愛車盗難に沈痛「何の役にも立たなかった」 茨城県警が明かす“本当に有効”なセキュリティー対策

大切な愛車を窃盗犯から守るためには何が有効なのか。ハンドルロックやGPS等さまざまなツールが挙げられるが、被害オーナーからは「何の役にも立たなかった」という失意の報告が相次いでいる。そこで、犯罪者の検挙に力を入れている茨城県警察本部を取材。盗難が“未遂”に終わったケースを分析し、ドライバーにとって効果の高い盗難防止策を検証した。

愛車が狙われている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
愛車が狙われている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

窃盗犯が盗難失敗に終わった事例を分析、本当に有効な手段とは

 大切な愛車を窃盗犯から守るためには何が有効なのか。ハンドルロックやGPS等さまざまなツールが挙げられるが、被害オーナーからは「何の役にも立たなかった」という失意の報告が相次いでいる。そこで、犯罪者の検挙に力を入れている茨城県警察本部を取材。盗難が“未遂”に終わったケースを分析し、ドライバーにとって効果の高い盗難防止策を検証した。(取材・文=水沼一夫)

 連日のように全国各地で報告されている自動車の盗難。狙われる車種はトヨタ系がダントツで、茨城県警がまとめた資料「茨城県の自動車盗被害の現状について」によると、昨年度の県内における「被害多発車」の台数では、ランドクルーザープラド、プリウス、ハイエース、アルファードが乗用車の上位を占めている。

 なぜ、トヨタばかり狙い撃ちされているのに盗難被害が止まらないのか。純正のセキュリティーやオーナー独自の盗難対策はあっても、それを窃盗犯がことごとく突破しているからにほかならない。海外でニーズの高い旧車にも同様のことが言え、新しい対策ができてもすぐに研究されてしまう“いたちごっこ”の様相を呈している。

 茨城県における自動車盗難被害の認知件数は、この5年間で821件から567件と急減している。一方、全国では、逆に4787件から6081件と激増しており、対策による成果が見て取れる。茨城県警は2016年に「茨城県ヤードにおける自動車の適正な取扱いの確保に関する条例」(ヤード条例)を定め、違法ヤードの摘発に力を入れてきた。自動車盗難に対する注意喚起をSNSを通じて積極的に発信しており、県民の間でも防犯意識が高まりを見せている。

 先の資料では、自動車盗難の「未遂件数・未遂率」にも触れている。昨年度の未遂率は13.6%だった。窃盗犯にターゲットにされると高い確率で被害に遭う現実がある反面、盗難を阻止しているケースも存在している。

 13.6%の車は、なぜ盗難を免れたのだろうか。

 未遂要因を見ると、「警報装置が鳴動したため」により未遂になったものが一番多く、続いて「隠しスイッチを付けていたため」となっている。そして、「ハンドルロックをしていたため」「人に見つかったため」「ヒューズを抜いていたため」「ハンドルを外していたため」の順となっている。警報装置、隠しスイッチが特に有効というわけだ。

 隠しスイッチとはどのようなことを指すのだろうか。

 生活安全総務課の担当者は次のように説明する。

「茨城県ではもともと貨物自動車の盗難対策として普及し始めたんですけども、今いろんなカーセキュリティーのメーカーからさまざまなタイプの隠しスイッチが販売されています。簡単に言いますと、通常のエンジンスタートの前に特殊な操作を行わなければエンジンがかからない。つまり、エンジンスタートの手順を2段階にするといった仕組みになります。その加えた操作を、犯人側が知ることは簡単ではないので、対策として非常に効果的なのかなと思っております。スマートキープラスどんな操作をするのかというと、各社メーカーによって違うんですけど」

 窃盗犯が車のドアを開けることができてもエンジンがかからず、持ち出すことができなくなる。

「何か新たにつけたボタンを押すとか、既存のセンサーをコンパネ内に入れ込んでそこを触りながらじゃないとエンジンがかからないとか、あとはブレーキとか、そういう規定の部品を規定回数押さないとかからないとか、いろんなタイプのものがあります」

 限られた時間の中でその仕組みを見破るのは容易ではなく、盗難を断念する要因になるという。

 ENCOUNTの過去の取材でも犯人が隠しスイッチを見つけられず、車を持ち去られなかったオーナーがいた。日常使いでは手間がかかるものの、メディアに対しても詳しい手順を明かさないなど、セキュリティーは徹底されていた。狙われやすい車に乗っているなら、ぜひ準備したいところだ。

タイヤロックは強固に(写真はイメージ)【写真:写真AC】
タイヤロックは強固に(写真はイメージ)【写真:写真AC】

茨城県警が提案 盗難対策を厳重にする方法「必ず枕言葉をつけています」

 また、同担当者は、「県警では、常日ごろ『複数対策をお願いします』と言っています」と主張。

「まず1つは、タイヤロックとハンドルロックですね。ただ、これ必ず枕言葉をつけていまして、『強固な』ハンドルロック、タイヤロックになります。なぜかと言いますと、せっかくハンドルロックをつけていたのに盗まれちゃいました、というケースも結構あります。その点を踏まえて、簡単に切られたりとかしないような強固な頑丈なのをつけてくださいとお願いしています。あとは、未遂要件であったように、独立型の警報装置。もともと標準装備の警報装置ではなくて、電源などが独立した警報装置ですね。振動検知型とかいろいろあるんですけど、そういう警報装置を新たにつけてもらう。あとは、追加のイモビライザーや隠しスイッチなどの電子制御システムをプラスワンで入れてもらう。できること、できないことはあると思うんですけど、可能な範囲で複数対策してもらうというのが、常に言っているところです」

 例えば警報装置にハンドルロック、隠しスイッチにタイヤロックなどの組み合わせがある。周囲を警戒する窃盗犯が焦れば焦るほど、愛車を持ち去られるリスクは低くなる。

 もちろん、GPSをつけてもいいという。ただ、これはあくまで“盗難後”に効果のある手段だ。

「GPSやエアタグで発見されるケースはいくつもあります。夜中に盗られれば次の日の朝には発見に至っているとかですね。持ち主がどこに車があるか分かりますので」

 車内で発見され、窃盗犯に捨てられてしまうこともあるが、車の行方を追えれば、警察の捜査を大きく後押しする。

 盗難された車は、追跡を逃れるため、すぐに目的地に運び込まれず、別の場所で放置される可能性が高い。万が一、盗難されても諦めないことが重要だ。

「駐車場や雑木林に置いていることがあります。ただ、明確に絶対どこだという特徴はなかなかないです。結局、犯人たちも追跡を分かっていて、1回寝かせるんですよね。本当に持ち込む場所の前に1回寝かせて、何日も大丈夫だったら運び入れる。なので、コインパーキングのケースもあれば、本当に何の変哲もない場所だったりもします」

 自宅に車庫があれば、防犯カメラやセンサーライト、車止めなども勧めている。

 物価上昇の中、やっと手に入れた車や愛着のある車を盗まれるのは、痛恨の極み。対策は今からでも遅くない。

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