玉城裕規、キャリア20年超で変幻自在に演じる“カメレオン俳優”に ミステリアスな雰囲気も実は気さく
俳優・玉城裕規の主演映画『NOT BEER』(中川寛崇監督)が5月30日より東京・シネマート新宿で2週間限定上映される。2013年の舞台作品の映画化で、玉城は強面と思わせて間の抜けた詐欺師を演じる。舞台「刀剣乱舞」シリーズの小烏丸役など舞台や映像など数々の作品で注目され、個性が光った玉城。高校時代に俳優養成所の門を叩き、20年を超えた今、コミカルもシリアスもできる“カメレオン俳優”の道を歩んでいる。

間の抜けた詐欺師を表情豊かに
俳優・玉城裕規の主演映画『NOT BEER』(中川寛崇監督)が5月30日より東京・シネマート新宿で2週間限定上映される。2013年の舞台作品の映画化で、玉城は強面と思わせて間の抜けた詐欺師を演じる。舞台「刀剣乱舞」シリーズの小烏丸役など舞台や映像など数々の作品で注目され、個性が光った玉城。高校時代に俳優養成所の門を叩き、20年を超えた今、コミカルもシリアスもできる“カメレオン俳優”の道を歩んでいる。
「よく“悪魔顔”とか“魔界顔”なんて言われます(笑)。でも多彩に役をいただいてきたので、俳優としてのイメージはあまり固定されていないようですね。バラエティー豊かにやらせてもらってきました」
猫のような瞳とハスキーな声……中性的でどこかミステリアスな雰囲気を漂わせるが、話しぶりは気さくで、そのギャップも魅力的な玉城が、新境地に挑む。
今作は、2013年に劇団オレガユナイテッドによって上演された「Not beer but low-molt beer」の映画化で、認知症だった女性の通夜にたまたま集まった4人が、女性の財産をめぐり嘘やだまし合いを繰り広げる物語。玉城は、女性の遺産を狙う詐欺師・鮫島優を演じる。
鮫島は、相棒の押切淳平(相馬理)とともに、金の買取業者を名乗って一人暮らしの瀧ハルエ(金子早苗)に近づく。ある日ハルエのもとを訪れると、そこではハルエの通夜が行われていた。鮫島と押切はハルエの遺産を手に入れようとするが、そこにハルエの孫と名乗る女性・二階堂早妃(永瀬未留)と弁護士・辻(伊藤慶徳)が現れ……という展開だ。
鮫島は詐欺師だが、人がよくてドジな言動ばかりするキャラ設定で、玉城のコミカルな芝居に注目される。
「舞台では悪に振り切った役もやってきましたが、なぜか映画では悪役だけど小物っぽいキャラクターをよくやります(笑)。中川監督からは『自由に振り切ってください』と言われたので、ちょっと大げさに演じました。相馬くんも普段から柔らかいオーラを出していたので、僕も引っ張られてコミカルになれました」
ハルエを騙そうとしたり、通夜での予想外の展開に右往左往するなど豊かな表情は見どころで、「ドタバタ感は、僕自身も楽しみながら作っていくことができました。鮫島の喜怒哀楽には、僕自身の素の反応もかなり入っています。僕と一緒に騒動に巻き込まれた気分で楽しんでください」とアピールした。
そんな玉城が俳優を志すきっかけとなったのは、中学3年の時に見たある映画だったという。「高校受験が終わって、息抜きで観た、窪塚洋介さんの主演映画『GO』に衝撃を受けました。それまで平凡に生きてきましたが、こんな風に自分以外の人生を生きられる俳優って、面白そうだなという衝動に突き動かされました」
その勢いで、高校に進学すると1年のときに俳優養成所のオーディションを受け合格。2年時には出身地の沖縄から上京して、役作りを学んでいった。
「当時お世話になっていた事務所が舞台に強かったので、沖縄では見たこともなかった舞台をどんどん経験しました。アンサンブル(役名がない登場人物)からのスタートだったので、役がついている先輩俳優に早く追いつきたくて、先輩たちの姿勢を見習っていくうちに、舞台も好きになりました」
その後、2004年1月期のテレビ東京系連続ドラマ『エコエコアザラク~眼~』で俳優デビュー。2.5次元舞台(2次元の漫画などを原作としたステージコンテンツ)が本格的に興隆してきた2000年代後半からは、玉城も『ライチ☆光クラブ』『弱虫ペダル』などの舞台化作品に出演し好印象を残していく。特に舞台『刀剣乱舞』で演じた刀剣男士・小烏丸は18年の初出演から継続して演じており、中性的な妖艶さで客席を魅了してきた。
「舞台では人間らしからぬ役も演じてきました。演技を認めてもらうことがあっても『まだまだ…』と当時は必死で、20代後半になってようやく、肯定的な評価を素直に受け止められるようになったと思います」

「絶対こんな風にはなりたくないという役」も経験
近年は、映像でも忘れられない経験をした作品に出会ったという。
「一昨年に出演したドラマ『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系、2023年1月期)で、国会議員のクズな息子・犬飼俊介を演じました。父親の威光で何でももみ消せる、人を人とも思わないような奴だったんです。例えば、悪役をやる時でも(キャラクターに)何かしら惹かれることもありますが、俊介は『絶対こんな風にはなりたくない』という奴で、自分の性格とは正反対でした」
犬飼俊介は、草彅剛扮する主人公の鷲津亨がかつて秘書として仕えた衆議院議員・犬飼孝介の長男で政務秘書官。親子で最後まで鷲津に立ちはだかる悪役で、現場では奮闘したようだ。
「自分と全く共通項がない人物を、視聴者に“演技しているわざとらしさ”を感じさせずに見てもらうことに集中しました。ちょっとでも嘘の要素を混ぜたくなかったので、現場にいない時でも、俊介としての立ち振る舞いや性格を意識していました。おかげで撮影が終わった時、緊張が一気に解けて、じんましんが出たほどです」
そうエピソードを明かし笑顔を見せる。役に対し常に真摯に向き合ってきた姿勢がうかがえた。これまでも、たとえワンシーンでも出演作品で記憶に残る演技を見せてきたが、現在掲げる課題を尋ねると、「役に対する“先入観”をなくしたいです」と打ち明けた。
「一旦役柄に苦手意識を持つと、無意識に後ろ向きになってチャレンジを避けてしまっていたと思います。そうではなくて、フラットな気分で臨んで、得られる経験を糧にしていきたいですね」と話した。
そして最後に、「次は映像で根っからの悪役もやってみたいですね。特殊メイクなしで、どんな怖いビジュアルでもできるかもしれませんね(笑)」と意欲を見せた。
これからも変幻自在に役を演じ、観客を惹き込んでいくー。
□玉城裕規(たまき・ゆうき)1985年12月17日生まれ、沖縄県出身。2004年1月期のテレビ東京系『エコエコアザラク~眼~』で俳優デビュー。その後も映画・舞台に出演。主な作品は、舞台「少年ハリウッド」伊達竜之介役、「弱虫ペダル」東堂尽八役、「ライチ☆光クラブ」ジャイボ役など。また舞台「刀剣乱舞」シリーズでは、2018年の「舞台 刀剣乱舞 悲伝 結いの目の不如帰」から小烏丸役を務める。近年は映画主演作に「浅草花やしき探偵物語 神の子は傷ついて」(2020年)、「さよならグッド・バイ」(2022年)などがある。
ヘアメイク:森本美智子
