Suchmos、5年8か月ぶり復活ライブで圧巻ステージ「感謝の気持ちを伝えたくて、その一心で」【ライブレポート】

ロックバンド・Suchmos(サチモス)が21日、22日と2日間にわたり、神奈川・横浜アリーナで5年8か月ぶりとなるワンマンライブ「The Blow Your Mind 2025」を開催した。この日の復活を心待ちにしていた2日間で合計2万5000人のファンが、極上のバンドサウンドとクールなステージに魅了された。ENCOUNTは2日目、22日のライブをレポートする。

2日間で合計2万5000人のファンを集めたSuchmos
2日間で合計2万5000人のファンを集めたSuchmos

横アリでの「The Blow Your Mind 2025」2日目レポート

 ロックバンド・Suchmos(サチモス)が21日、22日と2日間にわたり、神奈川・横浜アリーナで5年8か月ぶりとなるワンマンライブ「The Blow Your Mind 2025」を開催した。この日の復活を心待ちにしていた2日間で合計2万5000人のファンが、極上のバンドサウンドとクールなステージに魅了された。ENCOUNTは2日目、22日のライブをレポートする。

 Suchmosは2013年に結成し、16年にCMソングとなった『STAY TUNE』のヒットをきっかけに一気に音楽シーンの中心へと登りつめた。しかし、21年2月にバンド活動休止を発表し、同年10月にバンドの中心的メンバーだったベーシスト・HSUこと小杉隼太さんが亡くなり、復活の道が遠のいたかに思えた。ところが昨年10月に活動再開とこの日の横浜アリーナでのワンマンライブの開催が発表されチケットは争奪戦となった。

 2日目となった22日も前日と同じ気温が30度を超える熱さの中、横浜アリーナには、グッズを買い求めるファンや彼らの登場を待ちきれないファンが開場前から詰めかけていた。

 定刻の午後5時を5分ほど過ぎたところで場内が暗転。満員の横浜アリーナに大きな歓声と拍手が鳴り響いたが、すぐに場内は静かになった。「待ってたよ!」という声も聞こえてくる中、多くのファンが緊張気味にじっとステージを見つめた。

 すると、まるで朝日が昇るように暖色系の明かりがステージから客席に向かって照らされると、メンバーがゆっくりとステージに登場した。逆光でシルエットだけしか見えないまま、中央のYONCE(ボーカル)が客席に深く一礼する。そしてTAIHEI(キーボード)のエレピ(エレクトリックピアノ)の優しい音が聴こえてきた。そのままOK(ドラムス)がゆったりとリズムを刻み、1曲目の『Pacific』へ。ささやくような声でYONCEが歌うと、今度は夕陽の浜辺のような背景へと変わり、薄暗いステージでメンバーの顔が見えないまま演奏が続き、オーディエンスもゆっくりと体を揺らす。

 そのまま2曲目へ。今度はTAIHEIがリズミカルにエレピを奏でると、そのリズムに合わせてメンバーが一斉に音を鳴らし、YONCEが歌い出す。すると一気にステージが明るくなり、5年ぶりに戻ってきたメンバーの顔がハッキリと見えた。大きなステージ両側に設置された大型スクリーンにもメンバーの雄姿が映し出され、「ヨコハマ、カモーン!」というYONCEの声に観客が反応し、声を上げた。演奏したのは新曲の『Eye to Eye』。初めて聴く曲とは思えないような、まさにSuchmosお得意のグルーヴィーなナンバーだ。クールに演奏するメンバーを見ながら、オーディエンスは誰を気にすることなく自由に体を揺らしながら楽しむ。

 新曲の演奏を終えると今度は一転してロックンロールナンバーの『DUMBO』へ。OKが、アップテンポなリズムでグイグイと押していくと観客も負けじと拳を突き上げて一緒になって8ビートを刻んだ、TAIKINGが歪んだギターでソロを弾き、よりワイルドさの増したYONCEが叫ぶ。横浜アリーナが一気にスパークすると、その勢いで『STAY TUNE』へ。Kaiki Ohara(DJ)が小気味のいいスクラッチ音を鳴らし、YONCEがファルセットで歌った瞬間、エモーショナルな空気に包まれた。笑顔の人、涙ぐむ人――。復活した彼らへのそれぞれの思いが、大きなハートマークになってステージに届けられた。さらに畳みかけるように『808』へ。スクリーンには満面の笑みでキーボードを弾くTAIHEIの姿が映し出され、アリーナのボルテージは最高潮に達した。

