乃木坂46卒業から7年、俳優・生駒里奈の“心意気” 舞台は「一番安心してお芝居に没頭できる場所」
東京・EXシアター六本木で上演中のTOKIO・松岡昌宏の主演舞台『家政夫のミタゾノTHE STAGE レ・ミゼラ風呂』(村上大樹演出、6月8日まで)に、ギャルな新人家政婦役で出演しているのが、俳優の生駒里奈だ。2018年に乃木坂46を卒業後は、俳優として舞台や映像で精力的に活動。着実に実績を重ね、真摯に役と向き合ってきた。その姿勢は舞台で培ったという。

舞台版「家政夫のミタゾノ」ギャル役は「最初で最後」
東京・EXシアター六本木で上演中のTOKIO・松岡昌宏の主演舞台『家政夫のミタゾノTHE STAGE レ・ミゼラ風呂』(村上大樹演出、6月8日まで)に、ギャルな新人家政婦役で出演しているのが、俳優の生駒里奈だ。2018年に乃木坂46を卒業後は、俳優として舞台や映像で精力的に活動。着実に実績を重ね、真摯に役と向き合ってきた。その姿勢は舞台で培ったという。(取材・文=大宮高史)
本作は、2016年に松岡主演でスタートしたテレビ朝日系連続ドラマ『家政夫のミタゾノ』シリーズ(今年1月期まで7回レギュラードラマ化)の舞台化。今年ドラマ10年目を記念して、2022年の初の舞台版から3年ぶりに舞台第2弾として上演される。
今回は老舗旅館を舞台に騒動が展開され、生駒は、松岡演じる主人公の“家政夫”・三田園薫の相棒で新人家政婦・荻野千紗子役に扮する。
生駒にとって今作が『家政夫のミタゾノ』にドラマ版も含めてシリーズ初出演となり、「『不安はありますか?』とよく聞かれますが、全くありません。29歳と、それなりに大人になりましたので、緊張もしなくなりました。キャストの皆さんに引っ張ってもらいながら、気負い過ぎずに舞台を作っていきたいですね」と自然体で臨んでいる。
――荻野千紗子はギャルな新人家政婦というキャラクターですが、どんなイメージを抱いていますか。
「おそらく、私にとって最初で最後のギャルでいる時間かなと思います。ギャルってメイクやファッションなど、好きなものにすごいこだわりがある方たちだと思うんです。逆に私は服にもあまり執着がなく薄くて、もしかすると芸能界で一番服を持っていない人かもしれません(笑)。自分と正反対なところに、やりがいを感じます。私の中でギャルというと仲里依紗さんのイメージがあるので、仲さんのYouTubeも拝見して、参考にさせてもらっています」
――本作はコメディーの要素もありますが、“笑い”の芝居への抱負は。
「あえて面白いことをしようという姿勢で演じると、かえって引いてしまって笑ってもらえないと思いまです。あくまで千紗子のパーソナルな面を丁寧に引き出して、そこをお客様に観見ていただいて、笑ってもらえたらというのが理想です」
――ドラマの世界観そのままに、今作では歌やダンスのシーンもあるようですね。
「ダンスはともかく、乃木坂時代もソロ曲がなかったくらい、歌は不得手ですが(笑)、そこも楽しみにしてもらえたらと思います。歌に限らずですが、今作も学ぶことが多いと思うので、共演の皆さんが、音の一つひとつまでをどう客席へ発しているか、隅々まで研究したいと思います」

「稽古期間が一番楽しいかも」観客を満足させる独自のプロ意識
――生駒さんは2011年のグループ結成時から在籍した乃木坂46時代にも、舞台に出演してきました。生駒さんにとって舞台とは、どんな存在ですか?
