安寿ミラが語った「宝塚OG公演の稽古場はうるさい」理由…真琴つばさ「思い出の曲を歌います」

大阪・関西万博開催を記念した宝塚歌劇団卒業生の公演『未来へのOne Step!~世界を結ぶ愛の歌声~』が、4月、5月にかけて、東京、大阪で上演される。元花組トップの安寿ミラ、元月組トップの真琴つばさの出演も決定。真琴の入団時配属は花組で、先輩の安寿と同組で8年間を過ごしている。そんな2人の対談「後編」では、この公演の見どころを語りつつ、宝塚OGによる公演の裏話も明かしている。

対談で宝塚時代を振り返った安寿ミラ(左)と真琴つばさ【写真:増田美咲】
対談で宝塚時代を振り返った安寿ミラ(左)と真琴つばさ【写真:増田美咲】

4月、5月にかけて『未来へのOne Step!~世界を結ぶ愛の歌声~』

 大阪・関西万博開催を記念した宝塚歌劇団卒業生の公演『未来へのOne Step!~世界を結ぶ愛の歌声~』が、4月、5月にかけて、東京、大阪で上演される。元花組トップの安寿ミラ、元月組トップの真琴つばさの出演も決定。真琴の入団時配属は花組で、先輩の安寿と同組で8年間を過ごしている。そんな2人の対談「後編」では、この公演の見どころを語りつつ、宝塚OGによる公演の裏話も明かしている。(取材・文=Miki D’Angelo Yamashita)

 今年、芸能生活45周年を迎える安寿と40周年の真琴。それぞれイベントを控えるが、2人で出演したOG公演も多数あり、新たな関係性を築いている。

安寿「退団してから一緒の公演に出ることもよくあるのですが、2017年に日生劇場で『越路吹雪 三十七回忌 特別追悼公演「越路吹雪に捧ぐ」』があって、その時にご一緒したのは思い出に残っています。マミが男性に『行かないで』とよろめきながらセリの上で倒れてそのままセリ下がってくるんですけど、『マミもこんな芝居ができるようになったんだ』と感慨深かったです。その時のマミのドレス姿がまたすてきだったんですよ」

真琴「ドレス姿はあまりご覧になったことがなかったですよね。最近はパンツよりドレスの衣装が多くなってきました。今回のショーではドレスは着ませんが、昔を知っているお客様には、そうした時の流れを感じていただけると思うんです。同時にその当時の一瞬に戻れる。万博会場の公演でもそんな体験をしていただければうれしいですね」

安寿「それぞれ思い出の曲を歌いますので、そう感じていただければありがたいです。でも、なぜか毎回OG公演に出る花組出身者が少ないんですよね」

真琴「私は花月のハーフということで(笑)」

安寿「宝塚歌劇の初演から『ベルサイユのばら』50周年を記念するスペシャルイベント、『ベルサイユのばら50』の公演を2024年に開催した時も花組出身者が少なかったんです。公演は配信されたのですが、元花組トップの真矢みきや愛華みれが『配信を見ています』と連絡してきたので、『見ている場合じゃないでしょ。出なさい』と言ったんですけど(笑)」

真琴「私は『ベルばら』でバラの少年の一人をしていたので、その格好でよければ(笑)」

安寿「私は、花組にしか在籍していなかったこともあって、花組に強い思い入れがあります。とにかく楽しい思い出しかなくて、私の青春すべてなんですよね。トップ時代は、一体感があって皆に支えられていたおかげで、苦しいことも乗り越えられました。今、振り返っても人生で一番楽しい時代でしたね」

真琴「ヤンさんのお披露目公演の時に、初めて自分のソロの場面をいただいたんです。少しずつ責任がのしかかってきたのですが、その立場を楽しめるようになっていました。一番充実している伸び盛りの入団8年目ぐらいに花組にいたので、『真琴つばさは、ヤンさんに育てていただいた』ということになります」

安寿「いやいや、育てた覚えはありません(笑)。とにかく楽しい思い出しかないですね」

真琴「ヤンさんがオスカルを演じられた時は、男役でありながら女性の心もうまく表現されているのがダイレクトに伝わってきて、女優としても魅力的で学ぶところが多かったです」

安寿「マミは真面目なんですよ。忘れもしない、『会議は踊る』の新人公演で私の役を演じた時に、「軍人の衣装でうまく歩くことができない」とアドバイスを求めてしょっちゅう聞きに来ていました。熱心だなと感心していたんです」

