東京スカパラ、活動休止なしで35周年…音楽ルーツ違う9人をつなぐ“スカ”のすごさとは
35年間、1度も休止せずに活動してきた東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)。昨年11月、甲子園球場で行った初のスタジアムライブ「スカパラ甲子園」では、奥田民生、桜井和寿、aiko、SUPER EIGHTら9組のゲストが出演。約4万人のファンを歓喜させ、スカパラの歴史がノーボーダーな音楽のつながりで紡がれていること、メンバー9人のサウンドの力強さをあらためて示した。バリトンサックス・谷中敦(以下、谷中)とトランペット・NARGO(ナーゴ)へのインタビュー「後編」では、2人に「歌モノ」への思いや、それぞれの音楽ルーツを聞いている。

谷中敦、NARGOインタビュー「後編」
35年間、1度も休止せずに活動してきた東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)。昨年11月、甲子園球場で行った初のスタジアムライブ「スカパラ甲子園」では、奥田民生、桜井和寿、aiko、SUPER EIGHTら9組のゲストが出演。約4万人のファンを歓喜させ、スカパラの歴史がノーボーダーな音楽のつながりで紡がれていること、メンバー9人のサウンドの力強さをあらためて示した。バリトンサックス・谷中敦(以下、谷中)とトランペット・NARGO(ナーゴ)へのインタビュー「後編」では、2人に「歌モノ」への思いや、それぞれの音楽ルーツを聞いている。(取材・文=よもつ)
スカパラの曲作りは、各自が作曲した曲を持ち寄る「曲出し日」から始まる。谷中が作詞を担当する「歌モノ」の場合には、当て書きもするが、過去に作った曲が採用されることもある。
NARGO「僕は当て書きが苦手で、自分が今面白いと思うことを音に乗せて作ることしかできない。それで、皆が面白いと思ってくれるかどうかです」
谷中「NARGOが作った『あの夏のあいまいME』のサビは、元のメロディーに、『もう少し大きいサビがほしい』というオーダーをして、NARGOが再度作ってくれました。そういう微調整はしますね」
NARGO「この曲は、実はスカパラとして1回やろうとしたんです。だけど、『1人がずっと歌う曲としてはどうかな』って、ずっと宙に浮いていました。そうした中でSUPER EIGHTとのコラボが決まって、この曲が浮上してきました。SUPER EIGHTのメンバーが歌い分けることで、パズルがハマったかのように形に一気になりました。『このためにこの曲はあったんだ』と。命が吹き込まれた感じがしましたね」
2組の交流は、2018年にSUPER EIGHT(当時、関ジャニ∞)の『無責任ヒーロー』で共演したことから始まった。その後、渋谷すばるがグループを脱退する際に、テレビ朝日系『関ジャム 完全燃SHOW』(現『EIGHT-JAM』)で共演。スカパラも過去に脱退や死別によるメンバーとの別れを経験している。この時の共演で感じた思いを、谷中は『メモリー・バンド』(2018)で歌詞にした。そんな2組のコラボ作『あの夏のあいまいME』のミュージックビデオ(MV)では、スカパラもダンスに挑んだ。
NARGO「まさか踊るとは思いませんでした。SUPER EIGHTのみんなもミュージックビデオで『久しぶりに踊った』って言ってました(笑)」
谷中「『俺、無理~』って思いながらやってました」
NARGO「最初は踊るだけだったのに、本番の時に監督さんが『リップシンクしましょう』って言って。そこで一気にバグりました。口を動かしながら踊るってこんな難しいんだって」
谷中「頭が爆発しました。『俺、帰る!』って思いました(笑)」。
「歌モノ」が話題になる一方、批判的な意見も耳にした。インストバンドとして評価されてきたからだ。
谷中「よく 『ファンを裏切るようなやり方をして』という言い方をしますよね。でも、見え方や方向性を変えることで、刺激を感じてもらって、そこからスカパラ本体の良さが見えてくると思います。いろんな角度からスカパラを見直してもらうきっかけになる。そう思いながらやっています。裏切るつもりはなくて、楽しんでもらえると信じて、新しいことにチャレンジしています」
NARGO「90年代終わり頃に『1回ここで引き締めよう』って皆で一致団結して、ヨーロッパツアーをしました。ずっとバスで移動して各国を回る過酷な旅で、『いろんな国に行って皆を踊らせる』というのをガッツリやりました。それで自信がついて、『インストバンドとしてしっかり地に足ついたよね』ってなって、田島貴男さんとの『めくれたオレンジ』を出した。紆余曲折あり、『こんなんじゃない』って言われたりしながら試行錯誤してきましたね」
そして、最近はインストと歌モノを分けて考えてないという。
NARGO「インストでも、歌モノでも、大事なことは『トーキョースカ』というサウンドがしっかりしているかどうかですから」