7月2日リリースのNEW EP『Sunburst』から新曲も披露した
7月2日リリースのNEW EP『Sunburst』から新曲も披露した

「俺たちの対バン相手を募集してます!」

 ブランクを感じさせない演奏で初っ端から飛ばしてきたメンバーがクールダウン。YONCEが「初めまして。お久しぶりです。Suchmosです。2Daysの2日目、昨日も楽しかったけど今日も楽しいです。俺らは勝手に楽しむからあなた方も勝手に楽しんでくださいね」とリラックスした雰囲気を演出した。次に演奏したのは『PINKVIBES』。アーバンでジャジーなグルーヴに合わせてオーディエンスも横に揺れながら音を楽しむ。そのままサポートベースの山本連の演奏によるイントロに合わせて『Burn』へ。ファンキーなロックサウンドとYONCEのパワフルで妖艶なボーカルが混じり合い、激しい音のシャワーが客席に降り注ぐ。

 続いてもファンキーなナンバー『Alright』を演奏。メンバー6人のグルーヴィーで極上なバンドサウンドが言葉にならないくらい気持ちいい。客席からも「気持ちいいよ!」の声が上がるとYONCEも「俺も!」と言って笑顔で返した。そして「これが俗にいうバンドスタイル! 一人ひとりはただの“ろくでなし” でもひとたび集まると何だかすごい。…かもしれないし、そうじゃないかもしれない。じゃあ、みんなで1つに……。なりません。(1つに)なっても意味がありませんから。それぞれで楽しんでください。よろしく!」と独特の言い回しでSuchmosならではの楽しみ方でもある「自由である大切さ」を伝えた。

 中盤には新曲を2曲続けて披露した。ポップなナンバーの『Whole of Flower』、ストレートな愛を歌った『Marry』ではYONCEがアコギを弾きながらフォーキーに歌った。

 演奏が終わると、「よっ、色男!」「結婚してくれー」といった客席からの粋な掛け声にYONCEも思わず笑ってしまう。そして思い出したかのように「そういえばインターネット上で俺は結婚しているらしんだよね」とネット上のうわさについて語り、観客も爆笑した。

 そしてYONCEが、あらためてサポートの山本を紹介した。「彼とメンバーとは実は古い仲で、俺とは確か横浜西口の古着屋で会ったんだよね」と話すと、山本も「覚えてる! 『THE BAY』を録っている最中だったかな」と当時を振り返った。さらに昔の話になり「スマブラ(任天堂のゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズ』)をやったの覚えてる?」「高校生の時、隼太(HSU)に連れられて大原家に行ったね」「TAIKINGには誰も勝てないから」と今度はゲームの話に移り、TAIKINGが「IDもTAIKINGでやっているので挑戦者待ってまーす」と呼びかけ、まったりとフリートークを楽しんだ。YONCEも「俺たちの対バン相手も募集してます!」とアピール。

 後半戦も新曲を披露した。『To You』は、ファンキーなロックナンバーで「お前らしくいてほしい」という歌詞が印象に残った。次は『Latin』でタイトル通りラテンのリズミカルなダンスナンバーだ。バンドのグルーヴィーなサウンドに合わせてYONCEが「思いつくままに踊り続けろ!」という言葉を繰り返す。そしてDJのKaiki Oharaが、6月に82歳で亡くなったスライ・ストーンさんを追悼するかのようにスライ&ザ・ファミリー・ストーンの『シング・ア・シンプル・ソング』をさりげなくサンプリングして載せていく。

 途中、演奏を止めて会場を真っ暗にしたままトークタイムへ「これ曲の途中なんです」とYONCEが言うと「せーの!」で再び演奏を始める。そんな遊び心をくすぐる彼らの絶妙なアンサンブルも楽しめた。

 そしてクライマックスへと突入。『GAGA』ではミニマルなリズムで観客の体を揺らすと、今度は『VOLT-AGE』でスケールの大きなグルーヴを奏でるなど緩急自在の演奏で圧倒した。そして本編最後はファンキーナンバーの『YMM』を演奏した。

