世界三大映画祭では初 ベルリン国際映画祭が俳優賞のジェンダー区別をなくす意味
ベルリン国際映画祭が、2021年2月の第71回大会から男優賞、女優賞というジェンダーのカテゴリーを廃止し、「最優秀主演賞」と「最優秀助演賞」を設けると発表した。ジェンダーの区別をなくした映画賞はいくつかあるが、世界三大映画祭では初めて。今後の世界の映画賞のありかたにも影響を与えそうだ。
特に人種差別問題には敏感だったベルリン国際映画祭、世界三大映画祭では初のケースに
ベルリン国際映画祭が、2021年2月の第71回大会から男優賞、女優賞というジェンダーのカテゴリーを廃止し、「最優秀主演賞」と「最優秀助演賞」を設けると発表した。ジェンダーの区別をなくした映画賞はいくつかあるが、世界三大映画祭では初めて。今後の世界の映画賞のありかたにも影響を与えそうだ。
カンヌ(1946年~)、ベネチア(1932年~)と並び称されるベルリン国際映画祭は1951年、映画史家のアルフレッド・バウアー氏がディレクターを務めて開催された。その歴史は三大映画祭では一番浅いが、来場者数は40万人以上と世界最大の規模を誇る。ナチス・ドイツの反省もあり、特に人種差別問題には敏感で、そうしたテーマの作品も数多く紹介してきている。
映画芸術に新たな視点をもたらした映画には、初期の映画祭貢献者の名前を冠にした「アルフレッド・バウアー賞」が贈られ、日本では「独立少年合唱団」(緒方明監督、2000年)が唯一受賞している。しかし、このバウアー氏をめぐっては、ナチス政権の映画政策の担当高官だった事実が明るみになり、20年には賞が中止。来年以降は廃止となる。
ベルリンでは人種問題同様に、性の問題にも早くから取り組んでいる。コンペティション部門には金熊賞、銀熊賞と、市のシンボルである熊をかたどった像が贈られるが、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア・クエスチョニングの略)をテーマにした優秀作に贈られる「テディ賞」もある。創設された1987年当初はドイツ人映画監督が立ち上げた「国際ゲイ&レズビアン映画祭協会」による賞だったが、92年から正賞に格上げされた。こうした取り組みをみると、ベルリン国際映画祭が性の区別の廃止に着手したのもうなずけるのではないか。