安倍首相と同じ潰瘍性大腸炎で下血…“死生観”が変わり作家デビューした長浦京の思い

安倍晋三首相が28日、持病である潰瘍(かいよう)性大腸炎の再発を理由に辞任する意向を明らかにした。潰瘍性大腸炎は、333つある指定難病の一つで、大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患。下血を伴う下痢や腹痛などが主な症状で、日本では約22万人の患者がいると言われる。先日、ハードボイルド小説「アンダードッグス」(KADOKAWA)を上梓した作家・長浦京氏も患者の一人だ。

作家の長浦京氏【写真:ENCOUNT編集部】
作家の長浦京氏【写真:ENCOUNT編集部】

闘病しながら執筆活動

 安倍晋三首相が28日、持病である潰瘍(かいよう)性大腸炎の再発を理由に辞任する意向を明らかにした。潰瘍性大腸炎は、333つある指定難病の一つで、大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患。下血を伴う下痢や腹痛などが主な症状で、日本では約22万人の患者がいると言われる。先日、ハードボイルド小説「アンダードッグス」(KADOKAWA)を上梓した作家・長浦京氏も患者の一人だ。

 長浦氏は音楽雑誌「ロッキング・オン」などを経て、放送作家となり、テレビ東京系「ジャパンカウントダウン」などの音楽番組やバラエティー番組の構成を担当。作家への転身は潰瘍性大腸炎がきっかけだった。

 2003年頃から体調に異変が出て、05年に病院で精密検査を受けたところ、病名が明らかに。09年夏の入院中、自身の下血を見て、「すごくきれいだな、と思った。人が生きること、死ぬとはどういうことなのかと考え、この思いを文章にできないものか」と初めて小説を書いた。

 その小説が、2011年の小説現代新人賞受賞作「赤刃(せきじん)」だ。血のイメージを文章にぶつけた異色の時代劇。三代将軍、徳川家光が治世の江戸を舞台にした百を超える辻斬り事件が起こり、侍が斬って斬って、斬りまくる……。選考委員だった人気作家の石田衣良氏からは「戦場の異種格闘技としての武士の決闘を描く。現在の時代小説に欠落している部分を埋める可能性のある作品」と絶賛された。

 以降、病気をきっかけに自身の死生観に基づくハードボイルドタッチの小説を次々に発表。大正時代を舞台にリボルバーをぶっ放すヒロインの姿を描く第2弾「リボルバー・リリー」では第19回大藪春彦賞を受賞。3作目の現代犯罪劇「マーダーズ」では第73回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補、第2回細谷正充賞を受賞。現在も闘病しながら執筆を続けている。

 私生活では3児のパパとして、子育てに奮闘中。子どもは全て体外受精で授かったそうで、「冷凍した精子で、体外受精した。まるでSF映画を見ているようだった。こんな世の中なら、苦しくても、生き続ければ、完治が難しいと言われる難病もいつかは治るかもしれない」と期待している。

 最新刊「アンダードッグス」は1996年、中国返還直前の香港を舞台に、元官僚の証券マンが国家機密争奪戦に巻き込まれて……というストーリー。文芸評論家の池上冬樹氏は「映画『ボーン・アイデンティティー』の流れを汲む、世界レベルのアクション・ハードボイルド」と激賞する下半期の話題作。コロナ禍でおうち時間が増える中、ぜひ、手に取って欲しい一冊だ。

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(平辻哲也 / Tetsuya Hiratsuji)

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