真琴「いまだにうまく歩けないです」

安寿「今はもういいの。軍服着て歩かないでしょ(笑)。今年は芸能生活45周年なので、12月にずっとやってきた『Female』を宝塚と東京で予定しています。ありがたいことに、いまだに少女の目で見てくださるというか、男役ではなくなってもずっとあの頃の面影を追いかけてくださる方もいらっしゃるし、今の活動が好きという方もいらっしゃるし、私が担当した振り付けを見に行きますという方もいらして、いろいろな形で応援してくださってありがたい限りですね」

真琴「私は、今年芸能生活40周年なんです。35周年はコロナで中止になってしまったので力が入ります」

安寿「私は、ぎりぎり12月に40周年のコンサートができたのでラッキーでしたね」

真琴「35周年が幻になってしまったこともあって、やっとお客さまと過去を共有し合える時間ができるかと思います。ゲストに高汐巴(※高の正式表記ははしごだか)さんと檀れいさんをお迎えしてヤマハホールでコンサートを開催します。入団時にご一緒させていただいた高汐さんと退団の時の相手役の檀れいさん。昔をよく知っている方たちに出ていただきます」

安寿「外部の公演とは違ってOG公演の稽古場はうるさいですね。やる時はしっかり稽古しますが、同じ話題で話に花が咲きます。音楽学校時代の掃除の場所だとか鼓笛の担当だとか、その話題は今の時代の人たちも共通して経験していますから、『私の時は』とみんなが話し始めたらもう止まらない」

安寿ミラ【写真:増田美咲】
安寿ミラ【写真:増田美咲】

宝塚は日本の文化「知っていただけるいい機会」

真琴「今回の稽古場もそうなりますね。ショーは90分あるので、意外とボリュームがあるんですよ。次から次に畳みかけるようにスタンダードナンバー、ミュージカル、シャンソン、ジャズを歌い継ぎ、万博会場では最後に日本の民謡、東京、大阪公演では、宝塚のそれぞれ自分が選んだ曲、思い出の曲を歌います」

安寿「いくつか歌いたい曲の候補を出して選びました。日本ものの場面は、いろいろな地域の民謡で構成されています」

真琴「万博ということで、海外からのお客さまも多いと思います。衣装も和テイストを取り入れたものもありますし、日本文化を少しでも伝えられればと考えています」

安寿「円形の劇場なので、どの方向からでも見られているので隙を見せられない。『日本にこんなカルチャーがある』ということを知っていただければうれしいです」

真琴「宝塚を今までご覧になっていた方々にとっては、『シャインハット』という新感覚の空間で、各国の歌を楽しんでいただけると思います。また、東京と大阪の公演でどのようにバージョンアップするかを期待していただきたいですね」

安寿「万博会場と東京、大阪公演のお客さまは全然違うと思いますが、ファンの方がいらっしゃる東京と大阪のほうが緊張するかもしれません。『シャインハット』での初めてのショーですから、それなりの緊張はあると思いますが、かえって宝塚を知らない方に見ていただくほうがリラックスして臨めるような気もします。いずれにしても、稽古を積んで充実した内容をお届けできるように心がけています。見どころの一つは、ダンスを受け持ってくれるアンサンブル。スキルが高いダンサーたちが集まっているので、さまざまな振り付けを踊りこなしてくれるはずです」

真琴「宝塚の香りが残せるとしたらこのチームプレーですね。『万博』という言葉が加わることによって、宝塚もよく歌われるナンバーでも、違う意味を持つように感じますし、宝塚という日本の文化を知っていただけるいい機会だと思います」

安寿「そこで生まれる卒業生たちの熱いエネルギーを伝えたいですね」

真琴つばさ【写真:増田美咲】
真琴つばさ【写真:増田美咲】

『未来へのOne Step!~世界を結ぶ愛の歌声~』日程

・4月29日~5月1日 大阪・関西万博会場EXPOホール「シャインハット」
・5月17日~20日 東京国際フォーラム ホールC
・5月25日~27日=大阪・梅田芸術劇場メインホール

□安寿ミラ(あんじゅ・みら)3月30日、長崎県生まれ。1980年、宝塚歌劇団に入団し、花組に配属。91年、花組トップスター就任。95年に退団した後は、ミュージカル、ストレートプレイ、ダンス公演などに出演。自身のコンサート『FEMALE』の構成、演出を手掛ける他、振付師・ANJUとしても活動。

□真琴つばさ(まこと・つばさ)11月25日、東京都生まれ。1985年、宝塚歌劇団に入団し、花組に配属。93年、月組に異動。97年、月組の男役トップスター就任。2001年に退団。以降は歌手として12枚のソロCDリリースをはじめ、舞台、テレビ、ラジオと多方面で活動。

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