プレッシャーと戦い続けた1年「泣きながら電話」 『御上先生』で存在感放った20歳・吉柳咲良の成長

俳優の吉柳咲良が20歳の節目の1年を全力で駆け抜けた。話題ドラマへの出演、初のWキャストミュージカル、さらには憧れの歌手デビューも果たすなど、まさに激動の日々だった。「勝負の年」と位置づけて臨んだこの1年にどのような手応えを感じているのだろうか。

インタビューに応じた吉柳咲良【写真:藤岡雅樹】
インタビューに応じた吉柳咲良【写真:藤岡雅樹】

『リンス・リピート』で難役に挑戦「この1年の経験がすごく生かせる」

 俳優の吉柳咲良が20歳の節目の1年を全力で駆け抜けた。話題ドラマへの出演、初のWキャストミュージカル、さらには憧れの歌手デビューも果たすなど、まさに激動の日々だった。「勝負の年」と位置づけて臨んだこの1年にどのような手応えを感じているのだろうか。(取材・文=中村彰洋)

「とにかく壁にたくさんぶち当たっては、乗り越え続けた1年だったので、燃え尽きそうな勢いです」。充実の1年を振り返り、明るく笑いながら胸の内を明かした。

 4月22日に21歳を迎える吉柳にとって、20歳の1年はまさに濃密な期間となった。NHK連続テレビ小説『ブギウギ』にはじまり、NHK大河『光る君へ』、TBS系『御上先生』など話題ドラマへの出演のほか、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』でのヒロイン役、映画『白雪姫』での吹き替え、さらには歌手デビューと多岐にわたった活躍を見せた。

 20歳になる直前に周囲からも「今年1年が勝負の年になる」と言われ続けていたが、文字通りまさに自分と戦い続けた1年だった。

「この1年はだいぶしんどかったなと思います(笑)。いろんなことを経験させていただき、成長するためにはすごく重要な1年になりましたが、その分苦しかったです。嫌でも先に進んでいかなければならず、逃げ場がないような気持ちで、毎日プレッシャーと戦っていました。『もう無理だ!』と投げ出したくなってしまうときもありましたが、『そのつらさも含めて人生だな!』と考えることで踏ん張れました」

 中でも印象に残っている現場が、1月期の日曜劇場『御上先生』だ。同作で生理の貧困に悩む女子高生・椎葉春乃を演じ、その迫真の演技が反響を呼んだ。「たくさんの方々に見ていただけていたんだと実感しました」と喜びながらも、「現場ではベストは出したつもりでしたが、オンエアを見て『もっとうまくできたんじゃないかな』と悔しさもありました」と満足はしていない。

 高校が舞台ということもあり、同級生役の同世代のキャスト陣からもたくさんの刺激を受けた。

「親友役で共演した高石あかり(※高の正式表記ははしごだか)さんは、最近の同世代の女優さんの中で一番の“お芝居モンスター”だと思っていました。初共演で一緒にお芝居することができて、たくさんの学びがありました。奥平大兼さんは“大兼先生”と呼ぶくらい尊敬しています。演技力が本当にとんでもなくて、カメラに映った時の繊細すぎる表情の変化には引き込まれました。影山優佳さんには、精神面で支えてもらいました。“かげねえ”と話していると自分の考えを整理することができて、すぐに答えが見つかるんです。本当に一つ一つの出会いが糧になりました」

20歳の1年は「成長するためにはすごく重要」だったと振り返る【写真:藤岡雅樹】
20歳の1年は「成長するためにはすごく重要」だったと振り返る【写真:藤岡雅樹】

大きな経験となった『ロミオ&ジュリエット』出演「稽古場までの道中で泣きながら」

 また、2024年5月に上演した乃木坂46の奥田いろはとWキャストを務めたミュージカル『ロミオ&ジュリエット』も吉柳の中で大きな経験となっている。

「私の低い声だと『吉柳咲良がジュリエット?』と思う人もいるかなと思っていました。だからこそ、私は期待以上のもので返さなきゃいけないと、プレッシャーを感じていました。ダブルキャストのいろはは初舞台でヒロインを任されて、私とは違うプレッシャーを感じていたと思います。私が1年目の時に支えてくれた人がいて、今回は『私がいろはを支える役目なんだ』と自分に責任も課していました。いろはの内から湧き出てくるピュアさを目の当たりにして、『私にはそれは出せない』と絶望感と劣等感を感じたこともありましたし、いろはが悩みながらも成長していく姿に焦りも感じていました。

 自分を追い詰めすぎてしまい、のどに結節ができて、声が枯れて歌えなくなってしまったこともありました。『何年もミュージカルをやってきたのに下手だって思われたらどうしよう』と不安で、稽古場までの道中で泣きながらマネジャーさんに電話したこともありました。

 でも、途中から『ピュアさを出すことができないなら作ればいいんだ』と割り切るようにしたんです。いろはの稽古映像や歴代の皆さんのジュリエットの映像を見漁って、『絶対にここから盗んでやる』と吹っ切れてからはあっという間でしたね」

 自問自答を続けながら、乗り越えていった日々。「苦しかったですが、皆さんに届けることができたのでオールOKです!」と明るい笑顔を浮かべる。

 12歳の時に『ピーター・パン』でデビューしてから9年。「使命感をずっと抱き続けています」とこれまでの歩みを振り返る。

「『もう辞めたい』と思うこともありましたが、周囲の環境に本当に救われました。ウェンディ役の神田沙也加さんにはたくさん支えていただきました。沙也加さんと出会ってなかったらこの世界を辞めていたかもしれません。私があの時支えてもらったように、私も誰かを支えたいと思えましたし、だからこそ『ロミジュリ』も頑張れたんだろうなと思います」

舞台『リンス・リピート』では摂食障害の難役に挑む【写真:藤岡雅樹】
舞台『リンス・リピート』では摂食障害の難役に挑む【写真:藤岡雅樹】

話題作への出演続く「期待されていることはうれしいです」

 20歳ながらも、「長い人生、最終的に満足して最後を迎えられるかが大事だと思っています」と笑いながらも達観した考えを口にする。

「私の最終的な目標は“見返りを求めずに愛を与えられる優しい人間になること”です。役者という職業は、いろんな人や役、価値観に触れることができます。それによって役者としても人間としても成長できている気がしています。そういう意味でも、今この場所が私には合っているんだなと思っています」

 次なる挑戦は吉柳にとって初となるストレートプレイの舞台。4月17日から東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで上演される『リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―』で摂食障害を患う難役に挑む。「この1年の経験がすごく生かせると思います」と自信ものぞかせる。

 話題作への出演が続くのは、期待がそれだけ大きい証だ。「周囲からのプレッシャーはすごい感じます」と苦笑いしながらも、「期待されていることはうれしいですし、愛を感じます」と力に変えている。

「まだまだこれからいろんなことを経験していくと思います。でも絶望だけはしないように頑張っていきたいです」

 しっかりと自分の考えを言葉につむぎながら、今後の成長を誓った吉柳。彼女が歩むその道の先にはどのような景色が広がっているのだろうか。

□吉柳咲良(きりゅう・さくら)2004年4月22日、栃木県出身。16年に「第41回ホリプロタレントスカウトキャラバン PURE GIRL 2016」でグランプリを受賞。17年にミュージカル『ピーター・パン』の10代目ピーター・パン役に抜てきされ、22年まで同役を務めた。24年にはNHK連続テレビ小説『ブギウギ』、TBS系『御上先生』に出演。ソロ歌手としての活動もスタートさせた。

次のページへ (2/2) 【写真】吉柳咲良の別ショット
1 2
あなたの“気になる”を教えてください