50歳で大病に…引退から20年、元平成アイドルが“復帰”に感慨「ガリガリの私を受け入れてくれた」

元アイドルで現在は日本語講師として教壇に立つ胡桃沢(くるみざわ)ひろこさんが、今年1月に開催した平成アイドルのイベントで久しぶりにステージに立った。当時の衣装を着てファンの前で歌い、現役時代よりもスリムな姿を披露したが、実は大病を克服してのステージでもあった。そんな胡桃沢さんにステージに立って感じたことなどを聞いた。

アイドル時代の写真を持った胡桃沢ひろこさん【写真:ENCOUNT編集部】
アイドル時代の写真を持った胡桃沢ひろこさん【写真:ENCOUNT編集部】

胡桃沢ひろこさん「仲間を大切に生きてきた」

 元アイドルで現在は日本語講師として教壇に立つ胡桃沢(くるみざわ)ひろこさんが、今年1月に開催した平成アイドルのイベントで久しぶりにステージに立った。当時の衣装を着てファンの前で歌い、現役時代よりもスリムな姿を披露したが、実は大病を克服してのステージでもあった。そんな胡桃沢さんにステージに立って感じたことなどを聞いた。(取材・文=福嶋剛)

 ステージで現役時代を彷彿(ほうふつ)とさせるパフォーマンスを見せた胡桃沢さん。30歳で芸能界引退後も何度か人前で歌うことはあったが、アイドルとしてファンの前で歌うのは何年ぶりなのか思い出せないくらい久しぶりだったという。

「とにかくうれしかったです。アイドル当時は、自分のことで精一杯だったので、ファンとの交流も覚えていなくて。51歳になってようやくファンのみなさんに『ありがとう』って言えた気がします。当日は母も見にきてくれて、まさかこの年齢になって母に歌っている姿を見せられるとは思っていなかったです(笑)」

 イベントを企画したのは元CoCoの宮前真樹さん。デビュー前からお互いを知る間柄だった。

「デビュー前にフジテレビの乙女塾(タレント育成講座)に2期生として入ったのですが、高校の先生に見つかり、たった1週間で辞めてしまいました。(今回のイベントは)その頃から仲の良い真樹ちゃんのオファーだったので前向きでしたが、病気でガリガリになった私をファンは受け入れてくれるのか、初めはとても心配でした」

 実は50歳になってすぐに大病を患い、今も体をいたわりながら仕事を続けている。

「卵巣の腫瘍です。手術して10キロ以上痩せてしまい、食べても太れなくなってしまったので今は少しずつ体重を戻しているところです」

 そんな精神的に不安定だった時に救ってくれたのがアイドル時代の仲間だった。

「手術前に同じレコード会社の先輩だった仁藤優子ちゃんと一緒に私がお兄ちゃんと慕う元CHACHAの西尾拓美さんのお店にご飯を食べに行きました。優子ちゃんは、死を覚悟して不安だった私をずっと励ましてくれて、手術後も後遺症で落ち込んでいたら、『無理しないで! ゆっくりね』って何度もLINEを送ってくれました。おかげさまで無事に治療を終えて、今も定期検診は続けていますが、好きなお酒も少しだけ飲めるようになりました」

 イベントでは、アイドル時代の代表曲『日本がアブナイ!』『スパーク・プラグ』の2曲を歌い、宮前さんや美少女仮面ポワトリンの花島優子さん、元Qlairの今井佐知子さんら元乙女塾の共演者たちとステージ上で懐かしい話に花を咲かせた。

「今だから感じられるファンのみなさんとの近い距離感とか、ファンのみなさんもいろんなことがあってここで再会できたので、すごく楽しめましたね」

 うれしかった一方で悔しさもあったと打ち明ける。

「アイドル当時の衣装が着られたことやファンの前で歌えたことはうれしかったのですが、やっぱり病気明けでガリガリだったので『もっと元気な姿を見せたかったな』という思いがあります。それと本番は予定と違うタイミングでステージに上がってしまい、そこはすごく悔しさがありました。今も心の中にはプロとしての気持ちが残っているんだなって感じました(笑)」

今年1月に当時の衣装を着てステージに立った胡桃沢さん【写真:富田大樹】
今年1月に当時の衣装を着てステージに立った胡桃沢さん【写真:富田大樹】

チャンスがあればまた人前で歌いたい

 終演後、ファンのあいさつでもらった言葉が今も支えになっているという。

「ファンの方からうれしい感想をたくさんいただいて、『もっと歌いたい』って気持ちが湧いてきました。ある方は『現役では感じられなかったすてきな笑顔でしたよ』と言ってくださり。つらかった思い出も多かったのでやっぱりファンの方ってちゃんと見てくださっていたんだなって思いました」

 イベント出演前には、有名なプロレスラーからも激励のメッセージが届き、こちらも“心の栄養”になった。

「田中将斗さんという『プロレスリングZERO1』に所属しているプロレスラーの方です。私がプロレス番組をやっていた時代に知り合って今でも試合の感想を送ったりしている大切な方です。イベントが近づき、私が衣装を着て歌えるのか不安だとLINEを送ったら『体型キープしているから当時の衣装着て歌っても大丈夫!』と言って元気をもらいました」

 最後に病気になって気がついたことを話してくれた。

「10年も20年も会ってないのに病気になってから優子ちゃんや真樹ちゃん、田中さんと久しぶりに話してみると、まるで昨日のことのように感じました。芸能界に入って今までいろんなことがありましたけど、『仲間を大切に生きてきて本当に良かった』って思いました。そして頑張って健康でいれば、またいつでも会えるって思いました。これからは日本語講師をやりながら、チャンスがあればまた人前で歌ったり、大好きなプロレスに関わるお仕事も挑戦してみたいです」

□胡桃沢ひろこ 1974年1月4日生まれ。新潟県出身。88年、中学3年の時に国民的美少女コンテストでファイナリストに選出。90年、日本テレビ系『スター誕生』の特番『スター発見』に出演し芸能界入り。91年7月10日1stシングル『スパーク・プラグ』でアイドルデビュー。直後に『桜っ子クラブ』さくら組に在籍し、2ndシングル『恋する夏の日』で、日本歌謡大賞新人賞を受賞。96年、テレビ東京系『ASAYAN』の企画「コムロギャルソン」に参加し、ガールズグループ・L☆IS(リス)のリーダーに就任。その後、西崎ひろこに芸名を変えTBS系『王様のブランチ』のレポーターなどバラエティー路線で活動。再び芸名を胡桃沢ひろこに戻し、プロレス情報番組のMCやミュージカル、Vシネマなどに出演。2005年に芸能界を引退。現在は日本語講師として活動する傍ら、今後はフリーランスとして歌やMC、プロレスに関連したイベント活動も計画中。

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