異色の双子アーティスト・岡本兄弟、“食事は毎日カレー”の下積み生活 夢は海外での個展

双子のアートユニット・岡本優&岡本修が東京・東急プラザ銀座のARTGALLERYで、画業30周年記念展「Electric」(6月22日まで)を開催中だ。2人はテレビ、ラジオ、イベントなどでタレントとしても活動。19歳だった1996年の上京以来、2人で暮らし、創作活動を続けている。異色の双子画家のリアルなライフスタイルとは?

インタビューに応じた岡本優&岡本修【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた岡本優&岡本修【写真:ENCOUNT編集部】

上京から30年、独身で2人暮らし貫く異色の双子画家・岡本兄弟 創作と人生の裏側

 双子のアートユニット・岡本優&岡本修が東京・東急プラザ銀座のARTGALLERYで、画業30周年記念展「Electric」(6月22日まで)を開催中だ。2人はテレビ、ラジオ、イベントなどでタレントとしても活動。19歳だった1996年の上京以来、2人で暮らし、創作活動を続けている。異色の双子画家のリアルなライフスタイルとは?(取材・文=平辻哲也)

 岡本兄弟は1976年、大阪・枚方生まれの一卵性双生児の画家。兄の優は油彩画、弟の修は油性色鉛筆を使ったイラストを中心に創作。異なる作風がコラボ作品で絶妙なハーモニーを生んでいる。

 本展のテーマは「Electric(エレクトリック)」。バンコクの夜を走るトゥクトゥクのヘッドライトから着想を得た“発光”と“輝き”をテーマに、新作を中心に展示。期間中は、本人が来場者に作品を直接案内するという特別な演出も。親しみやすいトークが評判の2人は、「展覧会を“アートに気軽に触れる場”にしたい」と語っている。

 2人は幼稚園の頃からアートに興味を持ち、独学でスタイルを確立した。高校卒業後に1年間アルバイトで稼いだ全財産を元手に上京。99年、世田谷美術館での初の個展「双子(そうし)展」以降、公募展にも多数入選してきた。

 修が「最初の5年は長く、きつかったです。何もないところから東京に出てきてアルバイトを掛け持ちしながら作品を描いていました。その後はあっという間でしたね」と言うと、優は「個展を開くまでの3年間は、本当に暗黒時代でした。寝る間も惜しんで創作!! 食事は毎食カレー。お金はすべて画材に費やしました。若いから、がむしゃらにできたんだと思います」と振り返る。

 転機は2004年から3年間、NHK『生活ほっとモーニング』にレギュラー出演したこと。しかし、この頃、修がパニック障害を患い、閉鎖空間で息ができなくなることもあった。

「放送は1時間なのですが、入りの時間が早く、終わってからも次の打ち合わせがあるんです。時間がなくて、創作が深夜になることも。電車に乗ろうとすると、息ができなくなってしまったんです。ミンティアの清涼感で無理やり呼吸して治しましたけど(笑)」と修は語った。

 そんな時に生活に取り入れたのがジョギング。今ではパリ、ホノルル、バンコクなど国内外のマラソン大会にも数多く出場し、フルマラソンを3時間半で走り切る。

「ADさんに教えられたのがきっかけでした。その間に母ががんになったこともあって、願かけのつもりで100キロを走るウルトラマラソンも挑戦しました。絶対走れないと思ったんですけど、ペース配分しながら並走しているので、声をかけ合いながら、走りきりました。これって、人生と一緒だなと思いました」と優は振り返る。

現在も2人暮らし…家事は分担「衝突も多いですね」

 2人は独身。上京以来、ずっと2人暮らし。「別々に住む気はさらさらないです」(優)。「きっと1人で上京していたら、大阪に戻っていたかもしれません。2人だから乗り越えられた。双子は夫婦よりも最強。どちらかが結婚した時は3人で住みたいと思うほどです」(修)。

 掃除・洗濯・食事もLINEで「やったこと」を報告し、どちらかに偏りがないように努めているそうで、本音で言い合えるからこそ生まれるけんかもしばしばだという。「10~20代の頃はお互いに歩み寄りがあったんですけど、最近本当に年を重ねるごとに頑固になってきて、衝突も多いですね(笑)。あざを作るようなけんかもしましたよ。でも、けんかするパワーがあるなら、作品に情熱を傾けようと思います」(修)。

 17年7月に母が死去し、制作意欲を失った時期もあった。さらには慕っていた作曲家の平尾昌晃さんも亡くなった。「『メモリアルアルバムのアートコンセプトを手掛けてほしい』と依頼を受け、ブックレットに載せる作品をたくさん描いたんです。そこで、やらなくては、という思いが生まれて、そこから再び動き出したような気がします」(優)。

 創作活動は、優は自宅、修は近くの大学のカフェテラスなども利用している。「優は油彩で大きな作品を描いているので無理ですが、僕はどこでも描くことができるんです。若い人たちの声を聞いていると、パワーをもらった気がするんです」と修は語る。

 いろいろと共通点の多い2人だが、好きな相手が重なったのは幼稚園時代に一度だけ。2人とも、子ども向けに絵画教室なども開催しているが、家庭を持つつもりはない。

「僕らは4人兄弟の真ん中の2人なんですが、長男と四男には子どももいます。兄弟の中に、こういう面白い人間もいていいかな、と。家庭を持つと、身動きしづらいところもありますよね。我々は独身だから、気楽に両親と旅行に出かけることもできるんだと思います」と優は語る。

 30周年を迎えた次の目標は何か。

「海の見えるアトリエで作品を制作しながら、いろんな国々を旅して、それを作品に反映させて、それを発表していくというのが当初からの理想というか、目標です」(優)。

「僕は海外で個展を開いてみたい。僕の作品は小さいので、海外に持ち運べるので、フランスなどで開いてみたい。それから、壁画など大きな作品で優とコラボしたい。岡本太郎の『明日の神話』みたいな大きな作品を作ったり、ブランドとコラボもできたら面白いだろうなと思っています」(修)。

 これからも双子の力を最大限に発揮し、新たなアートの世界を見せてくれそうだ。

□岡本優(おかもと・ゆう)&岡本修(おかもと・しゅう)1976年10月29日、大阪・枚方市生まれ。高校卒業後、絵画制作活動のために上京。一卵性双生児の画家として、またタレントとしてテレビ、ラジオ、イベントなどで活躍。99年、世田谷美術館にて初個展『双子(そうし)展』を開催。二科展、旺玄展、国際亜細亜現代美術展などの公募展にも多数入選・受賞。それぞれの活動のほか、定期的にコラボ制作を行い、99年から現在まで毎年双子展を開催。テレビ、ラジオ、イベントなどへの出演のほか、衣裳デザインや舞台美術、キャラクターグッズ制作、テレビ番組のオープニングタイトルなど多彩なデザインワークを手がけるほか、工作教室を主宰し、「表現する喜び」を伝えている。

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