桑田佳祐、ライブ終演後も「また会う日まで」“無限のファンサービス” 年齢を感じさせないサザンのパワー、ファン涙【ライブレポート】
5万人が心躍らせた“お祭り”が終わると、ちょっぴり寂しい気持ちで胸がチクッとなった。ロックバンド・サザンオールスターズが、6年ぶりとなる全国ツアー『サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」』を展開し、今年1月から5月にかけて日本全国13都市26公演を、見事に完走した。ツアー総動員数は、最終日に全国の映画館で実施されたライブ・ビューイング(15万人)を合わせると約75万人。古希を迎えたメンバーを含めた5人の平均年齢は69歳ながら、すさまじいパワーで圧巻のパフォーマンスを見せた。千秋楽となった5月29日の東京ドーム公演では、3年後に迎える「サザン50周年」への道筋を、確かに見ることができた。

全国13都市26公演を完走 最後に「闘魂注入をしましょう」 「1、2、3、ダーッ!」で締めくくった
5万人が心躍らせた“お祭り”が終わると、ちょっぴり寂しい気持ちで胸がチクッとなった。ロックバンド・サザンオールスターズが、6年ぶりとなる全国ツアー『サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」』を展開し、今年1月から5月にかけて日本全国13都市26公演を、見事に完走した。ツアー総動員数は、最終日に全国の映画館で実施されたライブ・ビューイング(15万人)を合わせると約75万人。古希を迎えたメンバーを含めた5人の平均年齢は69歳ながら、すさまじいパワーで圧巻のパフォーマンスを見せた。千秋楽となった5月29日の東京ドーム公演では、3年後に迎える「サザン50周年」への道筋を、確かに見ることができた。(文=吉原知也)
全28曲、約2時間30分。笑いあり、涙あり、熱狂して、聴きほれて……。小学校高学年の時に当時発売された『マンピーのG★SPOT』(1995年)に感化され、サザンファン一筋で生きてきた筆者にとって、語り尽くせないほどだ。まずは注目の1曲目。桑田佳祐のため息から始まる『逢いたさ見たさ 病める My Mind』だった。82年のアルバム曲。サザンのライブの1曲目は、レアで意外性のあるサプライズが仕掛けられていることが多いのだが、まさにその通り。曲名が出てくるまで、数秒フリーズした。
最新オリジナル・アルバム『THANK YOU SO MUCH』を引っ提げてのツアー。常に新曲を出し続けて“今を生きる”、そんなサザンらしさがセットリストに如実に表れた。アルバム全14曲中、12曲を演奏。序盤の景気付けの一曲として早くも定着しそうな、松田弘のロックなドラムが心地いい『ジャンヌ・ダルクによろしく』を2曲目で繰り出し、ドーム会場は一気に興奮のるつぼに。桑田は国内ブランドPGMによる自身のオリジナルモデルのエレキで、真骨頂のスライドギターを響かせる。
サザンのライブはこれまで“つかみ”の3曲を演奏してMCというパターンが恒例だったが、近年は2曲で桑田が観客に話しかけるようになっている。「今回で終わっちゃう。うれしいような寂しいような」と複雑な心境を明かしながらも、「延長したいです!」とサービストークで客席を沸かせた。
3曲目は『せつない胸に風が吹いてた』。90年代初頭から時代をさかのぼって懐かしむように、名作バラードが続いていく。80年代の『愛する女性(ひと)とのすれ違い』『海』は、サポートギターの斎藤誠が、原曲に忠実なギターソロを弾いていたのが印象的だった。サザンデビュー2年目79年の知る人ぞ知る名曲『ラチエン通りのシスター』に感涙した古参ファンは多いだろう。
『愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~』で一区切り。振り返ると、“最後の夏フェス”として出演した昨年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」で、久しぶりに曲目に入った。こだわって再構築したアレンジにかなりの手応えがあったのだろう。今回のツアーでも、ブラス隊を交えた緻密なバンドの表現力が光った。

