元宝塚女優・遼河はるひが経験した退団後の苦悩 2年間は仕事なし…スポーツセンターでエアロビの日々

俳優・遼河はるひが、今月19日からディズニー公式動画配信サービス・ディズニープラスで独占配信中の韓国ドラマ『ハイパーナイフ 闇の天才外科医』の第3話にゲスト出演している。韓ドラには初出演。文字通りの新境地だが、彼女はいまだに「宝塚時代の夢」を見るという。遼河へのインタビュー「後編」では、男役スターとして輝いた宝塚歌劇団での思い出、退団後の苦悩、プライベートなどに迫った。

宝塚時代と退団後の生活を語った遼河はるひ【写真:増田美咲】
宝塚時代と退団後の生活を語った遼河はるひ【写真:増田美咲】

遼河はるひ、今でも夢に出る宝塚「セリフを覚えてないのに」

 俳優・遼河はるひが、今月19日からディズニー公式動画配信サービス・ディズニープラスで独占配信中の韓国ドラマ『ハイパーナイフ 闇の天才外科医』の第3話にゲスト出演している。韓ドラには初出演。文字通りの新境地だが、彼女はいまだに「宝塚時代の夢」を見るという。遼河へのインタビュー「後編」では、男役スターとして輝いた宝塚歌劇団での思い出、退団後の苦悩、プライベートなどに迫った。(取材・文=Miki D’Angelo Yamashita)

 遼河は、子どものころからミュージカルが好きだった。初めて見たのは『ピーターパン』。その後は劇団四季の作品をよく見ていた。そして、杜けあき、一路真輝が演じた『華麗なるギャツビー』を中日劇場で見て感激し、宝塚音楽学校への受験を決めたという。

 コンプレックスだった背の高さが強みになる。バレエを始め、高校2年で受験するも不合格。1年後の1994年、「人生であんなに頑張れたことはない」と思えるぐらいの努力で、史上最高倍率の48.25倍を突破した。そして、2年後の96年に宝塚歌劇団へ入団。在団中の思い出に残ってる舞台も『グレートギャツビー』だという。『華麗なるギャツビー』の再演で、2008年9月に一路と同じ役を演じることができたのだ。「それで思い残すことはない。今だなと思った」と退団を決意。翌09年12月に歌劇団を離れ、15年以上がたつが、宝塚時代のことが夢に出てくるという。

「見る夢といえば、宝塚ばかりなんですよね。衣装を忘れるとか、歌詞やセリフを覚えてないのに舞台に出されるとか(笑)」

 思い出深い役は『WEST SIDE STORY』のジェット団の一員。入団2年目でオーディションを受けたところ、ダンスナンバーがたくさんあるジェット団の一員に選ばれた。

「背が高くて目立ったのか、どの場面でも前のポジションで踊ることになりました。ダンスはそれほど得意ではなかったので、ついていくのに必死でした。ひざで滑ったり、回ったりする振り付けが多かったのですが、『自分の体を守るよりもうまく見えたい』という気持ちで、がむしゃらに体当たりしていました。なので、故障が多かったですが、それでも歴史あるミュージカルナンバーを踊れたことは、今でも思い出に残っています」

 宝塚には、入団7年目までの新人が本公演と同じ作品を1回だけ上演する『新人公演』がある。遼河はその主演にも選ばれた。作品は、プッチーニのオペラ、トゥーランドットを下敷きにした『鳳凰伝カラフとトゥーランドット』だった。

「大作ですし、まさか自分が主役やるとは思ってもいませんでした。発表の時は別の場所で衣装合わせをしていて、稽古場に戻ったら主役のところに私の名前が貼り出されたんです。『早く歌稽古に入って』と言われ、あたふたしたことが忘れられませんね。幕開きは、大道具さんに心配されるくらい緊張していましたが、最後はとても気持ち良く歌えましたし、やり切ったと思えました」

 退団後は、俳優とは違う方向へ進むことを模索した。役として何かをしゃべるというよりも、「自分の言葉で語りたい」と思ったのだ。だが、芸能界は甘くない。2年間ほど仕事がない状況が続き、スポーツセンターで年配の人たちとエアロビをしたこともあった。「30歳を超えて何かを学ぶことは難しい」。そう思いながらも、ベビーシッターの資格を取るなど、“自分磨き”に時間を費やした。

「ただ、事務所を変わったことで、自分の希望していたバラエティーとかコメンテーターの仕事を始めることができました。話すことも好きですし、情報を入手するのも好きなので、常に自分らしくいられるんです。かえって『歌え』と言われたりすると緊張します。『やってきたんだから、緊張しないでしょ』と不思議がられるのですけど(笑)」

 さまざまな場所へ行き、いろいろな人と話したり、おいしいものを食べる。それができる旅番組は、これからも挑戦していきたいジャンルだ。

「ワインのロケでチリに行ったのは、いい思い出です。出発から36時間。そこまで遠いとプライベートではなかなかいけませんよね。チリについて知識があまりなかったのですが、海もきれい、食べ物もおいしい、観光地もたくさんあります。ハードなロケではあったのですが、普段の生活では見られないものを見たり、行けないところに行ける。忘れられない体験となりました」

173センチ。遼河はるひの全身ショット【写真:増田美咲】
173センチ。遼河はるひの全身ショット【写真:増田美咲】

Jリーガーとの結婚理由「居心地が良かった」

 19年には、Jリーガーの鈴木彩貴さん(同年に引退)と結婚。自分が寝たいときに寝る、起きる、食べるという生活に慣れていたため、誰かと一緒に暮らすのは難しい。「気を遣ってまで結婚したいとは思っていなかった」が、鈴木さんと一緒にいることは「居心地が良かった」という。

 そして、「おしゃれな料理は作れない」と言うが、レシピ本も出している。今後は、どのような挑戦をしていきたいかを聞くと、「今まで機会がなかったコメディーの役をやりたい」と即答。ただ、韓ドラ初出演となった『ハイパーナイフ 闇の天才外科医』で、サスペンス作の面白さを感じたという。

 同作は、天才医師として期待されていた主人公のセオク(パク・ウンビン)が、自身をどん底に追い込んだ師匠のドクヒ(ソル・ギョング)との再会から始まる。2人の天才の対決と成長を描いたメディカル・サスペンス。完璧主義のせいで苦悩していたセオクは、師匠に逆らったことで免許を取り上げられ、路頭に迷うことになる。キャリアを失い、自分の人生を台なしにした師匠への復しゅうを誓ったセオクは、人知れず路地裏で手術を続けるという設定だ。

「パク・ウンビンさんもこういった役どころは初めてとのことで、いち視聴者として楽しみです。皆さん、パク・ウンビンさんの新境地に期待していてください」

 遼河の役どころは日本人で医療財団の理事長の市田ナナエ。メインキャストの2人と絡みつつ、全編、日本語で演じる遼河の姿も見どころになる。

□遼河はるひ(りょうが・はるひ) 1976年2月2日、名古屋市生まれ。1994年に宝塚音楽学校入学。96年、宝塚歌劇団入団で月組に配属。男役スターとし数々の作品に出演し、2009年に退団。以降はタレント、女優として活動。バラエティー番組にも多数出演。日本舞踊名取(西川栄綾)。血液型A。

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