作曲家・武部聡志氏、審査員務めるミスタートロットジャパンに驚嘆「こんなにレベルの高いオーディションは初めて」
作曲家・編曲家の武部聡志氏が、一発勝負の歌謡ショー『ミスタートロット ジャパン』(水曜午後9時)の準決勝後にENCOUNTの取材に応じ、同オーディションや出場者への思いを語った。

初代Mr.TROTのデビュー曲は武部氏が担当「すでに何人かの作詞家を頭に描いている」
作曲家・編曲家の武部聡志氏が、一発勝負の歌謡ショー『ミスタートロット ジャパン』(水曜午後9時)の準決勝後にENCOUNTの取材に応じ、同オーディションや出場者への思いを語った(取材・文=コティマム)。
同番組は、韓国で社会現象を巻き起こした大人気歌謡オーディション番組の日本版で、映像配信サービス『Lemino(レミノ)』で配信中。番組MCをフットボールアワーの後藤輝基、レジェンドマスター(審査員)を細川たかしが務める。トロットとは、韓国で演歌や懐かしの歌謡曲にあたる音楽ジャンル。『ミスタートロット ジャパン』では、全世界から選ばれた男性ボーカリスト74人が初代Mr.TROT(ミスタートロット)の座をかけオーディションに挑む。
武部は予選、本選1次、準決勝、決勝と長きにわたって審査員を務めている。準決勝では10人が2人ずつ5組に分かれ、デュエット対決を行った。デュエット対決は、2人のうちどちらか1人のみ合格になるだけでなく、コンビとしてのデュエットも審査され、1位から5位まで5組の順位が決まる。1位になったコンビは2人とも合格となり、不合格になった出場者も決勝に進むことができる。しかし、最下位の5位となったコンビは2人とも不合格となる。
オーディション全体の印象について武部氏は、「最初の予選の時、『こんなにレベルが高いんだ』と思ってびっくりしたんですよ」と明かした。「みんな歌唱力もかなり優れていたし、表現力も素晴らしかった。こんなにレベルの高いオーディションは初めてと思ったぐらい。予選の時からみんな素晴らしかった」と称賛し、「だから審査員として、落とすのがしのびないというか……。『何か形にしてあげたいな』と思う人ばかりでした」と、審査員としての苦しい胸の内も語った。
本選に入ってからは、ジャッジが厳しくなった面も。「歌える人たちが集まったからこそ、こちらもだんだんと難しいところを求めるようになった」という。「今は“人の歌”を歌っているわけで、それがただのカラオケやモノマネみたいにならずに、その曲を自分のものにしているかどうか。その曲の歌詞の意味をちゃんと理解して伝えようとしているか。自分の表現みたいな、そういうことがすごく大事だと思うんですね。その点をジャッジに加えました」と語った。
予選では、自身がバックバンドを務めた久保田早紀の『異邦人』を歌った出場者も。また準決勝では、武部氏とスガシカオ、小倉博和、根岸孝旨、屋敷豪太で結成したスペシャルユニット・kokua(コクア)の『Progress』を、牛島隆太と藤井大翔がデュエットした。武部氏は「率直に、楽曲を選んでくれてうれしいなと思う部分はあります。ただ、オリジナルアーティストを上回ることってなかなかできないじゃないですか。だから、上回ろうとするのではなくて、オリジナルアーティストとは違う解釈や、違ったアプローチをしてくれた方が、僕らとしてはうれしい」と語った。
『Progress』のパフォーマンスについては、「音程など含めて上手に歌っているけれど、やっぱりあの曲はすごく難しい歌で。力を入れて歌いすぎると逆に切実さがなくなるというか。だからちょっと力を抜いてあのメッセージを言うことで、より響く。力が入りすぎている印象はありましたね」と分析。「歌は本当に難しい。言葉のメッセージを伝えるために、ただ全力で歌い上げたり、シャウトしたりする。でも、力任せに歌うことが正解ではないというか。シンプルに歌ったり、ささやくように歌ったり、そういう歌い方のテクニックによって歌詞の伝わり方はだいぶ変わると思います」とアドバイスした。
初代Mr.TROTのデビュー曲は、武部氏がプロデュースする。現時点での構想について、「『トロット』というジャンルでメジャーデビューして楽曲をリリースするわけですから、やっぱり“スタンダードになりうる楽曲”や、“普遍的な曲”、ポップスとしての魅力はまず最低限キープしたいなと思います」と説明。「その上で、ボーカリストの声質にあったメロディーや言葉、曲のテーマを考えます。すでに何人かの作詞家を頭に描いていて、例えば『この人が優勝したら、多分こういう作詞家の方が合うんだろうな』というのは考えています。優勝する人で変わると思います」と明かした。
プロを目指す出場者にメッセージを求められると、「歌は、独りよがりになったらダメ。自分で『俺、イケてるじゃん』と自己陶酔するような心は、やっぱりダメだと思うんです」と語り、「あくまでも歌というのは“人に伝えるもの”なので。相手にその曲の世界、歌詞の世界、それから自分のメッセージを伝えるということをすごく大事にして、大切に歌ってほしいです」と呼びかけた。
