野村宏伸がなぜ居酒屋のランチ営業? 飲食業挑戦で厨房に立つ理由と“二刀流”の現在地
新宿区高田馬場の老舗居酒屋「ひさご」が、三重県のご当地グルメ「四日市トンテキ」を看板メニューに据えてランチ営業を始めてから約2か月。厨房に立つのは、俳優の野村宏伸。数々のドラマや映画で活躍してきた彼が、なぜ今、料理の世界に挑戦しているのか――。その背景と想いを聞いた。

60歳の節目を前に料理の世界に挑戦
新宿区高田馬場の老舗居酒屋「ひさご」が、三重県のご当地グルメ「四日市トンテキ」を看板メニューに据えてランチ営業を始めてから約2か月。厨房に立つのは、俳優の野村宏伸。数々のドラマや映画で活躍してきた彼が、なぜ今、料理の世界に挑戦しているのか――。その背景と想いを聞いた。(取材・文=平辻哲也)
「正直なところ、最初は思った以上に体力的な負担を感じました。立ち仕事は俳優業ではあまりないので、朝9時半ごろから昼の営業が終わる14時までずっと立ちっぱなしというのは、想像以上にハードでした。ただ、続けるうちにだんだんと身体も慣れてきましたね」
「ひさご」は、もともと野村がバイク仲間とよく通っていた居酒屋。その友人が店の経営を引き継ぐことになり、「料理をやってみないか」と声をかけられたことが、すべての始まりだった。
「料理は昔から好きで、飲食の仕事にも興味がありました。60歳という節目の年でもあり、新しいことに挑戦するにはちょうど良いタイミングだったんです」
提供するのは、三重県四日市市のご当地グルメ「四日市トンテキ」。厚切りの豚肉をグローブ状にカットし、ニンニクの効いた濃厚なタレで焼き上げ、千切りキャベツを添えるスタイルが特徴だ。
筆者も四日市トンテキ(1800円)を試食した。男性の手のひらほどもある分厚い豚肉を専用のハサミで切り分け、口に運ぶ。柔らかい肉とタレの旨みが口いっぱいに広がり、ご飯が進む。思わず“おかわり”してしまったほどだ。
「見た目は濃厚そうですが、意外とさっぱりしていて、クセになる味わいです。メインは四日市トンテキですが、もともとこの店で出していたハンバーグやカレーも美味しいので、そのまま活かすことにしました。試行錯誤しながら今のスタイルに落ち着いています」と野村。
この味を支えるのが、台東区・浅草橋の人気洋食店「グラシア」のレシピ。店主・金村豊さんが、四日市で日本料理店を営んでいた父親から、発祥の店とされる中華料理店「來來憲(らいらいけん)」直伝のレシピを受け継いだ。
「グラシアの金村さんに直接、焼き方や段取りを教えていただきました。タレも提供してもらえることになり、それなら自分にもできるかもしれないと思ったんです」

俳優業も継続
トンテキの他にも、以前から好評だったハンバーグやカレーもランチメニューに加えた。常連客からも評判は上々で、「最近は女性のお客さまも少しずつ増えてきている」と話す。筆者が来店した日も、この日も女性の1人客が2人、訪れていた。
現在、ランチ営業は月~土曜だが、週末にしか外食の時間が取れない人たちのために、「日曜の昼飲み営業」も検討しているという。
「“トンテキで昼飲み”というスタイルもいいのではないかと思っています。せっかくの味を、もっと多くの方に楽しんでいただきたいですから」
俳優業は今も続けている。今後、舞台や映像の仕事が入ればシフトを調整することもあるが、「できる限り自分も厨房に立ちたい」と語る野村。今後は、食べログなどのグルメサイトも活用し、ランチ営業の認知度を広げていく予定だ。
「ここが賑わうことで、夜の居酒屋営業にもいい影響が出たらうれしいですね」
40年以上にわたり第一線で活躍してきた俳優が、60歳にして再びゼロからの挑戦。高田馬場の小さな居酒屋から、新しい物語が静かに始まっている。
□野村宏伸(のむら・ひろのぶ)1965年5月3日、東京都生まれ。1984年に映画『メイン・テーマ』で薬師丸ひろ子の相手役に抜てきされデビュー。日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。1988年のテレビドラマ『教師びんびん物語』の榎本英樹役で人気を博す。主な出演作に映画『キャバレー』、ドラマ『とんび』、NHK連続テレビ小説『あぐり』などがある。歌手としても「ガラスの薔薇」などをリリース。近年は映画『科捜研の女-劇場版-』『コウイン~光陰~』などにも出演。身長175センチ、血液型B型。
〈店舗情報〉
居酒屋 ひさご(ランチ営業)
住所:東京都新宿区高田馬場3丁目
営業時間:11:30~14:00(月~土)
メニュー:四日市トンテキ(1800円)、ハンバーグ(1300円)、カレー(1200円)、ちょいカレー(200円)
※夜は居酒屋営業あり。日曜定休(変更の可能性あり)