アジアツアー『Suchmos「Asia Tour Sunburst 2025」』の開催が決定
アジアツアー『Suchmos「Asia Tour Sunburst 2025」』の開催が決定

「失ったものは帰ってこないことを嫌と言う程知った」

 オーディエンスはスマホのライトを点滅させてアンコールの手拍子を鳴らす。するとメンバーがゆっくりとステージに登場し、今日演奏した新曲を収録したNEW EP『Sunburst』が7月2日リリースされると紹介し、次に日本とアジア13都市を巡るアジアツアー『Suchmos「Asia Tour Sunburst 2025」』の開催が決定したことを報告した。

 そしてYONCEが横浜アリーナのオーディエンスに一つひとつ言葉を選びながら大切な話をした。

「昨日も話して、あんまり重たい話にはしたくないんだけど、もともとベースを弾いていた小杉隼太、みんなの前ではHSU(スー)という名前で通っていると思うんだけど、彼が、死んだんだよね、4年前。あっという間の月日だったけど、とにかく『失ったものは帰ってこない』ということをこの4年間で嫌と言う程、知りました。いまだに実感がないんだけど時折り変な気持ちになるんだ。でもやっぱり『隼太はいないんだな』って痛感しています。これはバンドメンバーそれぞれの中で折り合いがついていたり、そうじゃなかったりするんだけど、ここでバンドとしてひと区切りをつけたいと思ってね。昨日は、『みんなで深呼吸しませんか』と言ってお願いしたんだよ。だから今日もよかったら一緒に目を閉じて深呼吸しませんか」

 そう呼びかけると、黙祷の意味を込めて約20秒ほど全員が目を閉じ、HSUを思い、静かに深呼吸をした。

 目を開けると「ありがとう」とYONCEが感謝して話を続けた。

「来週は彼の誕生日です。彼には2人の息子がいる。だから彼らのおもちゃ代を稼ぐのが、俺たちの仕事かなと思っています。どうぞ応援よろしくお願いします」と話した。するとOKも口を開き「俺に隼太がくれた最後の言葉は『一番好きだぞ』でした」と明かした。

 YONCEが「昨日は『つるっ禿のクソバカに捧げる曲を』と言って曲紹介したんだけど、今日は、新しい命に捧げる歌をやりたいと思います」と言うとギターを持ったYONCEが目を閉じながら新曲『BOY』を歌った。

 歌い終わると「2日間ありがとうございました」とあらためて客席に向かって感謝し、「昨日も話したんですけど5年半ぶりのライブだから初めましての人もいると思うし待ってくれてた人もいて、そのどちらにも感謝の気持ちを伝えたくて、その一心でやりました」と復活ライブに懸けてきた胸の内を明かした。

 YONCEは続けて「今日来たあなたたちは、それぞれの仕事に都合をつけて今日この時間にわざわざ薄暗い場所に集まった変な人たちなんです。私たちはそんな変なあなたたちの前で大汗をかきながら必死こいて演奏している変な人たちです。だから変な人たち同士仲良くしようね。あばよ!」と言って、復活ライブ最後の曲『Life Easy』へ。美しいピアノの音がイントロに響き、YONCEがソウルフルに歌い上げる。「自分のために生きよう」という歌詞の言葉が強烈に響いた。

「ありがとうSuchmosでした。またどっかで会いましょう!」メンバー全員が客席に手を振ってステージを降りた。

 2日間のライブをきっかけに未来に向かって一歩前に踏み出したメンバーたち。そして、これからまた最高にクールな彼らの演奏を味わえると思うと胸が熱くなる。Suchmosが戻ってきた。

Suchmos「THE BLOW YOUR MIND 2025」
2025年6月21日横浜アリーナ・セットリスト
01.Pacific
02.Eye to Eye(新曲)
03.DUMBO
04.STAY TUNE
05.808
―MC―
06.PINKVIBES
07.Burn
08.Alright
―MC―
09.MINT
10.Whole of Flower(新曲)
11,Marry(新曲)
12.OVERSTAND
―MC―
13.To You(新曲)
14.Latin(新曲)
15.GAGA
16.VOLT-AGE
17.YMM
~アンコール~
18.BOY(新曲)
19.Life Easy

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