谷中は映画音楽、NARGOはジャズ一筋
今回リリースされるベストアルバムでは、各時代を彩った楽曲が色あせずに聴こえてくる。それは、スカパラが揺るぎない強さを持っている証しだろう。そして、その強さの根底にはメンバーによって異なる音楽ルーツがある。
NARGO「僕は小学生の時からジャス一筋。渡辺貞夫さんとか日野皓正さんがCMに出てた頃で、その時にトランペットに出会い、マイルス・デイヴィスなどを聞いていました。スカパラのメンバーと出会って、初めてスカという音楽があることを知ったんです。ただ、スカは『ジャマイカンジャズ』と言われているくらいジャズと共通点が多かったので、移行はすんなりいきました。ただ、スカはライブをやったら、みんながめちゃくちゃ暴れるように踊る。それがカルチャーショックでした」
谷中「ロックってそんなに聴いてなかったよね? それが驚きでした。」
NARGO「全く。ジャズ喫茶でバイトしたり、ジャズ一筋でした」
一方、谷中の音楽ルーツは幼少期の映画音楽だった。高校から大学時代はグラムロック、デヴィッド・ボウイ、DOORSなどロックを聴き込んだ。その後、2000枚ほど集めたレコードを全て売り、次にブラックミュージックを聴き始めたという。
谷中「兄が映画音楽を流すラジオ番組をカセットテープに録って、ずっと聞いていました。それを横で聴くうちに好きになりました。インストゥルメンタルの曲を聴きながら、見たことない映画のシーンを想像するのが楽しかった。おかげで、スカパラに入る時もすんなり入れました。いまだに映画音楽を聴きながら作詞すると、言葉が浮かんできたりしますね」
最近はデューク・エリントンや、バス・サックス奏者のエイドリアン・ロリーニら1920~30年代のジャズを聴いているという。
谷中「曲の中盤までずっとインストで、途中でボーカルが登場する曲が多く、自分たちとの共通点を感じながら聞いています」
NARGO「メンバー、それぞれいろんな方向に音楽の引き出しがあるけど、そこをつなぎとめているのが“スカ”なんです。シンプルな分、何でも受け入れられる懐の深さがある。そこがすごいと思いますね」

スカという器に新しいアイデアを柔軟に入れ、35年間、止まることなく音楽を奏で続けたスカパラ。今年も今月20日に横浜アリーナで開催されたライブの他、国内外のフェスへの参加、5月から始まる47都道府県ツアーも発表された。立ち止まる気はなさそうだ。
谷中「(47都道府県ツアーは)「スカパラ甲子園」の時に各地からお客さんが集まってくれたので、そのお礼参りです」
ツアーのコンセプトを聞くと、谷中は「『まだ、諦めてないだろ?』(25年、メンバーボーカル最新曲)がベスト盤の最後に来てるくらいなので、これじゃないですか」と言い、NARGOも同意した。
NARGO「そうですね。平均年齢が上がってきているけど(笑)、いまだに『新しいことがあるんじゃないか』って探してる。探し続けるんでしょうね、一生、そうしていくと思います」
□東京スカパラダイスオーケストラ 1989年デビュー。幾度のメンバーチェンジをへて、現在はNARGO、北原雅彦、GAMO、谷中敦、川上つよし、沖祐市、大森はじめ、加藤隆志、茂木欣一の9人。2001年以降、メンバーによる作曲、谷中敦による作詞でゲストボーカルを迎える”歌モノ”を発表。これまで世界32か国で公演を果たし、海外の音楽フェスにも多数出演している。13年、米国最大級の音楽フェス「コーチェラ」で日本人アーティストでは初めてメインステージに立った。21年には、東京オリンピックの閉会式に出演した。
