17歳で高校中退「渋谷で生きていくと決めた」 ゆうちゃみを世に送り出した“ギャル校長”の生き様
小学生の頃から“渋谷のギャル”に憧れ、高校中退後はほぼ毎日渋谷に通い詰めた青春時代を送り、21歳で休刊していたギャル雑誌『egg』を復活。現在は、ティーンの夢を応援する学び舎を運営している。そんな「ギャルマインド」を貫き、一直線な人生を送る28歳の女性がいる。通信制のサポート校『渋谷女子インターナショナルスクール(シブジョ)』の校長を務める赤荻瞳さんだ。「ギャルは絶滅していなかったんですよ。永遠の存在です」。全力で今を駆け抜けている。

21歳の時にギャル雑誌『egg』を復活、現在はシブジョの校長、生徒たちとガールズトークも
小学生の頃から“渋谷のギャル”に憧れ、高校中退後はほぼ毎日渋谷に通い詰めた青春時代を送り、21歳で休刊していたギャル雑誌『egg』を復活。現在は、ティーンの夢を応援する学び舎を運営している。そんな「ギャルマインド」を貫き、一直線な人生を送る28歳の女性がいる。通信制のサポート校『渋谷女子インターナショナルスクール(シブジョ)』の校長を務める赤荻瞳さんだ。「ギャルは絶滅していなかったんですよ。永遠の存在です」。全力で今を駆け抜けている。(取材・文=吉原知也)
ぱっちりした目で、前を見据えてハキハキとしゃべる。ちょっぴり派手なファッションがギャルっぽい。それでいて物腰丁寧な姿勢から、“先生らしさ”をのぞかせた。
埼玉の田舎町で生まれた。元アパレル勤務の母を見て育ち、小学校の頃からギャルに憧れた。ギャル系の雑誌・漫画を読み漁り、ファッションにも興味津々。eggで“イケメンやカワイイ子がイベントを盛り上げる学校”と紹介されていた公立高校に入学した。「楽しく過ごしたのですが、学校生活では私の理想のギャルにはなれないなと。テストはいつも下から何番目で授業についていくのも大変になってきました」。高2年の秋の修学旅行を前に、中退することになった。
ここからが力強い。「渋谷で生きていくことを決めたんです」。17歳の決断だった。ギャルサーに出会い、サークル活動に熱中した。所属人数は最大10人前後で、夏冬の定例イベントと高校3年の3月に行う引退式と呼ばれる自主イベントがメインの行事。2週間に1回渋谷に集まるミーティングなどを通して、先輩後輩と親睦を深め、礼儀と人間関係を学んだ。最後のイベントでは実行委員長を務めた。
一体どんな生活を送っていたのか。「当時はほぼ毎日渋谷にいて、家よりも渋谷にいる時間が圧倒的に多かったです。埼玉の実家から通っていましたが、カラオケに行ったり、友人の家に泊まったり。再開発が行われる前の宮下公園で寝泊まりしたこともありました」というから驚きだ。両親は心配しながらも、温かく見守ってくれたという。
ギャルサーを“卒業後”は、渋谷109の雑貨店で働くなどしていたが、転機が訪れる。ギャルサーの先輩の紹介で、広告代理店に入社することになった。19歳の時だ。
若者向けの商品開発や、イベント運営・オーディション開催など多くの仕事を経験。勤めている会社がegg編集部とつながりを持っていたことから、電撃的なプランが持ち上がった。当時休刊していたeggを「ウェブで復活させたい」。この話を聞いた瞬間に「私にやらせてください」と立候補した。「とにかく楽しみとうれしさ、これしかなかったです。ギャルサー時代にパンフレット制作をやっていたのですが、『ちょっと難しくなる程度かな。文字数が多くなるのかな』。それぐらいしか思っていなく、とにかく勢いで手を挙げました」。編集長に就任し、2018年のウェブ版での復活、19年の雑誌としての復刊などに尽力した。
公式サイトの立ち上げ、モデルの採用、編集、並行してYouTubeでのギャル事情の毎日配信など、多方面の企画を推し進めた。人気タレントのゆうちゃみは、赤荻さんがモデルとして採用し、羽ばたいた1人だ。「私にとって神様のようなeggが復活して、本当にうれしかったです。現在のギャルのスタイルは多様でバラバラです。90年代と比べたら大人しくなっている印象があるかもしれませんが、egg復活にあたり、レジェンドのモデルの方々、当時メイクに携わっていた皆さんからも応援をいただきました。“ギャルは絶滅した”という風潮がありましたが、『そんなんじゃないよ』と、世の中に伝えることができたと思います」と熱く語る。
編集長として全力疾走で丸4年、25歳で区切りを付けた。「次の世代に託そうと思いました」。22年、編集長を卒業した。現在は後輩たちが半年に1回の発行を続けており、脈々とギャル文化を築き上げている。

全校生徒は新1年生を含めて70人「みんなの夢をサポートできれば」
止まってはいられない。そんな性格がすぐにうずいた。「渋谷に学校を立ち上げたいという話を聞いて、『じゃあやりたいです!』とこれも立候補したんです。私自身、自分の夢を追い続けて実現させてきました。今度は、夢見る若い子たちに、ギャルに限らず、みんなの夢をサポートできればと思ったんです」。こうして、“校長先生”の道を切り開いた。
2023年度に開校したシブジョ。提携する通信制高校のカリキュラムを通じて高校卒業資格を取得でき、「渋谷から世界に羽ばたく!」をテーマに、英会話、SNSや動画編集、ビジネス企画力といったスキルを学ぶ仕組みとなっている。生徒たちは渋谷駅近くの校舎に通い、メイクや英会話の専門家、インフルエンサーたちから実践的な授業を受ける。全校生徒は新1年生を含めて70人。好きなことを追求できる校風だ。
コミュニケーションを大事にする“赤荻校長”は、いつもノリよく接している。生徒たちとガールズトークに花を咲かせることも。「何か肩書きを持たせて卒業させてあげたいですし、何より楽しい3年間を送ってもらえるようスタッフ一同、努力と工夫を重ねています。生徒たちからはよく『話しやすい』と言ってもらいます。この間、『ポジティブ過ぎる校長でごめんね』と伝えたら、『校長はそのままでいいんですよ』と言われました(笑)。生徒たちの方が大人ですね(笑)。1番イケてる校長になりたいです!」。とびきりの笑顔を輝かせた。
