実は原作ありのジブリ映画4選 結婚に異なる主人公…設定に大きな違い 「直木賞」受賞作も

日本のアニメーション映画をけん引してきたスタジオジブリ(以下、ジブリ)は、1984年公開の『風の谷のナウシカ』から始まり、2023年公開の『君たちはどう生きるか』まで数々の名作を世に輩出してきた。『崖の上のポニョ』や『千と千尋の神隠し』といったオリジナル作品はもちろん、原作をもとに制作された映画が数多くあるのも特徴のひとつ。そこで今回は、原作があるジブリ映画に注目してみよう。

『もののけ姫』【画像:(C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND】
『もののけ姫』【画像:(C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND】

映画で描かれなかった続きの話も?

 日本のアニメーション映画をけん引してきたスタジオジブリ(以下、ジブリ)は、1984年公開の『風の谷のナウシカ』から始まり、2023年公開の『君たちはどう生きるか』まで数々の名作を世に輩出してきた。『崖の上のポニョ』や『千と千尋の神隠し』といったオリジナル作品はもちろん、原作をもとに制作された映画が数多くあるのも特徴のひとつ。そこで今回は、原作があるジブリ映画に注目してみよう。

 最初に取り上げるのは88年に公開された『火垂るの墓』(脚本・監督:高畑勲)。日本と米国による太平洋戦争の中を生き抜く、清太と節子の兄妹を描いた物語で、同作から戦争の悲惨さを学んだ人も少なくないだろう。

 この原作は72年に新潮社から発売された『アメリカひじき・火垂るの墓』(著:野坂昭如)で、作者である野坂氏の神戸大空襲や戦時中の体験をもとに描かれた小説。また短編小説である『火垂るの墓』は、文学賞のひとつ「直木賞」も受賞している。

 野坂氏は以前アニメ映画化に際して受けたインタビューで、映画の原画を見たときの感想として「(インタビュー当時から)43年前のものがアリアリと浮かび上がってきた」「アニメ恐るべし」と応えていた。原作者である野坂氏も認めた日本を代表する戦争映画といっても過言ではないだろう。

 宮崎駿氏の原作をもとにした初作品といえば89年公開の『魔女の宅急便』(プロデューサー・脚本も宮崎氏)。同作は新米魔女のキキが黒猫のジジとともに旅に出て、自立するために「宅急便屋さん」として奮闘する様子を描いた作品だ。

 原作は85年に福音館書店から出版された同名タイトルの児童書で、著者は角野栄子氏。全6巻で構成された原作では映画に登場したトンボも描かれており、大人になったキキと結婚している。映画で描かれた物語よりも先の話が気になる人は、原作をチェックしてみてはいかがだろうか。

 続いて95年公開の『耳をすませば』も原作アリの作品として有名。実は宮崎氏は監督ではなく製作プロデューサー・脚本・絵コンテを担当し、監督には近藤喜文氏を抜てきしている。

 そして原作は柊あおい氏が著者である同名タイトルの少女漫画で、89年に『りぼん』(集英社)で連載されていた。原作の『耳をすませば』は当然ながら絵のタッチが大きく異なっており、作中の設定も映画と違う点がいくつもある。

 たとえば映画では主人公・月島雫の住まいは団地の一室だが、原作の場合は一軒家。『魔女の宅急便』と同様に映画との違いを楽しむため、原作漫画を読んでみるのもアリかもしれない。

 最後に注目するのは97年公開の『もののけ姫』。ジブリの公式サイトには「原作・脚本・監督 宮崎駿」との記述があるが、実は93年に映画『もののけ姫』の初期決定版として、90枚以上におよぶオールカラーのイメージボードで構成された宮崎氏による著書『もののけ姫』が出版されている。

 やはり映画と原作は大きく違い、映画の主要キャラであるアシタカとサンは登場しない。代わりに「ひたむきで一所懸命なもののけ」と「けなげで一途な三の姫」が登場し、もののけはジブリの代表的なキャラ「トトロ」を彷彿とさせる見た目だ。ジブリファンであれば、1度は読んでおきたい作品ではないだろうか。

 意外にも原作をもとにした作品が多いジブリ映画。原作を踏まえてから再び映画をチェックすれば、当初受けた印象とは違うものになるかもしれない。

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