森七菜、台本に“絶望”も…実話映画で初の英語セリフ「通じたと感じられてほっとしました」
俳優の森七菜が映画『フロントライン』(6月13日公開、関根光才監督)で英語セリフに初挑戦した。本作は2020年2月、日本初の新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船ダイヤモンド・プリンセスの事実を基にした映画。森は客船のクルーを演じたが、学生時代から英語は苦手だそうで、台本を読んだ時は「絶望しました」と苦笑しながら振り返る。

コロナ禍の豪華客船を描く
俳優の森七菜が映画『フロントライン』(6月13日公開、関根光才監督)で英語セリフに初挑戦した。本作は2020年2月、日本初の新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船ダイヤモンド・プリンセスの事実を基にした映画。森は客船のクルーを演じたが、学生時代から英語は苦手だそうで、台本を読んだ時は「絶望しました」と苦笑しながら振り返る。(取材・文=平辻哲也)
『フロントライン』はドラマ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』シリーズ(2008・10・17・18)、11年の福島第一原発事故を描いたNetflixドラマ『THE DAYS』などの増本淳氏が企画・脚本・プロデュースを手掛けた、実話を基にしたエンターテインメントドラマ。船内の救命活動に駆り出された災害派遣医療チーム「DMAT(ディーマット)」の活躍を中心に描く群像劇で、小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、窪塚洋介ら人気・実力を伴う俳優陣が結集した。
森が演じたのは、豪華客船のクルー、羽鳥寛子。船内で発生した未知のウイルスのパンデミックに直面し、さまざまな国から乗船したゲストへの対応に追われることになる。
「学生時代から英語は苦手だったので、最初に台本を読んだ時は絶望しました」と苦笑する森。
「意味を理解するところから始めて、単語や文の構造を全部教えてもらって、発音の練習もスパルタな先生と一緒に必死にやりました」と努力を振り返る。
仕上がりについては「正直、自分で上手いか下手かも判断つかないままでした」と控えめだが、現場では英語を話す手応えもあったようだ。
物語は、船内の救命活動に奔走する「DMAT」の奮闘を描く群像劇。森が演じるのは、多国籍の乗客に対応し続けるクルー。未知のウイルスに翻弄(ほんろう)される極限の状況下で、そのリアリティーに全身で挑んだ。
特にオープニングシーンは、森の視点から横浜港に着岸するダイヤモンド・プリンセス号の巨大さを見せる印象的な場面だ。実在の出来事に基づいた重厚なドラマの中で、森の演じる羽鳥は観客にとって「案内役」となる存在だ。
「中側は本物、外側は違う船。でも自分の視界の中のリアリティーがすごくて、『映画が始まるんだな』と感じて、そこに参加できたことが光栄でした」と話す。
撮影中には、羽鳥寛子のモデルとなった実在のクルー・和田さんが現場を表敬訪問し、実際の話を直接聞く機会にも恵まれた。
「実際の和田さんは私よりも少しお姉さんです。『お客様が笑顔で去ってくださることが私たちの仕事であり幸せなんです』という言葉が心に残って、そこに忠実に演じようと思いました」と語る。

撮影では細部にもこだわり
最も印象に残っているのは、70代のアメリカ人乗客・ブラウン夫妻の妻とのバルコニーでのシーン。感染した夫が緊急搬送され、ひとり船内に残された妻が絶望の中でバルコニーから身を投げようとするのを、森演じる羽鳥が説得する。
「実は、奥さま役の方は日本語が達者な方だったので、撮影の合間は、ほとんど日本語でのやり取りだったんです。初めて感情的に英語を喋る場面で、緊張しました。でも英語が通じたと感じられて、ほっとしました」と手応えを語る。
現場では、池松壮亮ら共演者たちとの交流もあった。
「池松さんをはじめ、チームの皆さんとご飯に行ったり、道の駅に寄ったりしました。私はどのチームにも属していない役だったので、仲間に入れてもらえてうれしかったです。羽鳥も物語の中で途中から仲間に入っていく役だったので、リンクする部分がありました」
また、現場の細部にもこだわりが感じられた。
「マスクの跡がちゃんと残るように、長時間着けてから撮影していたりして。そういう細かいところにもみんながこだわっているのが印象的でした」
羽鳥というキャラクターの背景については「あまり深くは考えず、シンプルに捉えました。長い準備を経て、これから楽しい船旅が始まるって時に事件が起きる。その希望と現実のギャップや、お客様のためにという気持ちを大事に演じました」と語る。
英語での演技にも初挑戦したことで、語学習得への意欲も。「難しいですが、できるようになって、次の役につながるようになればいいですね」と笑って意欲を見せた。
□森七菜(もり・なな)2001年8月31日、大分県出身。NHK連続テレビ小説『エール』(20)で広く知られ、映画『ラストレター』(20)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。主な出演作は、『東京喰種 トーキョーグール【S】』(19)、『最初の晩餐』(19)、『地獄少女』(19)、日本テレビ系連続ドラマ『3年A組 ─今から皆さんは、人質です─』(19)、映画『天気の子』(19/声の出演)、TBS系連続ドラマ『この恋あたためますか』(20)、映画『青くて痛くて脆い』(20)、『461個のおべんとう』(20)、『ライアー×ライアー』(21)、日本テレビ系連続ドラマ『逃亡医F』(22)、Netflixドラマシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』(23)、映画『銀河鉄道の父』(23)、『君は放課後インソムニア』(23)、フジテレビ系連続ドラマ『真夏のシンデレラ』(23)、『パレード』(24)、『四月になれば彼女は』(24)、『1ST KISS ファーストキス』(25)など。公開待機作に『国宝』(25)がある。
