SKE48で中心メンバーとして活躍した北川綾巴（26）が異色のセカンドキャリアを歩んでいる。現在は地元・愛知を拠点に活動するアイドルグループ・お願い!!フルハウスのプロデューサーとして活動。マイペースながらも着実に自分の道を切り拓いている。（取材・文＝中村彰洋）

　北川は、2012年にSKE48の第6期生オーディションに合格し、13年2月に正式加入。研究生ながらも選抜入り、研究生ユニット・てんとうむChu!のメンバーにも選ばれるなど、グループを担う存在への成長を期待されてきた。その後も、シングル表題曲でセンター、AKB48との兼任、チームSのリーダーなど数々の大役を任されてきた。

　そして、20歳の節目の1年となった19年9月に「やり切った」という思いでグループを卒業した。14歳から20歳までの多感な時期をすべてSKE48に捧げてきた。「とりあえず休もう」と先のことは考えず、充電期間に入ることを決めた。

「14歳からSKEだったので、アイドルではない“普通の生活”を知りませんでした。一歩外に踏み出した世界が楽しみという気持ちが大きかったです。6年半頑張ってきたので、ゆっくりしようと思って、本当に何もしていなかったんです。ご飯を食べて、寝て、散歩して、みたいな（笑）」

　しかし、14歳から刺激にあふれた日々を過ごしてきた北川にとって、“普通の生活”では物足りなかった。

「暇な時間が続くとムダな考えが働いちゃうんです。『SKEにいたあの時間は何だったんだろう』『一瞬にして全部なくなっちゃった』って……。改めてSKEの時は必要とされていたんだなと実感しました。『もう必要とされてないんだ』と急に自分が存在している意味が分からなくなって、『自分ってなんだろう』と落ち込んでしまう時期がありました」

「アイドルってすてきだったな」――。「アイドルに関わる何かをやりたい」という思いが芽生え始めたタイミングで、偶然にもアイドルプロデュースの話が舞い込んできた。「やるしかない！」という思いで、挑戦を決意した。

　21年にお願い!!フルハウスがデビュー。作詞を担当したり、衣装を決めたりとさまざまな面からグループを支えてきた。また、1年のみではあったが自身もステージに立ち、背中でメンバーを引っ張っていった。

「やりがいはとてもあります。実際にライブで、自分がプロデュースするアイドルを応援してくれている人たちの熱量を感じられる瞬間はすごくうれしいです。メンバーも慕ってくれて、相談などもしてくれたり、やっていて良かったなと思うことばかりです」

　一方で、自身が“主役”として活動することについては「まだちゃんと決められていない」と口にする。

「自分でもよく分からないんです。SKE時代から自分が芸能活動に向いているとは思っていません。自分から前に出ていくことが本当に苦手で、バラエティー番組の収録では『お願いだから当てないでくれ』と思っていたくらいです（笑）。それに、『絶対に情熱を注いでやりたい！』という気持ちがなければできない仕事だと思うので、今は自分が何をやりたいのかを考えている最中です」

　今後も当面は愛知を拠点に活動を続けていく。「上京は考えていないです。知立市のPR部長もさせてもらっていますし、愛知が好きなんです。それに東京はせかせかしていて、私にはついていけないです」と笑う。

　SKE48時代には、表題曲センターやチームリーダー、現在もアイドルプロデューサーと周囲を引っ張る存在を担っている。「よくやっているなと自分でも思います。でも、ただやっているだけなんです」と謙遜するが、人から慕われ、責任感が強い北川だからこそ任されてきたのだろう。

　今後は、まずは“我が子”たちが大きく羽ばたくための活動を続けていく。「“名古屋のアイドルといえば、お願い!!フルハウス”と言ってもらえるように、多くの人に知っていただきたいです」。

「のらりくらりと楽しく生きていけたらそれでいいのかな」。この先にどういう未来が待っているかは北川自身も想像できていない。アイドル時代と変わらぬマイペースさを貫きながら、自分らしく着実に前に進んでいる。

□北川綾巴（きたがわ・りょうは）1998年10月9日、愛知県出身。2013年にSKE48第6期生としてお披露目。表題曲センターやチームSのリーダーを担うなど中心メンバーとして活躍。19年9月にグループを卒業した。21年から愛知を拠点に活動を続けるアイドルグループ・お願い!!フルハウスをプロデュース。23年にはプレイングプロデューサーとして、再びステージに立った。地元・知立市のPR部長も務めている。25年5月24日には元SKE48の東李苑、惣田紗莉渚とともに合同ファンミーティング「うはさりおんin名古屋」を開催する。