子役出身の三浦透子、『ドライブ・マイ・カー』より大きかった人生の転機とは? 地元にいたら「今とはまったく違う道を歩んでいた」

日米共同制作ドラマ『HEART ATTACK』(3月20日よりFODにて配信、監督・丸山健志、八神隆治)で、寛一郎とともにW主演を務める三浦透子。6歳の時にサントリー「なっちゃん」のCMで注目を集め、『ドライブ・マイ・カー』ではヒロインとして世界の映画祭を席巻した。俳優として着実に歩みを進める三浦に、これまでのキャリアの転機や、最新作にかける思いを聞いた。

インタビューに応じた三浦透子【写真:増田美咲】
インタビューに応じた三浦透子【写真:増田美咲】

中学時代、札幌から上京…母親から「引っ越したい?」と聞かれて、「うん」

 日米共同制作ドラマ『HEART ATTACK』(3月20日よりFODにて配信、監督・丸山健志、八神隆治)で、寛一郎とともにW主演を務める三浦透子。6歳の時にサントリー「なっちゃん」のCMで注目を集め、『ドライブ・マイ・カー』ではヒロインとして世界の映画祭を席巻した。俳優として着実に歩みを進める三浦に、これまでのキャリアの転機や、最新作にかける思いを聞いた。(取材・文=平辻哲也)

 三浦にとって、『ドライブ・マイ・カー』は間違いなく大きな作品だったという。映画を通して多くの人に自身の存在を知ってもらう機会になり、仕事の幅も広がった。しかし、人生の「ターニングポイント」と問われると、それよりも東京に出てきた決断の方が大きいと語る。

「札幌で生まれ育ちましたが、中学の時に東京へ出てきました。自分にとって、それが大きな転機だったと感じています。当時は、北海道に住みながら芸能活動をしていましたが、本格的に活動できていたわけではなく、将来についても漠然としていました。そんな中で、東京へ行く選択肢が浮かんできたんです」

 しかし、「その決断に強い意志があったのかと聞かれると、『実はあまり分からない』」と笑う。

「母から『引っ越したい?』と聞かれ、『うん』と答えたことは覚えているのですが(笑)。飛行機に乗るのが面倒だったくらいの気持ちだったかもしれません。でも今振り返ると、札幌に住み続けていたら、今とはまったく違う道を歩んでいたんだろうなと思います」

 東京への移住は、彼女の家族の人生も大きく変えた。特に母の決断と支えがなければ、今の自分はなかったと振り返る。

「母も仕事を変えて、新しい土地で生活をスタートさせました。『こうしなさい』と言う人ではなく、常に『あなたはどうしたいの?』と聞いてくれる人だったんです。その時、私は『仕事がしたい』と思っていて、母に『こういう選択肢もあるけど、どう思う?』と聞かれ、『行きたいです』と答えました」

 その決断があったからこそ、現在の三浦透子がある。

 三浦にとって、『ドライブ・マイ・カー』は世界と繋がるきっかけとなった作品だ。第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞し、日本国内のみならず海外でも注目を浴びた。

「本当に多くの出会いをいただきました。濱口(竜介)監督との出会いもそうですし、共演したキャストの皆さん、海外の俳優の方々とも関わる機会がありました。撮影中は、役として関わるだけでなく、監督や共演者とじっくり話し、その人の人生に触れる時間がありました。それが、自分にとって大きな経験になったと感じています」

 一方で、この作品が自分のキャリアを大きく変えた実感は、そこまでないという。

「どうなんでしょうね……。正直、私はあまり分からないんです。むしろ、観てくださる方の方が、私の変化を感じ取っているのかもしれません」

『ドライブ・マイ・カー』では、主人公とともに旅をするサーブのドライバー役を演じた三浦。劇中で見せたマニュアル車の運転技術も話題になったが、現在の運転事情について尋ねると、「たまにですね」と控えめに答える。

「車は持っていないので、なかなか乗る機会がありません。でも、ドライブは好きなので、レンタカーを借りて運転することもあります」

 マニュアル車の運転について聞くと、「借りられるんですかね? 軽トラックとかなら行けるかもしれませんね」と笑顔を見せ、「久しく乗っていないので、今も運転できるのか試してみようかなと思っています。サーブをたまに見かけると、たまに見かけると、『おっ』となりますね。『私の車だ!』とまでは思わないですけど、懐かしい気持ちになります」と話す。

 俳優業だけでなく、歌手としても活躍する三浦。映画『天気の子』(19/新海誠監督)ではRADWIMPSによる主題歌のボーカリストとして参加し、昨年11月にはビルボードで念願の単独ライブを開催。3月には横浜と大阪でツアーライブも行った。

「歌と演技には違いがたくさんありますが、自分の体を使って表現するという意味では同じです。バンドメンバーの方々と見える景色を共有しながら、どんな音が聞こえたら気持ちいいだろうとか、どういう音が出したいとか、自分と対話しながら作っています」

 そして、最新作『HEART ATTACK』についても語ってくれた。本作は、超能力を持つ人々が自由と権利を訴えて闘うSF大作だが、三浦はこの作品の持つ「リアルさ」に注目してほしいという。

「スケール感のあるSF作品ですが、その中で描かれる人間関係ややり取りはとてもリアルです。遠い未来の話ではなく、『自分の身の回りでも起こり得るかもしれない』と思いながら観てもらえたら、より深く考えられる部分があるのではないかなと思います」

 自身にとって新たな挑戦となる『HEART ATTACK』。これまでのキャリアで培った経験が、どのように生かされているのか注目したい。

□三浦透子(みうら・とうこ)1996年生まれ、北海道出身。2002年「なっちゃん」のCMでデビュー。主な出演作は、主演映画『そばかす』(22/玉田真也監督)、『月子』(17/越川道夫監督)、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(22)、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22)、ドラマ『エルピス‐希望、あるいは災い‐』(22/カンテレ・フジテレビ系)など。第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』(21/濱口竜介監督)ではヒロインを演じ、第45回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。歌手としても活動しており、映画『天気の子』(19/新海誠監督)では主題歌にボーカリストとして参加し、同年、第70回NHK紅白歌合戦にも出演。昨年11月には初のワンマンライブ「三浦透子 at Billboard Live TOKYO 2024」を、今年3月には追加公演「三浦透子 at Billboard Live Tour 2025」として、大阪、横浜での公演を成功させた。

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