AAA與真司郎、“自由”を守るためには「お金の自由も必要」 20代前半から資産運用「ちゃんと準備してきた」
フォトエッセー『人生、そんなもん』(講談社)を刊行した音楽グループ・AAAの與真司郎。2023年7月には自身がゲイであることを公表した。ファンの前でのカミングアウトは、人生を変える大きな決断だった。だが、実はその後にも大きな“解放”が待っていた。次に選んだのは、米・ロサンゼルスの自宅を手放し、世界を旅する生き方だった。その背景にあるのは、「もっと自由に、自分らしく生きたい」という切実な思いだったという。

フォトエッセー『人生、そんなもん』を刊行
フォトエッセー『人生、そんなもん』(講談社)を刊行した音楽グループ・AAAの與真司郎。2023年7月には自身がゲイであることを公表した。ファンの前でのカミングアウトは、人生を変える大きな決断だった。だが、実はその後にも大きな“解放”が待っていた。次に選んだのは、米・ロサンゼルスの自宅を手放し、世界を旅する生き方だった。その背景にあるのは、「もっと自由に、自分らしく生きたい」という切実な思いだったという。(取材・文=平辻哲也)
與はロンドン、ニューヨーク、バンコク、フィレンツェ、シドニー……と、国境を超えて世界をめぐってきたという。ロサンゼルスではプール付きの豪邸を手に入れ、テレビ番組で自宅を公開。その後も、海の近くに引っ越した。だが、その家はもうない。
「LAに家があると、自然とそこに戻ってしまう自分がいた。カミングアウトしたのに、どこかまだ前に進めていないような感覚に陥っていたんです。だったら一度、すべてを手放してみようと決めました」
世界を巡る中で出会ったのは、人、文化、そして何より「自分の感覚」だった。
「いろんな国に行って、いろんな生き方に触れるうちに、『もっと自由でいいんだ』『もっと自分のままでいいんだ』って、自然に思えるようになりました」
最近で印象に残っているのは、イタリア・フィレンツェの街並みだという。芸術と歴史の重なり合うその街で、ただ歩いているだけで「心が整うような感覚」になったと振り返る。
「価値観がガラッと変わった」というその生活は、単なる放浪ではない。與にとって旅とは、自分を縛っていた常識や思い込みから解放される、再生のプロセスでもあるのだろう。
「誰かと出会い、語り合い、本音を交わせる瞬間が好きなんです。そういう出会いを重ねることで、どこにいても『ただいま』って言える場所が世界中にできた。それが、何よりの財産です」
與が旅で最も大切にしているのは、「出会いと感覚」。言葉にできない直感を信じることで、自分の心が向かう先に素直に身を委ねられるようになった。
「今は“どこに住むか”じゃなくて、“誰と会うか”“どんな空気の中にいたいか”が大事。そう考えるようになってから、生きるのがすごくラクになったんです」
“自由”に生きるためには、“経済的な基盤”も欠かせない。與は20代前半から資産運用に取り組んできた。
「芸能界って先が見えないから。自分の自由を守るためには、お金の自由も必要。無駄遣いせず、ちゃんと準備してきました。心にも体にも、お金にも、ちゃんと投資する。今はそれを大切にしています」

さまざまな“愛”を実感「今はそれだけで、すごく満たされてる」
そんな與にとって、恋愛とは今どんな存在なのか。
「今は誰とも付き合っていないし、デートもしていません。良い人がいればいいですけどね(笑)」
そう笑う彼の言葉は、どこまでもあっけらかんとしていて、そして深い。
「恋をしたい気持ちはもちろんある。でも、いまの人生が本当に楽しくて。無理に誰かを求めなくても、もう愛はたくさんあるんだなって、旅の中で気づいたんです」
それは家族や、友人、スタッフ、そしてファンとのつながりからもたらされる“愛”だ。與はこう続ける。
「恋人だけが愛じゃない。いろんな愛のかたちがあることを、ようやく実感できるようになりました。今はそれだけで、すごく満たされてるんです」
自分を隠していたころと比べ、心の自由度は確実に変わった。
「ゲイの仲間が増えました。写真も堂々と撮れるし、隠す必要もない。いま、自分がこうして自由に生きることで、誰かが『あきらめなくてよかった』と思ってくれたら、それだけで意味があると思えるんです」
23年7月、與がカミングアウトしたとき、「あなたはひとりじゃない」と語った。その思いは、世界を巡る今も変わっていない。
「LGBTQ+の人たちが感じる孤独って、ほんとうにしんどい。でも、それを少しでも減らせるようにしたい」
旅の中で何を見て、何を感じてきたのか。與は最後に、人生における大切なヒントをこう残してくれた。
「人生って、そんなもん。うまくいかないこともあるし、思い通りにいかない日もある。でも、だからこそ目の前の景色がいとおしくなる。大事なのは“どう見られるか”じゃなくて、“どう感じるか”」。旅が教えてくれたのは、自分の感覚を信じること。與は今後も、自らの体験を世界に発信し続ける。
□與真司郎(あたえ・しんじろう)1988年11月26日生まれ。京都府出身。14歳でエイベックスに入り、2005年9月14日にAAA(トリプル・エー)のメンバーとしてシングル『BLOOD on FIRE』でデビュー。16年6月には初のソロ作品をリリース。21年3月からアパレルのみならず、雑貨、アクセサリー等、自身のライフスタイルを広く表現していくブランド『446 – DOUBLE FOUR SIX -』(ダブルフォーシックス)の立ち上げを発表し、ブランドプロデューサーとしても活躍。現在は日本と海外を行き来しながら活動中。
