性的ネット広告、規制はできない? オンライン署名10万筆提出…「表現の自由」との兼ね合いは
ネット上で無差別に表示される性的広告について、ゾーニング(すみ分け)を求める10万筆超のオンライン署名が4日、子ども家庭庁に提出された。3児の母という署名発信者の30代女性は、記者会見で「社会問題であるという国としての認識を示してほしい」と訴えた。

今年3月には「オレンジページ」で性的広告が表示されたことが話題となり、編集部が謝罪
ネット上で無差別に表示される性的広告について、ゾーニング(すみ分け)を求める10万筆超のオンライン署名が4日、子ども家庭庁に提出された。3児の母という署名発信者の30代女性は、記者会見で「社会問題であるという国としての認識を示してほしい」と訴えた。
国内では以前から、年齢制限のないウェブサイトに突如として性的な広告が表示され、未成年を含む多くの人が意図せずそれらを目にするという状態が続いている。性的広告が表示される媒体はゲーム攻略サイトや料理レシピサイト、ニュースサイトや各種スマートフォンアプリなど多岐にわたっており、意図的に避けるのが難しい状況となっている。
今年3月には料理レシピなどの生活情報を伝える「オレンジページ」や「クラシル」で性的な広告が表示されたことが話題となり、編集部が謝罪。また、4日朝には「コミックシーモア」「めちゃコミック」「Renta!」などの電子コミック大手11社が加盟する「日本電子書店連合」が、性的表現が描かれたコミック広告について全年齢向けサイトへの配信を停止したことが報じられた。
今回、10万2526筆のオンライン署名を提出した「性的なネット広告のゾーニングを目指す会」代表の香川きょう(仮名)さんは、10歳、5歳、2歳の子を育てる3児の母。子どもが当たり前にネット環境に触れる時代に、露骨な性的表現に暴露されることに危機感を覚え、昨年9月から署名活動を開始した。
「今は小学生から1人1台タブレットを使用するギガスクール構想もあり、子どもがタブレットやパソコンなどに当たり前に触れる時代。子どもがゲームをする年齢になり、攻略法やキャラクターを調べる際、子どもでも見られるようなページに露骨に性的な広告が表示されていることに驚きました。女性の胸や臀部を過度に強調させているもの、性行為の描写や、未成年と思われるキャラクターへの性暴力を描いたものまでありました」。当初は1人で活動していたものの、徐々に賛同者が集い、現在同会には男性1人、女性9人の計10人が在籍。年齢や子の有無、既婚・未婚など、属性もさまざまだという。
あらためて、性的広告の問題点について「青少年の健全な育成だけでなく、成人であっても意図せず見せられる精神的苦痛、ハラスメントの要素もあります。嫌なら避ければいいとも言われますが、避けるために知りたい情報を得られず、知る権利の侵害という考え方もできる。性に関して誤った知識や認識、価値観を持たせてしまうきっかけにもなります。性的な表現それ自体が女性差別だとは考えていませんが、女性が性暴力を受けている描写が問題とされていないかのような現状は、無意識下のジェンダーバイアスや女性差別を助長する懸念があると考えています」と香川さん。
一方で、表現の自由の観点からも、アダルトサイトにおける性的広告や、性的な単語を検索した場合に表示されるリスティング(検索連動型)広告については問題にしていないとし、性的広告が掲載されていることを利用者が事前に知ることができる事前警告の表示や、サイト・アプリと広告の対象年齢を一致させるレーティング審査の仕組みなど、あくまでもゾーニングの必要性を訴える。
「当会が国へ求めることは法規制ではありません。性的広告が社会問題であるという、国としての認識を示してほしい。国が強制力を持って動くことは表現規制、表現の自由の侵害にもつながります。ただ現状は問題であると示すことで、前向きな議論が進み、自主規制の動きが広まってほしいと考えています」
望まない人が性的表現にさらされず、表現の自由も侵害されることのない、新たな枠組みが求められている。
