演歌系で最も初紅白に近い歌手…27歳・辰巳ゆうとが“二刀流”の誓い ポップスも歌い続け「大谷さんのように振り幅大きく」
歌手の辰巳ゆうと(27)が8日、東京・浅草で演歌に特化したコンサート「力いっぱい演歌です!! 辰巳ゆうと in浅草公会堂~だけ、だけ、だけ、だけ、演歌だけ !~」を行った。最新ヒット曲『運命の夏』など、最近はポップス系の曲が多いが、デビューは演歌。路上ライブで悟った「歌は目で歌う」を実践し、ジャンルを超えた作品を歌っている。ドジャースの大谷翔平のように、歌の「二刀流」で飛躍を目指す。

演歌に特化したコンサート開催
歌手の辰巳ゆうと(27)が8日、東京・浅草で演歌に特化したコンサート「力いっぱい演歌です!! 辰巳ゆうと in浅草公会堂~だけ、だけ、だけ、だけ、演歌だけ !~」を行った。最新ヒット曲『運命の夏』など、最近はポップス系の曲が多いが、デビューは演歌。路上ライブで悟った「歌は目で歌う」を実践し、ジャンルを超えた作品を歌っている。ドジャースの大谷翔平のように、歌の「二刀流」で飛躍を目指す。(取材・文=笹森文彦)
辰巳は「演歌界の王子様」の異名を取る人気歌手だけに、チケットはすぐにソールドアウト。女性を中心に満員の約1100人の熱心なファンが訪れた。
『下町純情』『おとこの純情』『望郷』『雪月花』などのヒット曲だけでなく、『柔』(美空ひばり)、『別れの一本杉』(春日八郎)、『望郷じょんから』(細川たかし)、『おもいで酒』(小林幸子)など演歌の名曲17曲を披露した。
長編歌謡浪曲『元禄名槍譜 俵星玄蕃』(三波春夫)では、ステージ中央に設置された障子のセットから、はかま姿で登場。約9分の熱唱で聴かせた。最近の辰巳は『運命の夏』や、昨年の日本レコード大賞編曲賞を受賞した『迷宮のマリア』(編曲・萩田光雄)などポップス系の曲が多いが、「演歌を聴いて育ち、演歌でデビューしましたので、心の中には演歌歌手という思いがあります」と言う。
辰巳は大阪生まれ。祖父の影響で演歌を聴いて育った。中学1年の時に出場した「ティーンズカラオケ大会」で優勝し、現在所属する大手芸能事務所の長良グループにスカウトされた。高校生になってから本格的なレッスンを始めた。
大学進学と同時に上京したが、すぐにデビューしたわけではない。路上ライブでの修行を勧められた。ゆずは横浜松坂屋前で、いきものがかりは神奈川の本厚木駅や海老名駅周辺でストリートライブを行い、メジャーになった。辰巳はかつて「渋谷とか新宿とか人通りの多い大きい駅前ではなく、(指示されたのは)赤羽、錦糸町、大塚、巣鴨……。最初はどうしてここでと思いました」と振り返った。
まだ立場は大学生。マネジャーなどおらず、週2回をノルマに歌う場所の確保やマイクの準備などをすべて一人で行い、1日10曲程度歌った。始めたころは散々。酔客にからまれたり、「俺に歌わせろ!」と強引にマイクを取られたりもした。だが、徐々に観客は増え、差し入れをしてくれる人もいた。そして、独自の歌唱法も確立した。
「最初はどこを見て歌ったらいいか、分からなかった。『もしかしたら、通り過ぎて行く皆さんの目を見て歌えば、止まってくれるんじゃないかな』と思ったんです。実践したら、本当にそれで聴いてくださる方がいらっしゃったんです。自分が目を見て歌うと、相手も真剣に聴いてくださる。人の目を見て話すことも意識しています」
この日も会場の隅から隅まで目を向けて歌っていた。
「歌うのは口ですけど、僕は目でも歌っています。どんなに口でうまく歌っても目が死んでいたら、伝わるものも伝わらない。目が真剣だったら、一生懸命歌っているんだなと伝わる。目は歌の大事なポイントだと思っています」
2018年のデビュー曲『下町純情』で、日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。演歌界の旗手となったが、ポップス系の曲も積極的に歌っている。「演歌を聴かない方にも演歌の魅力を知ってもらいたい。そしてその逆にも貢献したい」という強い思いがあるからだ。そして、この日は17曲の演歌の名曲と、アンコールで『迷宮のマリア』『運命の夏』も歌い、満員のファンを楽しませた。
最大の目標はNHK紅白歌合戦初出場。辰巳は演歌系では最もその扉に近い存在だ。
「紅白はもちろんですが、ゆくゆくはミュージカルに出演したいです。常に新しい辰巳ゆうとを見ていただきたい」
多忙なスケジュールの中、3月19日に東京ドームで開催されたMLB日本開幕戦のドジャース-カブス第2戦を生観戦。大谷翔平の第1号本塁打を目撃できた。大きな刺激を受け、辰巳は「僕も(歌の)二刀流で頑張りたい。大谷さんのような振り幅の大きい活動をしたいです」と言葉に力を込めた。
