岡雅樹】
息の長い俳優になることを目標に掲げている【写真:藤岡雅樹】

息の長い役者になることが目標「表現は自由なので楽しいです」

 そんなもがき続けていた頃、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』への出演という光が差しこんだ。バレーに本気で打ち込んでいた近藤だからこその抜てきだった。そこからは、舞台の魅力にどっぷりと浸かっていった。

「『ハイキュー!!』でうまくできない自分と戦いながら、徐々に楽しさを見出すことができました。いろんな作品や演出家さんと出会って、いろんな先輩に演劇の楽しさを教えていただきました。めちゃくちゃ演技のうまい方々と共演して、『いつかこの人たちと肩を並べて舞台に立ってやろう』という気持ちにもなりました。20代前半はとにかく負けん気でやっていました」

 そこから数々の舞台に立ち、たくさんの経験を積んできたが、30歳を目前に徐々に気持ちが変化していった。

「メインキャストとして、憧れた方々と共演することはできました。でも、共演ができただけだったんです。『勝つためには何が必要なんだろう』と考えた時、違う分野にも手を出さなきゃいけないと痛感しました。同じことをやっていても絶対に追いつけないんです。元々ドラマが大好きで映像作品に出たいという思いが強く、役者として長生きするためにも、いろんなスキルが必要だと考えて挑戦を決めました」

 初のテレビドラマ出演は、2023年に関西テレビで放送された『全ラ飯』。いきなりの主演抜てきだった。本人も驚きの経緯で大役が舞い込んできた。

「関西テレビさんと舞台でお仕事をご一緒させていただいたことがあって、その時に仲良くなった方と『映像作品をやりたい』と話していたら、『仲良い先輩が、来年にドラマを作るから言っとこうか?』って。『言っといてください~』ぐらいの軽い流れでした。そこから数か月たった頃、マネジャーさんから『主役でドラマの出演オファーが来てるんですけど!』と電話が掛かってきました。当時のマネジャーさんも突然の連絡だったので、びっくりしていました(笑)」

 その後は、少しずつ映像作品での経験を積んでいったが、結果的に舞台への思いがより強くなったとも明かす。

「どれだけ忙しくなろうと舞台は続けたいです。リアルにそこで生きているというライブ体験、こんなにも尊くて、これに勝るものはないと思っています。年間に何本も出演できるわけではないですが、『この人と作品を作ってみたい』と言ってもらえるような人間になりたいです」

 これまでに後悔した選択もあったが、今になって振り返ると全てが糧になっていた。

「バレーボールをきっかけに芸能界を1度諦めましたが、バレーボールをやっていたからこそ、『ハイキュー!!』につながりました。後悔した選択はいっぱいありますが、選んだものが今に生きていると思います。舞台で経験を積んだうえで『ウルトラマンオメガ』で主演を務められたことは、今後に生きてくると今は信じています。映像はまだ門をたたいて1~2年。必要としてもらえるなら、どんな小さな役でも全力で応えていきたいです」

 息の長い役者になる。そんな目標を掲げた近藤にとって、31歳はまだまだ通過点。「何歳でもできる仕事ですし、その歳になったからこそできる役が増えていく。表現は自由なので楽しいです。仕事を楽しめているというのは、僕の強みだと思っています。まずはたくさんの人に僕のことを知ってもらいたいです」。

□近藤頌利(こんどう・しょうり)1994年4月12日、大阪府出身。高校時代をバレー部の活動に捧げる。2014年に劇団Patch3期生のオーディションに合格。16年にハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』で注目を集める。23年には初出演ドラマ『全ラ飯』(カンテレ)で主演を務めた。25年7月5日からテレ東系列で放送スタートする『ウルトラマンオメガ』で主人公・オオキダソラトを演じる。印象に残っているウルトラマンシリーズの作品は『ウルトラマンティガ』(1996年)。NHK大河ドラマへの出演を目標に掲げている。

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