森七菜、23歳の現在地 2作連続で話題映画に出演…「ストッキングを履くような」役が増加

映画『フロントライン』(6月13日公開、関根光才監督)で、新人クルー役で英語セリフに初挑戦した俳優の森七菜。カンヌ国際映画祭監督週間にも出品された出演映画『国宝』(6月6日公開、李相日監督)では、主人公(吉沢亮)を兄のように慕う歌舞伎役者の娘役を演じている。これまで学生役も多かったが、役の幅が広がってきた印象だ。23歳の現在地とは?

映画『フロントライン』『国宝』に出演している森七菜【写真:増田美咲】
映画『フロントライン』『国宝』に出演している森七菜【写真:増田美咲】

学生役から役の幅が広がる

 映画『フロントライン』(6月13日公開、関根光才監督)で、新人クルー役で英語セリフに初挑戦した俳優の森七菜。カンヌ国際映画祭監督週間にも出品された出演映画『国宝』(6月6日公開、李相日監督)では、主人公(吉沢亮)を兄のように慕う歌舞伎役者の娘役を演じている。これまで学生役も多かったが、役の幅が広がってきた印象だ。23歳の現在地とは?(取材・文=平辻哲也)

『フロントライン』は2020年2月、日本初の新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船ダイヤモンド・プリンセスの事実を基にした映画。船内の救命活動に駆り出された災害派遣医療チーム「DMAT(ディーマット)」の活躍を中心に描く群像劇。小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、窪塚洋介ら人気・実力を伴う俳優陣が結集する中、森は乗客のアテンドに奔走するクルーを演じた。

 コロナに感染した経験もあり、「めちゃくちゃつらかったですね。喉が枯れて、その後弱くなっちゃったりして……。命の危険を感じた」と振り返る森。映画で描かれた「未知のウイルスと戦う現場」には、実体験を通じた実感も強く重なったようだ。

 映画の中で、特に印象に残ったシーンとして挙げたのは、「(池松演じる)お子さんがいる隊員の方」が第一線で働いていた場面だ。

「どれだけ怖いことかっていうのは想像がつかない。でも、想像を絶する恐怖の中で立っていたのだと思うと、改めて尊敬しました」と静かに語った。

 羽鳥というキャラクターの「お客様のために」という姿勢については、「私は仕事において、自分のためにもやってる部分も大きいので、100%お客さんのためにっていう羽鳥みたいな人は本当に尊敬します。ああいう心がないと、羽鳥のような役は務まらなかったと思う」と語る。

「夢が叶った」と感じた瞬間を語った【写真:増田美咲】
「夢が叶った」と感じた瞬間を語った【写真:増田美咲】

 吉田修一氏の同名小説を原作に、出自がまったく違う2人の歌舞伎役者の壮絶な生涯を描く『国宝』にも出演。こちらでは、主人公・喜久雄(吉沢亮)を慕う歌舞伎役者の娘役を好演している。

 話題作に連続出演したことには、「もちろん誇りはあります。でも私は主人公を支える役だったので、『私すごいでしょ』っていう感覚ではなくて、現場の空気を作ってくださった皆さんに支えられたという認識が強いです」と謙虚に語る。

 23歳という現在地についても自然体を貫いている。流れに身を任せる彼女らしいスタンスだ。

「これまで学生の役が多かったのですが、ここ数年で“ストッキングを履くような”、職業を持った役が少しずつ増えてきたと感じています。こういう仕事をしている、かっこいい女性をもっと演じていきたいなっていう風に思いました。ただ、今の位置というのは正直まったく分からないですね。年々分からなくなってる気がします。自分が思った場所と違うところにいることが多いから、もう予測してもしょうがないかなと思っています」

 デビュー以来、多くの一流クリエイターと仕事をしてきた。

 これまでの活動の中で「夢が叶った」と感じた瞬間には、「(脚本家の)坂元裕二さん(『1ST KISS ファーストキス』)、是枝裕和さん(Netflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』)、岩井俊二さん(『ラストレター』)とお仕事できたこと」を挙げ、「とても良い経験でした。ありがたいことです」としみじみ語ってくれた。

 今後の展望について聞くと、「やりたいことができていたらいいなって。夢が叶う瞬間を何回か経験したいし、その夢がより難しいものであってほしい。その繰り返しが、自分にとっての意味になるんじゃないかと思っています」と意欲を見せた。“挑戦の繰り返し”こそが、俳優としての生き方なのかもしれない。

□森七菜(もり・なな)2001年8月31日、大分県出身。NHK連続テレビ小説『エール』(20)で広く知られ、映画『ラストレター』(20)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。主な出演作は、『東京喰種 トーキョーグール【S】』(19)、『最初の晩餐』(19)、『地獄少女』(19)、日本テレビ系連続ドラマ『3年A組 ─今から皆さんは、人質です─』(19)、映画『天気の子』(19/声の出演)、TBS系連続ドラマ『この恋あたためますか』(20)、映画『青くて痛くて脆い』(20)、『461個のおべんとう』(20)、『ライアー×ライアー』(21)、日本テレビ系連続ドラマ『逃亡医F』(22)、Netflixドラマシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』(23)、映画『銀河鉄道の父』(23)、『君は放課後インソムニア』(23)、フジテレビ系連続ドラマ『真夏のシンデレラ』(23)、映画『パレード』(24)、『四月になれば彼女は』(24)、『1ST KISS ファーストキス』(25)など。公開待機作に『国宝』(25)がある。

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