松岡昌宏、仕事のモチベーションは「うまい酒を飲むために」 “ミタゾノ”10年、舞台第2弾への思い
TOKIO・松岡昌宏の主演で2016年にテレビ朝日系連続ドラマとしてスタートした『家政夫のミタゾノ』。深夜帯としては異例の高視聴率をマークし、ゴールデン帯に進出し、シリーズ化した人気作だ。開始10年目を記念し、2022年に続き、2度目の舞台化となる『家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂』が、5月16日から東京、大阪、石川、愛知、広島、宮城で上演される。同作で繰り広げられるミタゾノワールドとは。松岡自身が取材に対応し、解説した。

2度目の舞台化、16日から上演
TOKIO・松岡昌宏の主演で2016年にテレビ朝日系連続ドラマとしてスタートした『家政夫のミタゾノ』。深夜帯としては異例の高視聴率をマークし、ゴールデン帯に進出し、シリーズ化した人気作だ。開始10年目を記念し、2022年に続き、2度目の舞台化となる『家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂』が、5月16日から東京、大阪、石川、愛知、広島、宮城で上演される。同作で繰り広げられるミタゾノワールドとは。松岡自身が取材に対応し、解説した。(取材・文=Miki D’Angelo Yamashita)
『家政夫のミタゾノ』は、女装した大柄な家政夫、松岡が扮(ふん)する三田園薫が「派遣先の家庭事情をのぞき見し、そこに巣食う根深い汚れまでスッキリ落としていく」というヒューマンドラマ。22年、初めて舞台化された『家政夫のミタゾノ THE STAGE ~お寺座の怪人~』のチケットは即日完売。ドラマファンを裏切らない唯一無二のダークヒーローぶりがさく裂した。そして、2年半ぶりの舞台化。松岡が経緯を明かした。
「前回の千秋楽の時に『また、やりたいね』とどこの現場でもある社交辞令的なあいさつがあり(笑)、『せっかくだったら日本中で見てもらいたい。やるしかないか』ということで、第2弾が決まりました」
前回の上演は東京と大阪に限られていた。今回はドラマ終了から稽古開始までが1か月しかなく、松岡は「体力的にきついかもしれない」と不安を感じていたが、開催地が増えたことがうれしかったという。
「『今回は地方都市を回れるかも』とエサをぶらさげられまして、それに食いついた状態です(笑)。『この街にドリフが来るぞ』といった興味で見てもらえればと思います。最近、脚本ができたのですが、『今回はこう来たか、また、ふざけてるな』と期待を裏切られませんでした(笑)」
今回の物語は、ミタゾノ属する「むすび家政婦紹介所」一行が、創立10周年を記念した社員旅行で老舗温泉旅館のカモヤを訪れるが、ミタゾノがそこに巣食う“根深い汚れ”を発見。大掃除が始まる。松岡は、舞台のミタゾノについては「(あらためての)役作りはいらない」と断言した。
「(ドラマ)第1シーズンの時に作ったキャラクターを変えない。色付けもせず、淡々とこなしていく。そこが求められて、シリーズになるほど人気が出たのかな。そもそも僕は目標を持たないんです。仕事のモチベーションは人それぞれですが、僕の場合は『お疲れさま』の後にある『うまい酒を飲むため』につきます(笑)」
松岡の初舞台は24歳。劇団☆新感線の『スサノオ~神の剣の物語』だった。当時、有名になりたかった松岡にとって、歌手でもタレントでも役者でも、芸能人なら何でも良かった。ただ、舞台では観客の人数が限られる。「出るならテレビだ」と決めていたという。
「道を歩いていて知らない方に、『松岡くんじゃない?』と言われるようになったら舞台に出たいと目論んでいたのですが、ある日、巣鴨でロケをやっている最中、ついにおばちゃんたちに『松岡くん!』と呼ばれたんです。すぐに『舞台をやらせてください』と事務所に頼み込みました(笑)」
今回の作品には、ドラマでもおなじみの平田敦子、しゅはまはるみ、余貴美子の他、新キャストとして、生駒里奈、岡佑吏(AmBitious)、蘭乃はならが加わる。
