ライブで痴漢トラブル→運営会社は否定「事実関係と相違」…被害女性は怒りの反論「なかったことはありえない」

5人組ロックバンド『礼賛』が今月16日に大阪で行った公演で、痴漢被害を訴えるトラブルが発生し、物議を醸している。Xを通して17日に被害申告を行った女性はENCOUNTの取材に対して、ライブ会場内で見知らぬ男性から被害に遭ったとする当時の様子を証言。制作スタッフ側が消極的な対応をしたとして疑問視している。一方で、ライブ運営元の株式会社キョードー大阪と株式会社キョードー関西は19日付で声明文を公表。「痴漢行為と疑われる事象は認められないという証言が提示されました。被害を申告された方がXへ投稿された内容には、弊社が関係各位と確認した事実関係と相違する部分が多々ございます」と否定。双方の主張に食い違いが生じており、さらなる波紋を広げている。

ライブハウスでの痴漢訴えが波紋を広げている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
ライブハウスでの痴漢訴えが波紋を広げている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

パニックになって「手の震えが止まりませんでした」

 5人組ロックバンド『礼賛』が今月16日に大阪で行った公演で、痴漢被害を訴えるトラブルが発生し、物議を醸している。Xを通して17日に被害申告を行った女性はENCOUNTの取材に対して、ライブ会場内で見知らぬ男性から被害に遭ったとする当時の様子を証言。制作スタッフ側が消極的な対応をしたとして疑問視している。一方で、ライブ運営元の株式会社キョードー大阪と株式会社キョードー関西は19日付で声明文を公表。「痴漢行為と疑われる事象は認められないという証言が提示されました。被害を申告された方がXへ投稿された内容には、弊社が関係各位と確認した事実関係と相違する部分が多々ございます」と否定。双方の主張に食い違いが生じており、さらなる波紋を広げている。

「大ごとにしたくないという意識を感じました。これ以上被害者が増えないように、誹謗(ひぼう)中傷を覚悟で声を上げました」。被害を受けたと訴える女性は、切なる心情を訴えた。

 礼賛はサーヤ、川谷絵音、木下哲、休日課長、GOTOで構成されるバンド。問題となっているのは、ライブハウス・なんばHatchで行われた公演だ。妊娠5か月のファンの20代女性は、事前に医師に相談のうえで、夫と2人でライブを鑑賞しに行った。スタンディング席だったが、1人1人の距離感は保たれ、周囲と体がぶつかるような状況ではなかったという。

 痴漢をしたとする男性は女性を連れてきており、被害を訴える女性とは隣同士の位置関係にあった。ライブ開始直後から胸に手が当たることが数回あり、その後は「ひじで胸をぐいぐいされることが何度もあり、確信に変わりました」。被害女性はメモ帳に「痴漢です」と書き、まず夫に見せて、夫が場内スタッフに助けを求めた。

 被害を訴える女性と夫は一度その場を離れ、モニターでライブが見える別の場所に移動した。バンド側スタッフと、制作側の男性スタッフ2人が応対。制作スタッフは夫を同行させ、男性を特定。注意をしてそのままライブ会場に戻したという。

 女性は大好きなバンドのライブでの痴漢被害に気が動転してしまった。パニックに陥り、「手の震えが止まりませんでした。礼賛のスタッフから水をもらいましたが、全部こぼしてしまったほどでした」。男性がライブ会場に戻ったことを聞いて、「礼賛は女性ファンがすごく多いので、二次被害が心配になりました。スタッフ側に『私の痴漢の問題が解決しないまま会場に戻すのは納得いかないです。(男性に)ライブを見させるのはやめさせてほしいです』と言いました」と、スタッフ側に強く訴えた。

 ところが、制作スタッフ側から「警察を呼んでも意味がないから」といった趣旨のことに加えて、「よくあることですからもうやめましょうよ。男性側もライブを楽しめなくなります」などと言われ、あ然としたという。結局、「話し合いましょう」と、男性と対面することになった。

 連れてこられた男性は怒っている様子で、「お前みたいなやつに俺がするわけないだろ」「胸触られたと思ったんなら思った時に声出せや」「戻りたいんだよ、俺は」など、声を荒げたという。女性は恐怖を感じたが、「スタッフ側は全員無言でした」。男性がヒートアップしたこともあり、別々に隔離することになった。

警察官の対応は? 女性にとって「一生のトラウマ」に

 被害女性は早い段階から警察を呼びたい考えを制作スタッフ側に伝えていたが、スタッフ側は「自己責任でお願いします」と動かず、「このことを思い出したらつらくなりますよ」と、このまま事を収めることを促してきたという。