原 由子のボーカル曲はみんな笑顔 会場からは温かい拍手
さあ、ここからはニューアルバムからの選曲。『桜、ひらり』『神様からの贈り物』と極上のメロディーラインが続き、お待ちかねのキーボード・原 由子のボーカル曲だ。鎌倉・湘南をイメージしたさわやかなビジョン映像と共に、『風のタイムマシンにのって』を軽やかに歌う。桑田からは笑顔がこぼれ、パーカッション・野沢“毛ガニ”秀行はニコニコ顔。原の透き通った優しい歌声は、聴く者を本当に幸せにさせる。会場からは温かい拍手が送られた。
生ギターコーナーでは、これまた昔懐かしい曲を披露。デビューアルバム収録の『別れ話は最後に』には感激した。ボサノバ調の原曲だが、よりAORっぽく、大人な雰囲気で演奏。斎藤によるいぶし銀のギタープレイに、しびれた。桑田は、青山学院大時代からの仲であるベース・関口和之の名前を出して、「関口さんと出会った頃に作った曲です」と紹介した。実は、この曲と、78年のサザンデビュー前に作られた楽曲を“新曲”としてレコーディングした『悲しみはブギの彼方に』は、アマチュア時代からのレパートリー。この最新ツアーで、再び巡り会った奇跡に、心で泣いた。
アコースティック編成でボブ・ディランばりに歌う社会風刺ソング『ニッポンのヒール』も、ファンから驚きの声が漏れた。野沢がボンゴを連打するソロをさく裂させるなど、随所にメンバーの見せ場を作っていた。ちなみに、ギター好きとしては『ミツコとカンジ』『夢の宇宙旅行』で桑田が使用したエレキギターに注目。ピンク色のペイズリー柄のフェンダー・テレキャスターだ。以前に原が桑田に誕生日プレゼントとして贈ったギターとみられる1本で、ギター小僧として興奮しまくった。
ジャムセッション風のメンバー紹介や、桑田と関口によるちょっとずれたアドリブの掛け合いなど、おちゃらけで笑わせるMCやトークもサザンの魅力の一つだ。そう思っているうちに、アルバムのリード楽曲『夢の宇宙旅行』から、AIまでも駆使した『ごめんね母さん』を経て、終盤のあおりがスタート。『恋のブギウギナイト』では、ネオンライトのビジョンにダンサー陣が映える。『LOVE AFFAIR~秘密のデート~』からおなじみの定番ソングでたたみかける。炎、レーザービーム、効果音など、ド派手な演出をこれでもかと繰り出す。電子音のイントロから観客を熱狂させる『マチルダBABY』『ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)』はやはり、原のシンセ演奏がないと成立しない。原はサザンの要であることを改めて実感した。そして、本編ラストの『マンピーのG★SPOT』だ。戦隊ヒーローものを思わせる独特なコスチュームを着飾ったダンサーたち。サザンの風物詩となっている、桑田がかぶる下ネタ満載のカツラ、通称“マンヅラ”は、今回はあ然とした。とにもかくにも、サビの手拍子、今回も名物を体感することができた。感無量だ。
アンコールは、東京公演のみ演奏された『東京VICTORY』が象徴的となった。拳を突き上げ、みんなでコーラスを歌い上げる。演出用に配られたリストバンド型ライトも相まって、東京ドームが一つになった。締めはデビュー曲『勝手にシンドバッド』。野沢のサンバホイッスルが陽気に響き渡り、疲れを知らない松田のドラムは力強さを増し、サンバダンサーがどんどん盛り立てる。桑田の呼びかけで、ステージと客席みんなで「10回ジャンプ」。会場は最高潮のまま大団円を迎えた。
野沢は古希を迎え、桑田も69歳。それでも、サザンは年齢を感じさせない。この日は最初から桑田の声はエンジン全開で、もう22曲目なのに『マチルダBABY』でハイキックを連発。アンコール3曲目『希望の轍』では「もっとやりますか~!!」と前振りで絶叫し、盛り上がるポイントの「Baby love」のシャウトも完璧。パワフルそのものだった。そして、桑田が敬愛するプロレスラーの故・アントニオ猪木さんの「1、2、3、ダーッ!」。桑田は舞台袖に引き揚げる前に、「闘魂注入をしましょう」と呼びかけ、観客と一緒に締めくくった。

客席に手を振り続ける姿 「またいつかどこかでお会いする日を楽しみにしています」
MCでは、明るい未来をにおわせる、うれしい言葉が飛び出した。サザンは今年6月25日にデビュー47周年を迎える。「THE ALFEEより年下です。まだまだ上がいるからやめられません」と笑わせたかと思えば、「50周年、大きな目標はあることにはあるんですけど、皆さんに楽しんでいただけるように、サザンオールスターズ、頑張っていきます」と、みんなが心待ちにしている特別な節目について言及した。
終演後、時間の許す限り、メンバー5人は客席に手を振り続けた。桑田は「またいつかどこかでお会いする日を楽しみにしています」とファンに語りかけた。名残惜しそうに一人残って、「また会う日まで、バイバイ!」とジャンプしたり、投げキッスを送ったり。桑田の無限のファンサービスは、サザンが国民的人気を集めるゆえんだろう。
客席を見渡して、特に印象的だったのが、若い世代を多く見かけたことだ。SNSを見ると「初めて参加」といった書き込みが目立った。世代を超えて受け継がれ、新規ファンを獲得し続けるサザン人気をひしひしと感じた。毎回のライブで、サザンから元気をもらえた。こちらからも「THANK YOU SO MUCH」の思いを伝えたい。そして、これからも、サザンと一緒に人生を歩み続けていきたい。
セットリスト
1. 逢いたさ見たさ 病める My Mind
2. ジャンヌ・ダルクによろしく
3. せつない胸に風が吹いてた
4. 愛する女性(ひと)とのすれ違い
5. 海
6. ラチエン通りのシスター
7. 神の島遥か国
8. 愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~
9. 桜、ひらり
10. 神様からの贈り物
11. 史上最恐のモンスター
12. 暮れゆく街のふたり
13. 風のタイムマシンにのって
14. 別れ話は最後に
15. ニッポンのヒール
16. 悲しみはブギの彼方に
17. ミツコとカンジ
18. 夢の宇宙旅行
19. ごめんね母さん
20. 恋のブギウギナイト
21. LOVE AFFAIR~秘密のデート~
22. マチルダBABY
23. ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)
24. マンピーのG★SPOT
ENCORE
1. Relay~杜の詩
2. 東京VICTORY
3. 希望の轍
4. 勝手にシンドバッド
