羽田美智子、“父”伊東四朗がルーツの喜劇舞台に初出演「怖いけど…一皮むけた境地へ行きたい」
俳優の羽田美智子が、6月2日から東京・新橋演舞場で上演の「東京喜劇 熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第11弾 『黄昏のリストランテ ~復讐はラストオーダーのあとで~』」に出演する。「熱海五郎一座」は、喜劇役者・三宅裕司が座長を務める演劇ユニット。今年で11回目を迎えるシリーズにゲスト出演する羽田が、出演の意気込みや舞台の醍醐味を語った。

6月2日から上演の「熱海五郎一座」シリーズ第11弾に出演
俳優の羽田美智子が、6月2日から東京・新橋演舞場で上演の「東京喜劇 熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第11弾 『黄昏のリストランテ ~復讐はラストオーダーのあとで~』」に出演する。「熱海五郎一座」は、喜劇役者・三宅裕司が座長を務める演劇ユニット。今年で11回目を迎えるシリーズにゲスト出演する羽田が、出演の意気込みや舞台の醍醐味を語った。(取材・文=コティマム)
「熱海五郎一座」は、2004年に伊東四朗と三宅を中心にラサール石井、小宮孝泰、小倉久寛、東貴博、春風亭昇太らで「伊東四朗一座」を結成したことにルーツを持つ。伊東が06年の公演に参加できなかったため、三宅が座長となり、「熱海五郎一座」として活動したことに始まる。ユニット名は「伊東」を神奈川県の伊東市にみたて、東京から見て伊東よりも手前にある「熱海」と、「四」の次にあたる「五」を取り入れ、“伊東四朗”の名前を“熱海五郎”に変化させた。一座旗揚げからは21年目、21作目を迎える。
以降、毎年新作を上演し続け、ついに14年に新橋演舞場進出を果たす。演舞場シリーズでの11回目公演に出演する羽田が演じるのは、リストランテでおいしい料理を作る美しいシェフ。実は悲しい過去や復讐(ふくしゅう)の思いを抱えている裏表のある役どころだ。自身は熱海五郎一座の作品を毎年のように観劇していたといい、出演が決定した時は「信じられない思いだった」と明かす。
「お話をいただいた時は、『え、私? 私ですか?』って。去年、熱海五郎一座に伊東四朗さんが出演されていて、私は客席から拝見していました。ものすごく感動して! 今でも『何て素晴らしい舞台だったんだろう』と、その感動がずっとあります。まさかそこに自分が立つなんて…。『え、いいの?』という思いと、声をかけてくださって光栄という気持ち。そして、『自分に務まるのかな?』という不安な気持ちと。『うれしいんだけど怖い』みたいな。そんな気持ちでいっぱいでした」
伊東とはテレビ朝日系ドラマ『おかしな刑事』で、03年から24年まで親子役で共演してきた。今回の出演決定は伊東に伝えたという。
「メッセージを送って、『自分に務まるのかすごく不安だし、怖いんです』と伝えました。そしたら、伊東さんは『僕は、みっちゃんが出るのをずっと待っていたよ。客席からエールを送るから頑張れ』と言ってくださって。伊東さんがそう言ってくださったから、『頑張ろう!』と思っています」
今作のテーマは「料理」と「悲しい過去」と「復讐」。美しくも裏の顔を持つシェフを演じる羽田は、台本を読んで「すごく面白かった」と語る。
「三宅さんの世界観もあると思いますが、『熱海五郎一座』のすごいところは、時事ネタもあり、社会問題に言及しながらサラッと笑いにする。問題提起はしているけど深追いはしないところが、『演劇が持つ役目』を果たしている感じがして、毎年『すごいな』と感じています。今作のテーマも意外とリアルというか、ちゃんと問題提起しながらも、笑いに昇華させています」
作品の世界観については、「誰の心にもある“正義感”を描いている」と感じたという。
「正義感があるから復讐につながっていく。でも、『悪いものは悪い』。深いですよね。女性は正義感が強い人も多いし、間違っているものは『間違っている』と声を大にして言いやすい。こういう役を女性が演じることで、“女性の特権みたいなものも生かしながら復讐が始まっていくところ”が面白いです」

舞台は“生もの”「同じ風にはできないのが生の面白さ」
長い芸能生活の中で、ドラマや映画など豊富な経験がある羽田。しかし、舞台ついては「感じ方が違う」という。
「私は舞台にあんまり慣れてないので、過去の経験でいうと、舞台は『お客さんの笑いを待つ場合』があるんですよね。客席の笑いが収まるまでセリフを言わないとか、その瞬間に生まれた“間”を摘みながらやらないといけない。映像は演出家の方が考えてくださるので、あんまりその“間”を感じなくやれますが、舞台はやっぱり『お客さんとの呼吸がある』というのを、数少ない経験の中で学びました」
また、「舞台は“生もの”だから、メンバーの体調がいい日や不調な日もある。同じように稽古をしてきても、出来、不出来が違う日がある」と難しさも表現した。しかし、「同じようなことを同じようにしようと思っていても、同じ風には出来ないのが舞台の生の面白さ。舞台はそういう醍醐味もあります」と魅力を語った。
これまで“ファン”として「熱海五郎一座」を観劇してきただけに、出演者へのリスペクトと出演できることへの感謝も口にした。
「メンバーの方たちのお顔を見ても、一人ひとり、芸達者な方たちばかり。よくこんな芸達者な方たちが集まったなって。その中でやらせてもらえることが、本当に俳優として、とても素敵な人生の1ページをいただいたと思っています」
そして、一座のファンに向けて「長年のファンの方たちが大勢いらっしゃるので、毎年、『今年はどんなのかしら』と楽しみに来られると思います。『今年は面白くなかった』って言われないように、一生懸命ついていこうと思います」と宣言。その上で「自分自身も、『あっ、何か一皮むけたな』という境地に行きたいです」と願いを込めた。
□羽田美智子 1968年9月24日、茨城県生まれ。88年にデビュー。94年に映画『RAMPO』のヒロイン役に抜てき。95年に同作で日本アカデミー賞新人俳優賞、エランドール賞新人賞を受賞。96年には『人でなしの恋』で優秀主演女優賞を受賞。テレビ朝日系『おかしな刑事』『警視庁捜査一課9係』『特捜9』シリーズ、東海テレビ『花嫁のれん』、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』など数々のドラマに出演。俳優業のほか、自身が「本当にイイ!」と思ったものだけを紹介・販売するネット上のセレクトショップ『羽田甚商店』の店主も務めている。