 隔離の際に、女性が警察に通報。個室で警察官に被害相談をすることになった。それでも、「制作スタッフがずっと立ち会っていたので、怖くて何も言えない状態でした」。女性は当初被害届を出す意思を持っていたが、警察官からは、現状は証拠がないこと、捜査手続きのため後日に何度か大阪まで来るようになることなどを説明され、「さすがにそこまでは……となりました。警察官からは『被害届は出せるけど負担になります』『処罰は与えなくていいですよね?』と言われました。結局、『犯人に処罰は与えません』という念書に署名することになりました。(男性は)別に事情聴取され、署に行ったらしいです」。被害届は出さない形になった。女性にとって今回の出来事は「一生のトラウマ」になってしまったという。

 女性はXのアカウント(ののの 20w / @nonono_desuyoo)を通して被害を訴えた。投稿は大きな反響を集めており、「何もかも終わってる」「本当に怖い思いをされましたね。。勇気を持って発信されたことに感銘を受けます」「私も東京ですが、若い頃、電車内で痴漢捕まえて、本人認めたのに駅員から『この人にも家族があって生活があって』『もし警察に連絡したら会社クビかもしれない、それでいいの?』と半ば脅されました」などの声が寄せられている。

 被害女性は「私が警察を呼んでいなかったら、あのまま(男性が)ライブを楽しんでいたと思うと、ぞっとします。電車内の痴漢は少しずつ声が上げられるようになりましたが、それでも大変な状況で、ライブハウスの痴漢は声を上げられないケースが大半だと思います。痴漢は重い犯罪ですし、ライブを止めてしまうほどの重大な行為であることを分かってほしいです。とにかく私のような被害者が増えないことを祈っています」と自らの思いを明かす。

 騒動を受け、礼賛は18日に公式SNSを通して、「現在、事態の把握に加え、緊急時のオペレーション体制の見直しを要請し、会場内でのトラブル防止対策についての協議を関係機関と重ねております。痴漢は犯罪行為であり、到底許される行為ではございません。会場内にて、痴漢または痴漢を疑われるような行為が見受けられた場合には主催者を介し、警察機関への全面協力を致します」などと声明を発表した。

 バンドの声明を読んだ女性は「私はファンですが、礼賛のスタッフはもう少し何かできなかったのかな? と思うところもあります。今回の制作側にはもっと痴漢防止や被害対策を考えて、しっかり対応してほしいです。今回のようなことが起きないよう改善してほしいです。『痴漢はダメ』というメッセージを発するバンドもいます。音楽業界全体がもっとよくなればと願っています」と話す。

会社側が声明「弊社が関係各位と確認した事実関係と相違する部分が多々ございます」

 一方で、ライブの運営を行った株式会社キョードー大阪と株式会社キョードー関西は公式サイトに連名で声明文を発表。同社で事実確認を行ったとし、「当社は、被害を申告された方によるXへの投稿内容に事実との相違があることを、投稿時より確認しておりました。しかし、礼賛のファンであることや個人の発信であることを考慮し、静観しておりました。

 本件については、当事者双方のご主張を伺うとともに、当日に居合わせた方々の目撃情報や、駆け付けた警察の対応を踏まえ、コンサート運営会社として誠実に対応いたしました」と言及。

 そのうえで、痴漢行為の有無について、「終演後、第三者の目撃者(お客様)に任意でご協力頂き、警察立ち合いのもとで痴漢行為と疑われる事象は認められないという証言が提示されました」と否定した。

 また、女性のX投稿内容にも触れ、「弊社が関係各位と確認した事実関係と相違する部分が多々ございます」とし、公式サイトに詳細な反論を掲載。

 最後に「なお、SNS上で誤った事実を記載・拡散することは、当社のみならず、アーティスト、会場、その他関係者の信用を大きく損なう行為となります。そのため、看過できない誤情報の投稿および拡散については、今後、投稿の削除を求めるとともに、投稿者ならびに拡散者に対して、厳重に抗議してまいります」と、抗議の意を示している。

 同社側からの声明発表を受け、ENCOUNT編集部は被害を訴える女性に再度取材した。女性は痴漢行為の有無について、「警察の方からは『目撃者はいなかった』と聞いています。この目撃者というのは、(男性と一緒に来ていた)同行者の女性なのかなと思います。もしそうであればおかしいと感じました。それに、後日に話を聞けたとしても、ライブに集中している第三者の言葉だけをうのみにして、なかったと断言するのはおかしいです」と、自身の見解を示した。

 また、同社側は、女性が投稿で「犯人の言い分としては『胸触られたと思ったんなら思った時に声出せや』『オレは礼賛楽しみに来てんだから会場に戻せ』等」と書き込んだことについて、「当該の発言はなかった」と指摘している。

 これに対して女性は、被害後にライブ会場から出た際、その途中から警察到着まで一部を録音していたことを明かし、「『思った時に声を出せ』などの発言は心に残っていて記憶しています。なかったということはありえないです」と訴える。

 女性は同社側とやりとりできる状況にあるが、同社からは、後日になってから事実確認の連絡はなかったという。

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