青木真也、明かした“客”への不安「“動けてない”と言われる怖さが」 それでも「向き合いたい」

日本総合格闘技界のトップを走り続けてきた青木真也(41)が23日、ONEチャンピオンシップで最後のMMA戦を迎える。対戦相手はこれまでタイトル戦を含め、3度対峙(たいじ)したエドゥアルド・フォラヤン(41=フィリピン)。海外トップリーグに移籍して13年、直前に迫ったいま何を思うのか。

試合2週間前、青木真也の顔色は良かった【写真:ENCOUNT編集部】
試合2週間前、青木真也の顔色は良かった【写真:ENCOUNT編集部】

「プロ格闘技っていう軸で言うと最後になるかもしれない」

 日本総合格闘技界のトップを走り続けてきた青木真也(41)が23日、ONEチャンピオンシップで最後のMMA戦を迎える。対戦相手はこれまでタイトル戦を含め、3度対峙(たいじ)したエドゥアルド・フォラヤン(41=フィリピン)。海外トップリーグに移籍して13年、直前に迫ったいま何を思うのか。(取材・文=島田将斗)

 これまでの試合前よりも自分を俯瞰(ふかん)して見ていた。MMA戦をするのは1年2か月ぶり。“ONEで最後の試合”というよりも試合間隔が空いたことへの思いが大きい。

「気が付いたら1年以上空くことになっちゃってるんですよね。それはコンディションの良い僕からすると不本意であると。できるのであればもう少しコンスタントに試合をしていきたいと思います。まぁでも、そんなにコンスタントに試合をしてどうするんだっていう話でもあるから。ちょうどいい落としどころであり、いい感じに脱力できてきたんじゃないかな」

 求めてきたMMA戦が組まれなかったことや不本意な試合をしてきたことで忘れていたが、ファイトキャンプを行う上で見えてきたことがある。ここ最近はプロレス興行に完全に気持ちが傾いたという発言をしてきたがここにきて本音が漏れた。

「(格闘技が)楽しいですしね。正直なことを言うとね『やっていきたい』って気持ちが強いかな。もちろんプロレスも楽しいですよ。でも(試合が)あればあったでやりたいなって気持ちがある。あとは毎度言いますけど契約下であることで他の活動が制限される。そこがもったいなと」

 試合に向かう、という意味での気持ちはいままでと全く変わらない。しかし「プロ格闘技っていう軸で言うと最後になるかもしれない」と口にする青木はやや視線を下に落とした。

「正直に言うと今後やる場所がないのも事実だし、やる必要もない。モヤモヤしていますよね。やれるんだったらやりたい気持ちはどこかにありますけど」

 暇になるのが青木は苦手だ。「格闘技って最高の暇つぶしですから。今回の試合が終わって4月にアメリカでプロレスがあって、6月もある。いま『3か月はつぶれるな』って気持ちなんです。金を残したいとかではなく、やることがなくなるのが寂しいですよね。エンジョイする、やることを作っておきたいなって」と明かした。

自分との対話を大事にしている青木真也【写真:ENCOUNT編集部】
自分との対話を大事にしている青木真也【写真:ENCOUNT編集部】

二拠点生活を送り己の衰えと向き合った

 現在東京と地元・静岡で二拠点生活を送っている青木は静岡でランニングや階段ダッシュなどコンディショニングを行い、東京で格闘技の練習を行っている。練習パートナーは昨年1月の試合から変わらず今月30日にRIZINでルイス・グスタボとの対戦を控えている野村駿太(27)。野村は青木との練習で「自信をなくす」と明かしていたが、一方の青木も野村に「圧倒された」という感覚がある。

「練習量で言うと正直落ちてますね。昔のような自分の理想とする練習だったり、トレーニングができていないことに対する悔しさとか憤りみたいなものは正直あります。でも、それをやったらできなくなっちゃう。衰えていく自分、本当にセンターで踊ってた時の自分をイメージしたら難しくなってくる。そこに対する苦しい気持ちは常々ありますよね」

 週の半分以上は静岡に帰っている。二拠点生活にした理由も衰えと向き合うため。練習量を調整することでコンディションを保っているが葛藤がある。

「練習を物理的にできなくするわけですよ。できる限り競争の場からおりる。帰れなくなると行き詰まるというか『しんどいな』って思うんです。東京にいることで時間が生まれちゃう。トレーニング、ジョグはするけど、ここで昔のように練習を入れると壊れていく。そこが難しく悔しい。成長する未来が見られなくなっている不甲斐なさ、自分がまだ受け入れられない感はありますよね」

 試合への怖さはファイトウィークにこれまでも口にしていたが、初めて試合を観戦する“客”に対する不安を吐露した。

「今回一番怖いと思うのは……言葉では醜態をさらす覚悟はできているんですよね。倒されることも負けることもそう。一番つらいのは“動けてないね”“反応悪くなったね”って言われる怖さは正直ありますよ。そう言われる、受け入れる覚悟はしてるけど、実際やるとなると嫌ですよね。自分が表現している部分とはまた違って、粗さというか自分が『表に出していいのか?』って思うようなものを出してしまうことになるんじゃないかって怖さがある」

「耐え難きを耐え……」と玉音放送のフレーズを引用しこう続けた。

「新しい世代、若い子たちの台頭もあるわけじゃないですか。そうなると『いつまでも……』って気持ちはすごいありますよ。同時にONEの自分に対する扱いもそういう扱いになっていくなかで“耐え難きを耐え”っていうのは正直事実ですよね」

 移籍して13年、7度もタイトル戦を経験してきた。日本でのONEの知名度を支えたのは間違いなく青木だ。一番心に残っている瞬間を問うと「どれって言えない」と返ってきた。

「なんだろうね、あのとき、あの場所、いろいろリンクしてますよね。自分の人生、プライベートを含めて全部リンクしてるから点じゃない。なんかすごく濃淡があるね。デビュー戦のときは、僕は子どもを抱いてリングに上がっているわけだし、紆余曲折へて独身になっていまがあるわけだし、いろんなことがあって生きてるから本当にこれだとは言えないね」

 ここ数年、引き際や仕舞い方をテーマに生きてきた。“ONEで最後”は「どうでもいい」。ピークを過ぎた現在を見せることへの不安は大きいが、それでも「久々に見に来てくれるお客さんもいるので、そこに対する感謝の気持ちを込めて、そこのお客さんと向き合いたい」と自分を奮い立たせた。

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