「勝負をしなければ不敗」 57歳・中山秀征が芸能界のトップで“生き残り”続けるワケ
持ち前のコミュニケーション能力で芸能界きっての“愛されキャラ”の地位を確立してきたタレントの中山秀征(57)が今年で芸能生活40周年を迎えた。そんな中山の処世術を分かりやすく“分解”したビジネス書『気くばりのススメ』(すばる舎)が5月26日に発売された。長年にわたりテレビ業界の第一線を走り続けてきた中山が描く未来図とは――。

57歳でも止まらぬ成長…書道でカンヌ進出、ライブ活動にも意欲
持ち前のコミュニケーション能力で芸能界きっての“愛されキャラ”の地位を確立してきたタレントの中山秀征(57)が今年で芸能生活40周年を迎えた。そんな中山の処世術を分かりやすく“分解”したビジネス書『気くばりのススメ』(すばる舎)が5月26日に発売された。長年にわたりテレビ業界の第一線を走り続けてきた中山が描く未来図とは――。(取材・文=中村彰洋)
1985年に渡辺プロダクション(現:ワタナベエンターテインメント)からデビューして今年で40周年。節目のタイミングで刊行した『気くばりのススメ』には、中山の最大の武器でもある「気くばり」のノウハウが詰め込まれている。
同著の中で中山は、「敵を作らない」ことを大切にし、「勝負をしなければ“不敗”」を信条に芸能界を「生き残って」きたと記している。
「それが僕のやり方、“不敗の考え方”なんです。戦いを挑めば敵になるし、勝っても相手は敵のまま。勝てば勝つほど敵が増えていくだけです。その敵はずっと憎しみを持ち続けていますよね。だから戦わないことを選ぶんです。勝とうとしない、負けないようにする。ゆえに結果は全勝という考え方なんです。そういった考え方ができる自分で、これからもいたいなと思っています」
そんな勝負をしない生き方をしてきた中山だからこそ、芸能界の“天下”への野心は持ち合わせていない。しかし、この先に目指したいビジョンは描いている。
「『憧れの的』と『尊敬の的』という言い方をしているのですが、私は『憧れ』以上にすごいのは『尊敬』だと思っています。憧れには終わりがあるけれど、1度尊敬をすると、これはなかなか変わらない。だからこそ、尊敬されるとはどういうことなのかを追い求めていきたいです」
著書内では「40年間も芸能界で生き残れた」という表現を使っている。「勝ち抜く」でも「生き抜く」でもなく「生き残る」という言葉選びも中山らしさといえる。
年齢を重ねたことで、継続の重要さにも気付いたという。50歳の節目に「続ける」と決めたことが2つある。
「書道をもう1回やり直してみようと思いました。歌も昭和歌謡のライブを1年に1回必ずやる。この2つを50歳の時に『もうやめない』と決めました」
特に書道では、今年の「第78回カンヌ国際映画祭」で作品が飾られるという、想像もしていなかった快挙を成し遂げた。
「書道は高校生までやっていて、評価もいただいてはいたけれど、忙しくなってやらなくなってしまいました。自己流ではなく、しっかりと学び直して、『タレントがよく書けている』ではなく、プロが見ても認めてもらえるようになりたいなと。そこで、横浜国立大の青山浩之先生のもとで学ばせていただきました。
原点に戻ってどこまでいけるだろうかと、一般の部で書道展に出品してみたんです。そこでありがたいことに入選と佳作をいただいて、個展を開催することもできました。そしたら次は『カンヌで展示しませんか?』ですからね。
50歳からやってきたことが、今こうなっている。これは続けてきたからこそです。続けていれば、いつ、何が、どうなるかも分からないですからね。続けておくことの大切さを実感しました。
これからはもっとスケールを大きくしていきたいです。書道でいえば世界。ヨーロッパだけではなく、アメリカなどいろんなところでやっていきたいです。音楽でいうと、もっと全国でライブができるような規模にしていきたいです。まずはこれを60歳ぐらいまでの目標として続けていきたいです」

芸歴40年の現在、うれしい瞬間は「昔やってきたことが評価されること」
そういった経験は、人生の歩み方にも影響を与えている。
「それは長生きです。『何歳が自分のゴール』と決めている人もいると思いますが、僕はそういう考え方をしないようにしています。体が動いて、頭が回る以上は、まだその年代の自分を試してみたいと思っています。
本の中でも『己』という言葉で書かせてもらっていますが、『己』というのは人に作ってもらうもので、どういう出会いができたかによると思っています。いい出会いができれば『己』はもっと良くなるでしょうし、悪いところに居続けると『己』もどんどん悪くなっていく。
この芸能生活40年で僕の『己』もずいぶんと変わりました。ここから10年で『己』がどのように変わっていくのか。もっと違う未来になっているかもしれないですよね」
年齢を重ねていく中で、目にする景色も次第に変化していった。喜びを感じる瞬間も徐々に変わっていった。
「今、芸能活動を続けていてうれしいことは、昔やってきたことが評価されることです。例えば飯島直子ちゃん、松本明子ちゃんとやっていた『DAISUKI!』(日本テレビ)という番組です。
深夜番組としては大ヒットしたけれど、『ただ遊んでるだけ』『テレビを冒涜している』なんてコラムニストの方に言われたりもしましたね。でも、僕からしたら『バカ言うなよ!』なんです。『ただ遊んでいるわけではなくて、11時間遊んで、1時間の番組にしているんだよ』と(笑)。当時は『俺はただ遊んでない。死ぬ気で遊んでいるんだ』と思っていました。
でも、その“死ぬ気で遊んでいる”がテレビ越しに伝わらなくて良かったんだろうなとも思います。今になって『“DAISUKI!”みたいな番組を作るにはどうしたらいいですか?』と聞かれたりします。でも簡単には作れません。なぜなら、死ぬ気で遊んでないし、出演者が『帰りたい』と思っているからです。我々3人は、『帰りたくない』という一心で収録していましたからね(笑)。本当に運命的な出会いだったと思います。
今やっている『シューイチ』(日本テレビ系)も週1だった放送が『2回やってくれないか』ということで週2になりました。これもやってきたことへの評価ですよね。もちろん後々、評価されたいからやっているわけではないです。ピカソの絵になりたいわけではないですし、生きている間に評価されたいですからね(笑)。でも、やってきたことに間違いがなかった、その延長線上に今の自分がいるというのはうれしいことです」

中山はこれまでも自らの肩書を率先して「テレビタレント」と名乗り続けている。「今テレビが衰退している、つまらないだとか言われているからこそ、『テレビは捨てたもんじゃない』と見せるのは、自分がやるべきことだと思っています。僕はそういう気持ちでやってます」。
「ああ、やっぱりテレビはすごかった」――。テレビに育てられ、テレビで学んできた中山だからこそ、その感動を伝える使命感を背負いながら、今後も活動を続けていく。