「新しいカンパニーは12人、見ての通り、闇鍋みたいにてんでバラバラのキャラクターです。後輩の岡もいれば、乃木坂46のセンターだった生駒さん、宝塚OGの蘭乃さんもいる。これを一つの鍋で調理して果たして料理がうまくいくのか? その駆け引きをやっている状態です。それが終わってから塩・胡椒をしていきたい。味付けはこれからですね」
同じ作品でありながら、ベクトルが日々変わるのが今回の舞台。松岡は「『ドラマの方が良かった』という感想だけは避けたい」と言った。
「舞台版だけに登場する方々が全く違うことをやってくださるから新しいものが生まれる。束縛もなければ縛りもない。紹介所の4人は、どこにでもはまるように芝居ができる強者たち。新しいキャストの方々は好きなように芝居をやっていただければいいだけです」
ミタゾノの相棒となる新人家政婦は毎回代わるが、「舞台だろうが映像だろうが、ミタゾノは不変」が松岡のベースだ。
「(新人家政婦は)第7シーズンの『りんちゃん(久間田琳加)』で7人目。『受け』が代わることによって見え方が違ってくるんです。(映画『男はつらいよ』で)寅さんは代わらないけど、『マドンナはいつも代わる』みたいなことなんです」

コントの即興も多々「責任重大」
「普段は絶対にアドリブは入れない」という松岡だが、この舞台に関しては、その日のネタで「ここで一言」がある。通常の演劇とは少し異なり、ライブ的なコントの即興も多々ある。初めてそれを経験できたことに手応えを感じたという。
「明石家さんまさんや志村けんさんが、その日の空気で笑わせる。『ミタゾノはそこを求められている』と責任重大に感じています」
ミタゾノが10年間愛されている一番の魅力は、クセの強いものへの『拒否反応』だと、松岡は捉えている。
「例えばパクチーみたいな。最初は嫌なんだけど、食べ慣れるとずっとパクチーを食べちゃう。『何なのこれ?』というところから入って癖になる曲者。そこは当初からの狙いでもありました」
脚本は、『家政夫のミタゾノ』第7シーズンを担当する後藤賢人氏、演出は村上大樹氏が初演に引き続き務める。
「村上さんは、前回、『初めまして』だったんです。演出の方がいらっしゃらなかったら、演者だけの自己満足になってしまう。誰か客観視してくれる人が必要です。前回は『あれ、このミタゾノの方向って合っているのかな。ドラマファンの方が見たらがっかりしないかな』という箇所をラスト5日ぐらいの稽古で全部修正してくれました。『村上マジック』と僕は勝手に呼んでいます。ひょうひょうとしてるし、のほほんとしてるし、『大丈夫か。この人』と不安を抱きつつ、『さあ、始めましょう』となったら、ぐっと締めるんですよ。それが、驚くほど気持ち良かったんです」
その上で松岡は「ミタゾノは変わりません。他のみなさんは、お好きにどうぞ。でも、それがはまる。ミタゾノを『パクチー』にもっていくための村上マジックに期待してください」と呼びかけた。
<『家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂』公演情報>
5月16日(金)~6月8日(日) 東京・EXシアター六本木
6月13日(金)~17日(火) 大阪・森ノ宮ピロティホール
6月21日(土)、22日(日) 石川・七尾市文化ホール
6月28日(土)、29日(日) 愛知・東海市芸術劇場大ホール
7月5日(土)、6日(日) 広島・上野学園ホール
7月12日(土)、13日(日) 宮城・名取市文化会館大ホール
□松岡昌宏(まつおか・まさひろ) 1977年1月11日、北海道・札幌市生まれ。1994年、TOKIOのドラマーとして『LOVE YOU ONLY』でCDデビュー。俳優としては、日本テレビ系『サイコメトラーEIJI』、フジテレビ系『ナースのお仕事2』、フジテレビ系『新美味しんぼ』、TBS系『大恋愛』、テレビ朝日系『必殺仕事人』シリーズ、テレビ朝日系『家政夫のミタゾノ』などの連続ドラマに出演。血液型A。
ヘアメイク:赤塚修二、スタイリスト:井元文子、衣装クレジット:ON the CORNER
