「JAいらない」ネットに広がる不要論をコメ農家が一蹴 農家直売がスーパーよりも高くなる理由とは

コメの価格高騰が止まらない。農林水産省の発表によると、5月18日までの1週間に全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は5キロあたり4285円で、前の週から17円値上がりし、2週連続で過去最高を更新。昨年同時期の2倍以上の高値が続いている。高騰が国民生活を直撃する中、ネット上では「中抜きするJAこそ諸悪の根源」という臆測をもとにした、JA悪玉論や解体論が噴出している。JAとはどういった組織で、仮になくなるとどんな事態が起こるのだろうか。SNS上でJAの必要性を力説したある農家に話を聞いた。

国民生活を直撃しているコメの価格高騰(写真はイメージ)【写真:写真AC】
国民生活を直撃しているコメの価格高騰(写真はイメージ)【写真:写真AC】

全国の平均価格は5キロあたり4285円と過去最高を更新、昨年同時期の2倍以上の高値が続く

 コメの価格高騰が止まらない。農林水産省の発表によると、5月18日までの1週間に全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は5キロあたり4285円で、前の週から17円値上がりし、2週連続で過去最高を更新。昨年同時期の2倍以上の高値が続いている。高騰が国民生活を直撃する中、ネット上では「中抜きするJAこそ諸悪の根源」という臆測をもとにした、JA悪玉論や解体論が噴出している。JAとはどういった組織で、仮になくなるとどんな事態が起こるのだろうか。SNS上でJAの必要性を力説したある農家に話を聞いた。

 JA(全国農業協同組合)とは、農業従事者によって全国に組織された協同組合(農協)のこと。組合員の農家に対する技術指導や必要資材の共同購入、農産物の共同販売や直売所運営の他、資金の融資や共済に至るまで幅広い支援を行っている。農作物の生産をなりわいとし、流通や販売まで手が回らない農家にとってなくてはならない存在だが、流通の過程で農作物に中間手数料が上乗せされることから、昨今の価格高騰を背景に一部でその在り方が疑問視されている。

 そんな“JA不要論”に対し、「JA要らない。農家から直接買えば直接の利益になるし、安く買える。は妄想です」とSNS上に反論を投稿したのが、栃木県在住のあるコメ農家。投稿者は「ちょっとだけ想像してみてください。私は3ha(ヘクタール)の田んぼで米を作っています」と一般論を交えつつコメ作りの規模感を語っている。

 1ヘクタールは100メートル×100メートルの広さの土地で、スタンドまでを含めた甲子園球場の総面積3.85ヘクタールと比較すると、おおよその大きさがイメージできる。田んぼ3ヘクタールの稲刈りには、コンバイン1台で約10日ほどの日数がかかるとされる。

 投稿ではまず、3ヘクタールある自身の田んぼで年間に収穫できるコメの量が1万4400キロ、市場で販売される30キロのコメ袋に換算すると480袋にもなると説明。その上で「私のような小さな農家でもこの量になります。では私の10倍規模の農家なら簡単に計算しても凡そ10倍。4800袋のお米を在庫しなければなりません」「『玄米じゃなくて精米しろ』となれば精米設備も必要になりますし、米は生鮮食品なので保管するにしても『冷蔵設備完備』でないと鮮度は維持できません」と、JAを介さず直販するには多額の設備投資がかかる事情を解説している。

 さらに、仮に設備を整えたとしても、精米する時間、袋詰め、配送手配などさまざまな販売コストや人件費がかかるとし、「それ等も販売価格に上乗せしますので、結果スーパーで買うよりも高くなる事が解ると思います」と結論。JAがなくなることで、よりコメの価格が高くなる可能性をつづっている。

 投稿は1万件以上のリポスト、3.7万件の“いいね”を集めるなど話題に。「現場の声をありがとうございます JAはなくてはならない組織なんですね!」「これだけわかりやすく説明しても米農家とJA悪論で確定バイアスのかかっている人は全く理解できないだろうな」「いわゆるJA解体を掲げてる人たちは部外者が多いですよね」「JA解体したらどうせよくわからない企業や外資系とかが入り乱れて、今より荒れた状況になりそうです」といった声が寄せられている。

 投稿者は、今回の投稿の意図について、「農家から直接買えば安くなるという風潮について、個人的に『果たしてそうなのか?』と感じて投稿しました。実際には収穫から販売までに多数の過程が存在し、それらの工程を経て販売に至ります。出荷し小売店の店頭に並ぶにはさまざまな業者さんがそれぞれの役割を分担している訳ですが、直販となればその負担を生産者自らが行わなければならない。安直に『生産者から直接買えば安く買える』というのは少し違うのかなと思ったので、ざっくりではありますが投稿させていただきました」と説明。

 一連の反響については、「本当に驚きました。当初は特に何も考えず、『こんな風になってるんだよ~』と知ってもらえたらありがたいなぁと思っていただけでしたが、ふたを開けたら多くの方からコメントを多数いただきました。もちろん賛否両論ありますし、それらを否定しようとも思いませんが、生産者の裏側を少しは知ってもらえたのかなとは思っています」と話している。

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