世界三大映画祭では初 ベルリン国際映画祭が俳優賞のジェンダー区別をなくす意味

賞の部門が減ることで、女優陣の俳優賞受賞はいっそう狭きものに?

 これは、あらゆる差別根絶に取り組む映画界の意思表明となる。テディ賞の設立後、ベネチア国際映画祭が07年にクィア獅子賞を、カンヌ国際映画祭が10年にクィア・パルムを新設したという歴史を見ると、世界の映画祭が俳優賞における性の区別をやめるという動きが出てくる可能性も大きい。

 一方、新たな問題も出てきそうだ。映画の3分の2程度は男性を主人公にしたもので、女優が主人公の作品が少ないとの指摘だ。賞の部門が減ることで、女優陣の俳優賞受賞はいっそう狭きものになってしまうのではないか、というのだ。

 日本映画をみると、ベルリンにおける俳優の受賞は女優だけだ。1963年「にっぽん昆虫記」(今村昌平監督)の左幸子、1975年「サンダカン八番娼館」(熊井啓監督)の田中絹代、2010年「キャタピラー」(若松孝二監督)の寺島しのぶ、2014年「小さいおうち」(山田洋次監督)の黒木華。今後は世界の俳優も同じ賞を争うわけだから、確かに競争率は高くなるだろう。

 正直言うと、賞が減ってしまったこと自体には少々、残念な気持ちもある。映画賞は、受賞者にとっては大きな励みにもなり、映画と受賞者には世界から注目されるチャンスにもなる。その機会の一つが減ってしまったからだ。

 ただ、これがジェンダーへの配慮を世界的に高めることは確かで、審査員たちはよりいっそう賞選びに頭を悩ませることは間違いない。21年の俳優賞は、かなりの注目度となることだろう。選考の過程で、男女関係なく、優れた俳優を見いだすことがあれば、「スペシャルメンション」(受賞には至らないが、口頭で評価するもの)などで、その栄誉を称え、広く世界に知らしめてもらいたいものだ。

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