ルパン演じ続けて30年…栗田貫一が明かす“引き際”と新たなルパン像「最後はお客さんの評価で決まる」

若きルパンらを描く『LUPIN THE IIIRD』シリーズ(小池健監督)の『LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン』が、各動画サービスで6月20日から配信されている。同シリーズは原作マンガ『ルパン三世』に漂うアダルトで危険なテイストを引き継いでおり、配信版は最新映画につながる作品に。タレント・栗田貫一は故・山田康雄さんからルパンの声を継ぎ今年でちょうど30年になる。このほどインタビューに応じ、ハードボイルドに描かれる“小池ルパン”の魅力や、ものまねから始まったルパンを演じ続ける覚悟を語った。

インタビューに応じた栗田貫一【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた栗田貫一【写真:ENCOUNT編集部】

小池健監督『LUPIN THE IIIRD』シリーズの集大成

 若きルパンらを描く『LUPIN THE IIIRD』シリーズ(小池健監督)の『LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン』が、各動画サービスで6月20日から配信されている。同シリーズは原作マンガ『ルパン三世』に漂うアダルトで危険なテイストを引き継いでおり、配信版は最新映画につながる作品に。タレント・栗田貫一は故・山田康雄さんからルパンの声を継ぎ今年でちょうど30年になる。このほどインタビューに応じ、ハードボイルドに描かれる“小池ルパン”の魅力や、ものまねから始まったルパンを演じ続ける覚悟を語った。(取材・文=大宮高史)

 本作『銭形と2人のルパン』は、ルパンを追い続ける男・銭形警部(山寺宏一)を主役に据えた。架空国家・ロビエト連邦で発生した爆破テロ事件を追う銭形は、事件現場で目撃したルパンを追う。しかし捜査を進めるうちに、もう一人の「ルパン」とも言うべき謎の男と出会い、事態は混迷を極めていく。思いがけず出会う栗田演じるルパンと偽ルパン(堀内賢雄)。信念を試される銭形だが、やがて事件の真相と黒幕の存在に近づいていく――。

 モンキー・パンチさん原作の『ルパン三世』は、1970年代から何度もアニメ化されてきた。今回、監督を務める小池氏は、2012年にテレビアニメ『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』にキャラクターデザイン・作画監督で参加後、『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(2014年)、『血煙の石川五ェ門』(17年)『峰不二子の嘘』(19年)と、ルパン以外のメインキャラクターを主人公にした各作品で監督を担当してきた。そして今年、銭形を主人公にした配信が実現した。この最新ストーリーは、6月27日公開の映画『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』につながっており、前日譚として描かれている。
 
 そんな中、ルパンの声を演じる栗田は “小池ルパン”について、「ポピュラーなルパンとは全く違う、別世界といってもいい作品を小池さんは作ってくれました」と打ち明けた。「銭形のことを『とっつあん』と呼ばないし『不二子ちゃ~ん』なんて言いません。山田(康雄)さんが育ててくれたテンポのいい、おちゃめなルパンも魅力的でこちらも続けていきたいですが、小池ルパンも格好いいんです。別世界のルパンだからタイトルも『LUPIN THE IIIRD』なんですね」とその魅力を語った。

――『LUPIN THE IIIRD』シリーズでルパンの声を演じるあたり、心がけてきたことは。

「テレビアニメ『峰不二子という女』で声をあてた時、監督の山本沙代さんが『ワルなルパンの声が、セクシーで魅惑的』と言ってくれました。僕はあまり意識していなかったんですが、女性目線だと色気を感じてもらえたんだなと気づいて。それで、低い声で渋く、凄味のあるルパン像を作っていきました」

――その後、スピンオフ作品で“小池ルパン”を演じてきました。印象的だったことは。

「アフレコ(アフターレコーディング)は、結構緊張しました(笑)。一般的に知られるルパン像にとらわれず、マイクに向かって1人芝居をしていくので『どうしよう?』と思いながらやっていました。でも予告編でルパンの声を聞くと『意外に格好いいな』と思えましたね。そんなに格好つけた芝居はしていなかったのに」