「一番安心してお芝居に没頭できる場所です。アイドル時代は、練習時間があまりなかったり、自分が納得いかないパフォーマンスでも、それが完成品となる時がありました。でも舞台はじっくり稽古できる時間があり、初日までに自分が納得できるレベルまで仕上げることができる。そこが私の性格に合っていると思います」
当時、生駒は乃木坂46の活動と並行として俳優として外部の作品にも出演するようになっていた。グループではミュージックビデオ(MV)の撮影も当日に振付を覚えて本番へ、といったスケジュールがたびたびあり、「自分が失敗しても、時間もなくて別のカット(MVの編集)でフォローされたりするのが悔しかったです」とその当時の胸の内を吐露した。一方で、さまざまな作風の舞台を経験したことで芝居への興味が増していき、21歳になった2017年、新たなやりがいを覚える。「それまでにない手応えを得られました」という舞台に出会った。
「劇団少年社中・東映プロデュースの『モマの火星探検記』です。私はユーリという少女の役で、宇宙飛行士モマの矢崎広さんとダブル主演をさせていただきました。それまでもお芝居の機会はありましたが、私の中では『またできなかった』『向いていないのかも』と下を向くことが多くて……。でも『モマの火星探検記』の時は、周りの先輩方に必死でついていき、『自分だって、やればできるんだ』と自信につながりました」
ユーリは、宇宙に旅立って行方不明になった父にメッセージを送ろうとロケットを作るが、その際、劇中のセリフが、自身の胸にも響いた。
「ユーリは、幽霊のおじいちゃんから『やりたいと思ったことをやればいいんだ』と言葉をかけられます。そのセリフが私自身にも向けられたような気がして、自分が納得いくまでお芝居をつきつめたい、お芝居を続けてみようと思えた体験でした」
『モマの火星探検記』は2020年にも生駒・矢崎のコンビで再演、生駒はその後も多彩なに作品に出演していく。近年は「セリフ回しや滑舌に苦手意識があったので、改善したくって」と朗読劇にも挑んでいる。
「おかげで弱点も、少しずづつ褒めてもらえるようになりました。(乃木坂46を卒業して)俳優業にのめり込んで7年になりますが、ここ1~2年でようやく、俳優仲間と“同志”のような連帯感で作品に向かっていけるようになりました」
――確かに、稽古から千秋楽まで一つのカンパニーで過ごす一体感は、舞台ならではかもしれません。
「舞台は、初日が開いてから客席の反応を見て演技をアレンジしていく考え方もありますが、私は初日までに完成された状態に持っていきたいと思っています。どの日も同じようにお客さんに満足してもらいたいので、もしかすると少しでも上のパフォーマンスを追求していける稽古期間の方が、一番楽しい時間かもしれませんね」
――日々の公演に対する熱意を感じますが、どうやって気持ちを保っているのでしょうか。
「お金を払って観に来てくださるので、その期待に応える成果を出さないといけない、という気持ちは譲れません。俳優って、この責任感がないと務まらないと思います」
――プロフェッショナリズム、ですね。
「お芝居を愛して仕事としてきっちり結果を出すのって、難しさもありますが、同じ熱さを持った人たちと良質な作品をお見せしていく人生を送れたらステキですよね。今回も、ずっとテレビで見てきた松岡さんをはじめ、百戦錬磨の俳優さんばかりですので、全て吸収していくつもりです」
彼女の口から一貫して語られるのは、自分を高めてきてくれた演劇への強い向上心。その心意気があれば、人生初のギャル役も魅力的にやりきってくれるだろう。
『家政夫のミタゾノTHE STAGE レ・ミゼラ風呂』は全国6か所で上演予定。東京公演は東京・EXシアター六本木で5月16日~6月8日。大阪公演は森ノ宮ピロティホールで6月13日~17日。石川公演は七尾市文化ホールで6月21、22日。愛知公演は東海市芸術劇場大ホールで6月28、29日。広島公演は上野学園ホールで7月5、6日。宮城公演は名取市文化会館大ホールで7月12、13日。
□生駒里奈(いこま・りな)1995年12月29日生まれ、秋田県出身。2011年に乃木坂46のメンバーとしてデビュー。在籍中から舞台『すべての犬は天国へ行く』『じょしらく弐 ~時かけそば~』などに出演。18年にグループを卒業後は、映画『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』(2019年)『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』(ともに24年)や、テレ東ドラマ『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』(24年)などに出演した。今年6月13日公開の映画『死神遣いの事件帖 終』などにも出演する。
スタイリスト:津野真吾(impiger)
ヘアメイク:林美由紀
