1歳半から舞台に立つ28歳・早乙女友貴の「辞めたかった」幼少期 “好き”が芽生えたきっかけとは

「2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』」が、5月13日~6月1日に大阪・SkyシアターMBSで、6月24日~7月17日に東京・シアターHで上演される。脚本家の青木豪氏による書き下ろしとなる同作は、「鬼が棲まう平安の世を舞台」に“おとぎばなし”が紡がれる。今や「準劇団員」と呼ばれ、6度目の新感線出演となる早乙女友貴に、初の鬼役を演じる思いなど聞いた。

自身の舞台史を語った早乙女友貴【写真:増田美咲】
自身の舞台史を語った早乙女友貴【写真:増田美咲】

5月から6度目の「劇団☆新感線」作品に出演

「2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』」が、5月13日~6月1日に大阪・SkyシアターMBSで、6月24日~7月17日に東京・シアターHで上演される。脚本家の青木豪氏による書き下ろしとなる同作は、「鬼が棲まう平安の世を舞台」に“おとぎばなし”が紡がれる。今や「準劇団員」と呼ばれ、6度目の新感線出演となる早乙女友貴に、初の鬼役を演じる思いなど聞いた。(取材・文=Miki D’Angelo Yamashita)

 早乙女は、新感線を「やりがいを感じる唯一無二の劇団」と表現し、6度目の出演にうれしさをにじませた。

「オファーをいただいた時は純粋にうれしかったし、ありがたい気持ちでいっぱいでした。2023年『天號星』以来の出演になりますが、それまで5年連続で出させていただいていたので、劇団☆新感線ファンの方から『また、早乙女が出るのか』と思われていないか心配です(笑)」

 脚本は、『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』(23年)以来の青木氏が担当。モチーフとなるのは、古来より伝承が残る“鬼”である。人の善悪に切り込むことを得意とする青木氏だが、早乙女は「いつか青木さんとご一緒したいと思っていました」と話し、新たな挑戦に意欲を燃やしている。

「青木さんが新感線で脚本を担当された『IZO』(08年)を見た時、いつもの新感線とは違うダークヒーローぶりが魅力的で、『自分も演じてみたい』と思いました。今回の青木さんの脚本は、人間観察が面白い。今までの新感線とは違う、リアルな生々しさ、人間のみにくさや愚かさが描かれています。その独特の世界観に新感線ならではの色が混ざり合う。それを舞台で体感させていただけるのが、待ち遠しいです」

 主演は、今作が宝塚退団後、演劇では初舞台となる元宝塚歌劇団花組トップスターの柚香光(ゆずか・れい)。製作発表会見には、紅色の衣装で登場し、「『血潮が燃える』意味を込めた」と語った。

「一番絡むのは、柚香光さんですね。まだお会いして日も浅いのですが、内に情熱を秘めたアグレッシブなイメージがあります。初めての新感線は、自分の色を出すのが難しいのですが、(演出の)いのうえひでのりさんに身を任せて自分をさらけだすことを楽しんでほしいですね。お互い鬼一族の仲間なので、鬼としての生き様を2人で描いていければと思います」

 早乙女は家族で営む劇団朱雀(すじゃく)の看板俳優として、1歳半から大衆演劇の舞台に出演してきた。そこでキャリアを積んできた早乙女は、スピード感のある剣さばきに定評がある。劇団朱雀は15年2月に解散したが、19年に兄・早乙女太一とともに再結成。定期公演を続けてきた。今、早乙女にとって「大衆演劇」とはどのような位置にあるのか。

「大衆演劇は大切なルーツ、原点であり、なくてはならない存在です。大衆演劇をやっている人たちは1年中舞台に立っているので、外に出ることができないんです。自分たちの範囲内でしか物事を知らないし、学ぶことができない。外の演劇の世界に出ていったのは、僕と兄ちゃん(太一)ぐらいしかいないので、『恩返しできたら』という気持ちでいっぱいです。去年は時間が許す限り、ゲストとして出演しました。タイミングが合えば、『朱雀』の公演も今後はやっていきたいです。大衆演劇を今の若い子たちは知らない。僕たちを通して、少しでも広めていければと思っています」

転機となった作品について語った【写真:増田美咲】
転機となった作品について語った【写真:増田美咲】

大衆演劇での経験が支えるマルチな活動

 外部出演の際は、時代劇やショー、ファンタジー、漫画が原作の作品など多岐に渡って出演してきた。大衆演劇での経験の積み重ねが、ジャンルを超えたマルチな活動を支えている。

「大衆演劇が生きているかどうか分かりませんが、瞬発力みたいなものはあるかもしれないですね。日々違うことを大衆演劇でやってきたので、いざ慣れない環境に行った時に、どう柔軟性を持って対応するかの能力は培われました。大衆演劇をやってると、舞台に立つことが日常なんですよね。ご飯を食べるのと一緒です。いい意味でも悪い意味でも『こなす』だけになってしまうんです」

 日々やることに追われて、一つの作品に集中して時間をかけることができない大衆演劇。外に出て、一作品に1か月もの時間をかけることを体験して、考え方が変わったという。

「子どものころは何度も『辞めたい』と思ってました。『舞台が好きだ』という気持ちが芽生えたのは、大衆演劇を離れてからです。今はどんなに評判が良くて、褒められても満足しないようにしています」

 時代劇や2.5次元、ミュージカルなどさまざまなジャンルの舞台に出演。思い出に残っている作品や役者として転機となった作品を問うと、早乙女は新感線の舞台を口にした。

「一番大変だった舞台は、新感線に2回目の参加となった『偽義経冥界歌』。冒頭から登場して、一人で15分ぐらいしゃべりっぱなし、動きっぱなしでした。物語のきっかけを作ることが重圧で、舞台上を温めていき、次につなげるための流れを作る難しい役。顔と手のひらしか出てない衣装はとてつもなく重いのに、斜めになっているセットには階段がある。僕も主演の生田斗真くんも7キロぐらい痩せて、ガリガリになってしまったほどです。逆にお笑いネタをやらせてもらえるようになった作品が、ターニングポイントですね。『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』は毎回いろいろなことを試すことができて、それが自信につながりました。新感線でも、いい意味で力を抜いて伸び伸びと舞台に立てるようになった作品です」

 そして、新作に触れて表現していく。「ストップしてしまわないように、これからも演劇を極めていきたいです」。ストイックな28歳は、新感線との日々でさらなる成長を期す。

<2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』上演スケジュール>
5月13日~6月1日 大阪・SkyシアターMBS
6月24日~7月17日 東京・シアターH

□早乙女友貴(さおとめ・ゆうき) 1996年5月14日、福岡県生まれ。1歳半で初舞台を踏み、劇団朱雀の看板俳優としてキャリアを積む。17歳で劇団☆新感線『蒼の乱』に出演。主な出演舞台は『伝統芸能×朗読劇 和がたりシリーズ~湊川神社神能殿~「楠俤」』『舞台「刀剣乱舞」心伝 つけたり奇譚の走馬灯』『結合男子』『三國志演技~孫呉』「劇団朱雀『祭宴』」『キングダム』『BANANA FISH The Stage-前編-』 など。172センチ。血液型AB。

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