――それはなぜでしょうか。

「作りこむと、かえって狙った通りの効果が出ないこともあると思います。例えば『別に俺たちは正義の味方じゃねえ』というセリフも、アフレコではさらっとしゃべっただけなのに、映像になってその一瞬を切り取るとニヒルで格好いい。それに『ここで泣かせてやろう』みたいにプランを持っていっても、小池さんに『違う』と言われたら対応できないし、いい意味で肩の力を抜いて、小池さんがイメージするルパンに寄り添っていきました」

――1996年公開の映画『DEAD OR ALIVE』以来、約30年ぶりの2Dアニメの新作劇場版『不死身の血族』は、小池ルパンの集大成になりそうですね。

「僕は緻密でダークな小池ルパンの絵が大好きなんです。音楽もポピュラーなルパンとは一線を画したエンタメとして完成しています。今回は銭形もリアルな人間として描かれていて、ルパンとの対峙も男同士のロマンを感じますね」

山田康雄さんへのリスペクトを込めつつ、ルパンを演じ続ける気概を語った【写真:ENCOUNT編集部】
山田康雄さんへのリスペクトを込めつつ、ルパンを演じ続ける気概を語った【写真:ENCOUNT編集部】

「僕がやるんですか?無理ですよ」から始まった栗田ルパン

 そう話すと、笑顔を見せた。栗田といえば、もとは、山田康雄さんのルパンをものまね芸でやっていた。だが、山田さんが1995年に急逝し、同年からルパンの声を引き継ぐことに。今年30年を迎えた。「引き継いだというより、『僕がやるんですか? 無理ですよ』というところからやらせていただき、30年経ってしまいました」としみじみ。今でも、お茶目なのにニヒルでクールな「ルパン三世」のイメージを作ってくれた山田さんへのリスペクトを抱いている。

「僕は特に映画『カリオストロの城』(1979年)が好きなんですが、当時のキャストの方々の『ルパン三世』がある意味、集約されていると思っています。ルパンも、どの瞬間も見応え、聞き応えがありました。ルパンらしさを保つためには、あの頃の山田さんの声がお手本なんです」

――では、これからも何歳までルパンを演じていきたい、といった今後のビジョンはありますか。

「ルパンは、作品の中で太陽でないといけないと思っています。絶対的な存在感を放ち、『ルパン三世』というエンターテインメント作品のエネルギーの源です。そのエネルギーを出せなくなったら、僕はルパンを辞めようと思っています」

――なるほど。それでも栗田さんの声を聞きたいというファンは多いのでは。

「確かに僕自身だけで決められるものではないですし、最後はお客さんの評価で決まると思います。その時に、以前とのギャップに悩むことのないように頑張るしかないですね」

――では改めて今回の配信、そして最新劇場版について今の心境をお聞かせください。

「(本流の)陽気なルパンではしゃぐのも好きですし、はしゃげるエネルギーがある限り、ルパンの声をさせていただきたいと思っていますが、小池さんの“ダーク系なルパン”も楽しませてもらいました。『次元大介の墓標』以来、皆で1軒ずつ家を建てるような気持ちでやってきて、配信作品『銭形と2人のルパン』と劇場版『不死身の血族』で5軒すべてが完成しました。どうぞ『LUPIN THE IIIRD』の残り2軒を楽しんでください」

 そして最後に、「ものまねの方は、(レパートリーの)細川たかしさんのものまねができなくなったら辞めよう、と思っているんですが、ルパンもルパンの元気な声が出せなくなったら退かなければ……という思いでいます。それくらい僕にとって重みのあるキャラクターになりました」と覚悟を明かした栗田。ルパンとして常に輝いていなければという信念を持ち、これからも人々のハートを“盗んでいく”――。

□栗田貫一(クリタカンイチ)1958年3月3日生まれ、東京都出身。1983年にフジテレビ系『日本ものまね大賞』でデビュー。その後、ものまねタレントや俳優として活動。1995年に映画『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』で山田康雄さんの後任として初めてルパンの声を演じる。その他にも、NHK『ひょっこりひょうたん島』ドン・ガバチョ役や、米ドラマ『バーン・ノーティス 元スパイの逆襲』マイケル・アレン・ウェスティンの吹き替えも務めている。170センチ。

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