AAA與真司郎、ゲイ公表の裏側と決断 後押しした年上男性の言葉「お前は世界を変えられる」

アーティストの與真司郎が、半生を振り返るフォトエッセー『人生、そんなもん』(講談社)を16日に発売した。音楽グループ・AAAのメンバー、現在はソロアーティスト、ブランドプロデューサーとしても活躍する與。今回のエッセーには、華やかなキャリアの裏で抱えてきた葛藤や変化、そしてそこから見出した希望が、言葉と写真でていねいにつづられている。

インタビューに応じた與真司郎【写真:増田美咲】
インタビューに応じた與真司郎【写真:増田美咲】

フォトエッセー『人生、そんなもん』を発売

 アーティストの與真司郎が、半生を振り返るフォトエッセー『人生、そんなもん』(講談社)を16日に発売した。音楽グループ・AAAのメンバー、現在はソロアーティスト、ブランドプロデューサーとしても活躍する與。今回のエッセーには、華やかなキャリアの裏で抱えてきた葛藤や変化、そしてそこから見出した希望が、言葉と写真でていねいにつづられている。(取材・文=平辻哲也)

 タイトルの『人生、そんなもん』は、一見すると投げやりにも感じられるが、與にとってはむしろ前向きな言葉だという。

「人生って、思い通りにいかないことの方が多いですよね。だから『そんなもんだよね』と自分に言い聞かせて、また前に進む。期待しすぎず、今をちゃんと楽しむ。それが、僕の生き方なんです」

 そう語る彼の言葉には、長年のトライアンドエラーを乗り越えてきた実感がにじむ。

 2023年7月、與はファンの前で、自らがゲイであることを公表した。大きな決断であり、人生の分岐点だった。

「すごく怖かったです。『なぜ自分がここまでさらけ出さなきゃいけないんだろう』って、何度も思いました。でも、誰かが声をあげなければ社会は変わらないし、悩んでいる誰かに届けば、それでいいと思ったんです」

 小学生の頃から、周囲と違う感覚を持っていると感じていた。

「中学生になると、男の子たちが女の子の話をする中で、僕はまったく興味を持てなくて。『自分はおかしいんじゃないか』と不安になり、当時は“病気”だと思い込んでしまっていたんです。当時のメディアではLGBTQ+という言葉すら知られていませんでしたし、むしろ偏見や揶揄(やゆ)の対象になっていたので、自分を否定して生きるしかなかった。それが正直なところです」

2016年頃からロサンゼルスに拠点を構える與【写真:増田美咲】
2016年頃からロサンゼルスに拠点を構える與【写真:増田美咲】

LA時代に付き合った2人の元恋人「書くかどうかはすごく迷いました」

 それでも、彼は自分自身と向き合い続けた。2016年頃からロサンゼルスに拠点を構え、そしてようやく“本当の自分”を認めたとき、心が少しずつ軽くなっていった。カミングアウト後、周囲の反応はさまざまだった。応援の声に支えられる一方で、心ない言葉も届いたという。それでも、與のそばには変わらず信頼できる人たちがいた。

「やってよかったって、心から思えました。僕は一人じゃなかった」

 フォトエッセーではロサンゼルス時代に付き合った2人の元恋人にも触れている。

「正直、書くかどうかはすごく迷いました。でも、『僕だって恋愛する。芸能人だからって、なぜ隠さなきゃいけないの?』と思っていて。もう隠すことには疲れたんです」

 エッセーでは仮名にしているが、最初の恋人は年上で、いろんなことを教えてくれる人だった。

「愛されること、愛することがどういうことなのかを、彼との関係で初めて学んだような気がします。僕がまだ自信がなかったころ、『お前は世界を変えられる。将来、カミングアウトして人を助けてくれ』と言ってくれた。最初は『そんなの無理だよ』って思ってたけど、彼がそう言ってくれたことで、自分の中に変化が生まれていったんです。彼がいなかったら、たぶん僕はまだカミングアウトできていなかったと思います。それくらい大きな存在でしたし、その3年間の恋愛は、僕の人生にとってすごく大きな意味を持ってます」

 このフォトエッセーで最も伝えたいメッセージは、「あなたはひとりじゃない」ということ。LGBTQ+に限らず、誰にも言えない悩みを抱える人たちに向けて、與はそっとこう語りかける。

「『人生そんなもんだよ』って、ちょっと笑えるような、肩の力が抜けるような言葉になれたらうれしいです」

“本当の自分”をさらけ出すことは、たしかに怖い。でもその先には、予想以上にあたたかく、やさしい世界が待っているのかもしれない。與真司郎の言葉には、静かでしなやかな強さと、誰かの心に寄り添おうとするまなざしがある。

□與真司郎(あたえ・しんじろう)1988年11月26日生まれ。京都府出身。14歳でエイベックスに入り、2005年9月14日にAAA(トリプル・エー)のメンバーとしてシングル『BLOOD on FIRE』でデビュー。16年6月には初のソロ作品をリリース。21年3月からアパレルのみならず、雑貨、アクセサリー等、自身のライフスタイルを広く表現していくブランド『446 – DOUBLE FOUR SIX -』(ダブルフォーシックス)の立ち上げを発表し、ブランドプロデューサーとしても活躍。現在は日本と海外を行き来しながら活動中。

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