少年院を2度経験→難関国家資格取得、中卒RIZINファイター・平松翔の勉強場所が「土浦駅のベンチ」だったワケ
過去に2度、少年院に入っていた“中卒ファイター”平松翔(30=THE BLACKBELT JAPAN)。非行に走った時期はあったものの、その後心を入れ替え、高卒認定や電気工事士、危険物取扱者などの資格を取得。現在は設備会社の営業として働きながら、格闘技にも取り組んでいる。今回は、そんな平松が2020年に取得した難関国家資格・宅地建物取引士(宅建士)について話を聞いた。

格闘家兼会社員の多忙の中で取得
過去に2度、少年院に入っていた“中卒ファイター”平松翔(30=THE BLACKBELT JAPAN)。非行に走った時期はあったものの、その後心を入れ替え、高卒認定や電気工事士、危険物取扱者などの資格を取得。現在は設備会社の営業として働きながら、格闘技にも取り組んでいる。今回は、そんな平松が2020年に取得した難関国家資格・宅地建物取引士(宅建士)について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
合格率は毎年15~17%前後とされる宅建士試験。筆記は4肢択一式のマークシート方式で、民法や宅建業法、法令上の制限など出題範囲は多岐にわたる。年1回しかチャンスがないこの試験に、平松は格闘家・会社員として多忙な日々を送りながら、3回目の挑戦で合格を果たした。
「独学でしたね。学校に通うお金もなかったので。本屋に行って『どれがいいんやろう』って立ち読みして、図や絵が多くてカラフルなやつを選んで買いました。文字ばっかりの本は読めないんで。まずは教科書を一通りざっと読んで、それから問題集をひたすらやりました。格闘技もあるし仕事もあるし、なかなか大変でした」
試験の約3か月前から一気に詰め込みを開始。空き時間はすべて勉強にあてた。1時間程度のまとまった時間が取れたときには、茨城・土浦駅のベンチで勉強した。
「今は道場の近くを営業で回ってるんですけど、当時は茨城・東京が担当エリアで。仕事終わりに午後7時くらいに駅まで送ってもらって、その後は練習か家でゆっくりするか。でも家に帰ったらもう勉強できへんやろうって思って。だから駅のロータリー、街灯の下のベンチでずっと勉強してましたね」
平松の勉強法は「気合い」と断言する。
「時間がたっぷりある中で『今やろう』じゃなくて、『この時間にしかできへん』って感覚。その時間にやらなかったら、他に勉強する時間はないって思ってました」
手順はいたってシンプルだ。
「とりあえず参考書読んで問題集解いて、それから過去問も1回やる。その中で自分の苦手なところが分かる。得意なところ、毎回正解してるところはもうやらなくていい。同じことの繰り返しやし。間違えたところだけ、過去問じゃなくてまた参考書に戻って、ひたすら頭に叩き込む感じでした」
4肢択一式から正解を導くコツについては「言葉が違うだけで、基本的に言ってることは一緒」と語る。
「得意やったのは民法ですね。量が一番多かった気がするから、そこは徹底してやりました。少年院で高卒認定取ったときもそうやけど、『絶対に俺が一番取ったる!』って気合い入れてやってたから、独学でもいけたんやと思います」
道を踏み外した過去があるからこそ、意志の強さは人一倍だった。
「見返したいって気持ちは強かった。だから、まずは周りに宣言するんです。『俺、取るから』って。もし取られへんかったらバカにされる。でも逆に言えば、絶対取ったるっていう気持ちになれる。『見とけよ』って感じでやってました」
少年院に入っていたという過去は消せない。社会的に見ればネガティブな要素だが、それを見返すためにも多くの資格を取得した。履歴書に自身のキャリアを書き出したときに不安はないのだろうか。
「逆に、人よりおもろい経歴やと思ってます。大手企業やったら分からんけど、中小企業の社長さんとかやったら、話を聞いてくれると思うし。だから、今は全然コンプレックスとかないです」
「やるかやらへんか」――。取得してきた資格の数は積み上げてきた努力の証で、自信にもつながっている。平松の意志の強さは真面目に生きてきた人間にも響くものがあった。
