「朝倉海だってパントージャに負けた」 初黒星喫した22歳鶴屋怜の正直な胸の内「気持ち的には楽になった」
格闘家の鶴屋怜(22=THE BLACKBELT JAPAN)がプロMMAで初黒星を喫して1か月がたった。無敗が故に敗戦への恐れを持っていた鶴屋だったが、プロ人生初の負けはどんなものだったのか。現在の心境や今後について話を聞いた。

堀口恭司の参戦に「レジェンドなので尊敬があります」
格闘家の鶴屋怜(22=THE BLACKBELT JAPAN)がプロMMAで初黒星を喫して1か月がたった。無敗が故に敗戦への恐れを持っていた鶴屋だったが、プロ人生初の負けはどんなものだったのか。現在の心境や今後について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
「負けたらどうなっちゃうんだろう」――。勝てば勝つほど大きくなる周囲の期待。強気な発言で知られる鶴屋が不安だったのが無敗を崩されることだった。UFC2戦目となったプロ11戦目、ジョシュア・ヴァン(23=ミャンマー)との対戦で初黒星を喫した。
「想像よりかは何も変わっていない。負けちゃいけない、絶対に勝たないといけないって気持ちが強すぎてどこかで囚われてはいましたよね。それがなくなってから思いっきりやれるのかなって解放感が生まれました。負けるのは良くないんですけど、気持ち的には楽になったすね。10回勝って、負けちゃダメって気持ちが強すぎたので」
この一戦は自身にとって、過去一番注目を集めた試合だった。昨年末に元RIZIN王者・朝倉海がUFC参戦し、いきなりのタイトル戦挑戦が発表されると鶴屋はXで反応。ファイターらしいストレートな言動で反響を呼んだ。それだけに今回の敗戦に辛らつな意見が飛んでいたが本人は全く気にしていないようだった。
「確かに言ってくるやつはいました。別に朝倉海だってパントージャに負けたし、日本でも負けてたじゃないですか。別に俺は国内では負けていないし、ランカーに負けただけでここから挽回すればいいので何も思っていないです。ごちゃごちゃ言ってくるやつはどうせ格闘技を大して見てないやつなんだろうなって感じです」
“ビッグマウス”とも言われるが「僕は自分自身を出しているだけ。逆に強くても何も言わない選手もいる。みんな違うキャラがあっていいんじゃないかなと思います」とうなずいた。
敗戦から1か月で“史上最強のMade In JAPAN”の肩書きを持つ堀口恭司の復帰も発表された。朝倉海に続いての堀口の参戦に何を思ったのか。
「ATTで一緒に練習をしたこともあって、堀口さんが強いのは分かってる。同じフライ級に4人も日本人がいて渋滞している感じはありますけど、面白いんじゃないですかね。UFCのフライ級に4人もいるのが逆に面白い。日本も格闘技が盛り上がっていく、俺も負けてられないなって気持ちではあります」
「堀口選手がいない方がもちろん楽」と本音もこぼれた。
「UFCでタイトル戦を1回経験してるし、それ以外では負けてない。正直レジェンドなので尊敬があります。小さいんですけど、すごいそこに詰まってる。スピードも速いし、いままで練習してきてこんなに全体的にできる選手は初めてだなと。自分が米国に行ったときも気を遣って『飯行こう』って誘ってくれたことが何回かあって、すごくいい人でもある。(堀口の復帰は)やる気スイッチが入った瞬間でもありました」
UFCフライ級は鶴屋、平良達郎(同5位)、朝倉海(同15位)、堀口の4人に。当然王者になるまでに対戦する可能性もある。
「正直、日本人同士が組まれたことがないのでまだ考えられない。日本市場で売りたいなら日本人4人を生かしておいて誰が王者になるか見ていても面白いのかなと思ったり。日本人同士でつぶし合うのも面白いのかな? 朝倉海がもしランカーだったのであればやりたいですけど、そうじゃないならやる必要はないですよね。堀口さんの場合も自分の得意な部分で勝ちにいくだけです」
復帰が発表された堀口はUFCのある北米を拠点にしている。鶴屋もこの春から練習環境をUFC仕様により整えていくようだ。2か月の米国修行を予定している。
「ヘンリー・セフード(北京五輪レスリング金メダリスト、UFC二階級制覇王者)のところに自分から『練習に行こうと思っています』って話をしたら“ぜひ来てくれ。あなたが王者になるためだったらなんでもお手伝いするよ”って言ってくださって。それは行くしかないなと。打撃をもっとやった方がいいって意見もありますけど、レスリング出身で王者になった人にやり方を教わればもっと近道になると思います」
初黒星でやることが明確になった。「勝ち続けている選手が1敗すると『負けたんだ』ってなるかもしれないんですけど、チャンピオンまで無敗でいられるのってヌルマゴメドフとかジョン・ジョーンズっていう神の領域の選手。自分もそうなりたかったですけど、最後にチャンピオンになればいいかなって感じです」。次戦は夏ごろを希望している。「同じミスをして負けないように焦らずに全体的なMMAの完成度をあげたいです」と前を向いた。
