朝ドラ・カンヌ女優の“再出発” 清水美砂が災害被災地ロケで感じた “人間の強さ”「それでも、地元の人々は明るくて」

俳優・清水美砂が、中原丈雄主演の映画『囁きの河』(熊本にて先行公開中、7月11日より池袋シネマ・ロサ、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開、大木一史監督)で主人公の元恋人で旅館の女将を演じた。豪雨で甚大な被害を受けた熊本・人吉・球磨地域を舞台にした本作。清水が被災地を舞台に撮影する意義、そして俳優としての“今”を語った。

俳優としての“今”を語った清水美砂【写真:増田美咲】
俳優としての“今”を語った清水美砂【写真:増田美咲】

撮影で目にした町の変わり果てた姿

 俳優・清水美砂が、中原丈雄主演の映画『囁きの河』(熊本にて先行公開中、7月11日より池袋シネマ・ロサ、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開、大木一史監督)で主人公の元恋人で旅館の女将を演じた。豪雨で甚大な被害を受けた熊本・人吉・球磨地域を舞台にした本作。清水が被災地を舞台に撮影する意義、そして俳優としての“今”を語った。(取材・文=平辻哲也)

 2000(令和2)年7月豪雨の被災地である熊本県球磨川を舞台に、22年ぶりに故郷に帰ってきた男、今西孝之(中原)が失くした居場所を取り戻すまでを描く物語。熊本県人吉市出身のベテラン・中原丈雄が主演した。

 清水は1998年、当時在日米軍だった夫と結婚し、2児をもうけた。夫の赴任先だった米国、オランダなどで子育てをしながら、俳優業を続けていたが、2021年に帰国し、本格的に仕事を再開している。豪雨災害時は海外にいたが、ニュースで知っていたそうで、人吉発の映画に意義を感じたという。

 撮影では町の変わり果てた姿を目の当たりにした。

「建物の2階部分まで水の跡がくっきり残っていたり、球磨川鉄道が遮断されて孤立した地域もあり、胸が締め付けられるような思いでした。場所によってはまさに静寂で、生きているものがいない、廃墟のような空間があって、心が痛みました」

 ロケ中にも雨が降り続き、「避難してください」という防災アナウンスが何度も鳴り響いたという。

「今でも皆さん、ピリピリしながら暮らしているんだろうなと感じました。それでも、地元の人々は明るくて、ロケに協力してくれた方たちが『笑うしかない』『悲しんでばかりじゃいられない』と言いながら、木や石を運んでいました。人間って、本当に強い存在だと感じました」

 清水が演じたのは、主人公の元恋人で、旅館の再建を目指す強い意志を持つ、女将、山科雪子。「皆さんの声を聞きながら、できるだけ明るく、リアリティを持って演じたいと思いました。ドラマチックな演出も必要ですが、現場の空気感を大切にしたかった」

 同作はクラウドファンディングで製作されたインディペンデント作品で、照明も自然光のみ。スタッフも少人数だった。「インディペンデント映画はあまり経験がなかったので、新鮮でした」と振り返る。

 帰国後は『軍艦少年』(21年)、ドラマ『シコふんじゃった!』(22年)、『カムイのうた』(23年)などに出演。さらに、主演作『空の港のありがとう』『BISHU~世界でいちばん優しい服~』『海の沈黙』、NHKドラマ『3000万』(24年)でも存在感を見せている。

 かつては朝ドラヒロインを務め、カンヌ映画祭パルム・ドール受賞作『うなぎ』などで存在感を放ってきたが、「ブランクも長いので、若い人は私のことを知らない方が多い。だから、今は新人のつもりで一から頑張っています。あと何年できるか分からないけれど、できれば20年くらいはやりたい。役者は脳が働いている限り死ぬまでできる仕事ですから」と清水。今後は得意の英語を活かした作品にも挑戦したいと意気込んだ。

■清水美砂(しみず・みさ)東京都出身。1987年に映画『湘南暴走族』のヒロインオーディションを経てデビュー。89年には連続テレビ小説「青春家族」(NHK)でヒロインをつとめる。周防正行監督『シコふんじゃった。』(92)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞、中島文博監督『おこげ』(92)で報知映画賞最優秀主演女優賞・日刊スポーツ映画大賞新人賞、カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作『うなぎ』(97)で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。近年の主な出演作に『BISHU~世界でいちばん優しい服~』(24)『海の沈黙』(24)がある。

ヘアメイク:佐々木博美
スタイリスト:村上利香
衣装:LEONARD
アクセサリー:UNOAERRE

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