【センダイガールズ】「業界全体を見ないと」師匠の一言から始まったレスリング練習会で橋本千紘が感じたこと

センダイガールズワールド王者・橋本千紘にとって2025年は大きな転機となりそうだ。4月には師匠・里村明衣子が引退し、名実ともにセンジョのトップ選手としてデビュー10周年を迎えることとなる。そんな中、橋本は里村からの助言で、多くの女子団体が参加した合同練習を主催した。その意図、そして感じたこととは……?

センジョの王者として女子プロレス界全体を見渡す橋本千紘【写真:(C)センダイガールズプロレスリング】
センジョの王者として女子プロレス界全体を見渡す橋本千紘【写真:(C)センダイガールズプロレスリング】

里村明衣子は大事なときに大切な言葉をかけてくれる存在

 センダイガールズワールド王者・橋本千紘にとって2025年は大きな転機となりそうだ。4月には師匠・里村明衣子が引退し、名実ともにセンジョのトップ選手としてデビュー10周年を迎えることとなる。そんな中、橋本は里村からの助言で、多くの女子団体が参加した合同練習を主催した。その意図、そして感じたこととは……?(取材・文=橋場了吾)

 前編の最後で、橋本は10周年を迎えるにあたり「今のファイトスタイルで長く続けていきたいと思っているので、ケガをしないことを第一に考えている」と語った。では、ケガをしないように心掛けていることはあるのだろうか。

「やっぱり、何より練習が一番だと思いますよ。あと自分は試合前のアップをすごく大事にしていて、アップをしっかりやっている選手とやっていない選手では全然違うと思います。なので、もっとアップを大切にしてほしいですね。若い子はアップしなくても試合をできると思うんですけど、若い子ほどもっとアップして体を作ってから試合に臨んでほしいです。私は試合前にロープワークも受け身もガンガンやって、試合以上に息を上げてから試合に臨むんですが、同じようにしなさいとは言わないですが、自分なりに考えてアップをした方がいいと思いますね」

 橋本の練習に影響を与えた選手がいる。DDT・AEW・新日本プロレス3団体所属という今を時めくKONOSUKE TAKESHITA(竹下幸之介)だ。

「プロレスに対する考え方が凄いですよね。一回シングルマッチしたとき(2019.12.10DDTの広島大会、ジャーマンで竹下がフォール勝ち)も自分のジャーマンを崩すために首ではなく手のクラッチを崩すことに重点を置いて試合をやっていて、勉強になりましたね。竹下さんのことは凄く尊敬していて、実は練習内容も交換していたりするんですよ」

 4.29後楽園ホール。橋本はアジャコングと組み、師匠・里村明衣子(パートナーは愛海)の引退試合に臨んだ。里村“を”創ったアジャと、里村“が”創った橋本が里村の最後の相手を務めた。

「正直、(引退試合の相手に)選ばれるか選ばれないかはすごくドキドキしていた部分があって、選ばれたときは嬉しい気持ち、本当に最後なんだなという気持ち、でも私がやらないで誰がやるんだという気持ち……色々な思いがありましたね。(里村は)自分の大事なときに大切な言葉をかけてくれる存在……普段は自由に育ててくれたんですけど、本当に大切な場面でくれる言葉が大きいなと思います。

 自分が長い間ベルト(センダイガールズワールド王座)を持っていて、獲って獲り返してを繰り返していたときに、VENY(当時は朱崇花)に負けてベルトを獲られたときに『本当にありがとう。このベルトの価値を上げてくれたのは千紘のおかげだよ』といわれた言葉は忘れられないですし、またもっと強くならなきゃいけないんだなと思いました。誰が見ても女子プロレス界で一番強いのは橋本千紘だろう、橋本千紘が負けたことで一面になるくらいの位置になるまでの存在になりたいですね。自分はいい試合をしにリングに上がっているわけではなくて、勝ちを求めることが一番大切にしていることなので」

話題を呼んだ合同練習について語った橋本【写真:橋場了吾】
話題を呼んだ合同練習について語った橋本【写真:橋場了吾】

センダイガールズ日本武道館大会実現に向けて橋本千紘をアピールしたい

 その里村からの助言で橋本は動いた。それが6月3日に橋本の母校・安部学院高校で開催された5団体20選手が参加したレスリング練習会だ。

「里村さんが引退されて今後どうしていこうかという話をしたときに、自分はセンジョの若手の底上げの話をしたんですが、里村さんから『千紘は女子プロレス界全体を見なきゃだめだよ、そういう位置にいるんだということを自覚してほしい』と。それで自分ができることを考えて、レスリングを教えることだなと思って。女子プロレス界、特に今の若い子たちに足りてない部分がレスリングかなと思ったので、安易な気持ちで声をかけたんですが予想以上に集まってしまいまして(笑)。

 オリンピックの金メダリストの須崎優衣選手、志土地真優選手(ともに2021年の東京オリンピックで金メダルを獲得)にも参加してもらいました。実はスターダムから8選手も参加してもらったのにはびっくりして、こんなに学びたい意欲がある子がいるんだと感心しました。この子たちも上を目指して、強くなりたいという意識を持ってやっているんだなと思うと、他団体ですけど強くさせなきゃいけないなという気持ちになりました。今回これだけ反響があって、声がけできなかった団体からもなんで呼んでくれなかったんだと言っていただいたので、もっと多くの団体を呼んで最終的には女子プロレスラーのレスリング大会ができるくらいにしたいですね。レスリング側の関係者も嬉しかったみたいで、もっと練習に来てくださいと言ってもらえました」

 練習の最初の打ち込みで、二人一組になるよう呼び掛けた橋本。そのときに、橋本の前に出てきて一緒に練習することを望んだ選手がいた。

「スターダムの姫ゆりあ選手です。これは正直びっくりしました。実は練習の後に、レスリングをもっと学んで強くなりたいと思いますと連絡があって。そういう面ですごく楽しみですし、スターダムの選手は基礎があってレスリングもできるので、もっと知りたい選手ではありますね。スターダムといえば、IWGP女子王者の朱里さんにも興味ありますよ」

 最後に今後の抱負を聴いた。

「一番は女子プロレスブームを作り出したいですね。かつての対抗戦時代のような……今映像で見ても凄いですし、今の時代でもあのブームを作らなきゃと思っています。そしてそのブームの先頭に立って、センダイガールズとして日本武道館進出実現に向けて、色々な団体に出て橋本千紘をアピールしていきたいと思っています」

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