尾上右近、憧れの鏡獅子は「私の生きがい」 意気込みアピール「人生の中で一番宣伝していただきたい」
歌舞伎俳優の尾上右近が14日、東京・中央区の歌舞伎座で行われた松竹創業百三十周年「四月大歌舞伎『春興鏡獅子』」の取材会に出席。鏡獅子に憧れた理由や、上演にかけるこだわりを語った。

日常生活の判断もすべて鏡獅子が起点「ある種、宗教ですね(笑)」
歌舞伎俳優の尾上右近が14日、東京・中央区の歌舞伎座で行われた松竹創業百三十周年「四月大歌舞伎『春興鏡獅子』」の取材会に出席。鏡獅子に憧れた理由や、上演にかけるこだわりを語った。
これまでの愛車遍歴は50台以上…「車検に通したことがほとんどない」と語る歌手のクルマ愛(JAF Mate Onlineへ)
『春興鏡獅子』は新歌舞伎十八番のひとつで、九代目市川團十郎が明治26年(1893年)に初演した作品。正月の鏡開きの余興に、小姓の弥生(やよい)が将軍の前で踊りを披露し、飾られた獅子頭を手にすると獅子の精が乗り移るという物語。前半は弥生のあでやかな踊り、後半は石橋仕立ての勇壮な獅子の舞が特徴。1人の役者が娘と獅子の両方を踊り分ける。
右近の曽祖父で、九代目團十郎に導かれた六代目尾上菊五郎が継承し、現在まで受け継がれている。右近は3歳の頃に曽祖父・六代目菊五郎の『春興鏡獅子』の映像を見て魅了され、「鏡獅子は私の生きがいといっても過言ではない」というほど思いを込めてきた。「いつか歌舞伎座で鏡獅子が踊れる役者になる」ことを目標に掲げ、2015年には自主公演『研の會』第一回で鏡獅子を務めた。自主公演から10年経った25年4月に、歌舞伎座での鏡獅子が実現することとなった。
右近は取材会冒頭から、「今までの人生の中で、一番宣伝していただきたい公演です。それくらい力が入っています」と宣言。鏡獅子への熱い思いを抱いて取材に臨んだ。清元節宗家の家に生まれた右近は、曽祖父の鏡獅子を見て役者を志望。浄瑠璃方の名跡「清元栄寿太夫」を襲名し、歌舞伎と両立している。
初めて曽祖父の鏡獅子を見た時の様子について、「祖母の家で、寒い時期だったかな。情景的には西日が差す祖母の家で、カーペットのグレーの色も覚えています。そこで、『あなたのひいお爺さんの映像を見る?』と言われて見たのが初めて」と振り返った。「ひいお爺さんだと思って見るから、当然男性だと思っていた。でも女方の弥生の踊りで。ふくよかで、丸くて、たおやかで華麗で。その時に感じた弥生のイメージが、もう弥生そのものだと思うんです。とにかく柔らかな曲線的な美しさ。でも、まっすぐ。気取っていたり癖っぽさは本当になくて」と、曽祖父の弥生に魅了されたという。「獅子になって出てきた時には、すごく幽玄で可憐。獅子は神様の使いですが、まさに神々しい。厳かで人間とは思えないくらいインパクトがすごく強くて。猛り狂ったような凄まじさと生き様で、毛振りの力強さや気高さを感じた。(弥生との)ギャップがすごい」と魅力を語った。
「これが『ひいお爺ちゃんなんだ』ということが、インパクトとして強かったです。歌舞伎を見たのもその時が初めてだったので。『やりたい』『なりたい』『これになる!』と決めて、そこから清元の稽古と踊りの稽古を同時に始めたのが人生のルーツ。根本です」と思い返し、「全ての始まりだった。そういうものに出会えてよかったですね」と語った。
鏡獅子への憧れは日常生活にも影響しているといい、「人は朝起きてから寝るまで、さまざまな決断を迫られます。何時に起きるか、何時に出かけるか。今この瞬間も判断が続いています。それが『より良い方向に向かうように判断したい』と日常から思っています。その根本はやっぱり、『鏡獅子を踊った時にいい鏡獅子が踊れるように』という気持ちが、子どもの頃からずっとありました」と明かした。「だからある種の、宗教ですね(笑)。『神様のために』みたいな」と笑いを誘い、「いい鏡獅子を踊るために、『こういうことを我慢した方がいい。こういうことを自分から進んで頑張った方がいい』とか。そういう決断や判断は全部、鏡獅子に繋がっている。これは“お天道さま”に誓って言えることですね」と語った。
鏡獅子が好きすぎるが故に、今回はビジュアルポスターの構図や映り方も自身の中でイメージができ上がっていたという。また、弥生の衣装も新調。「僕が、『この色がいい』『この柄の大きさがいい』『ここは黒がいい。金糸がいい。銀糸がいい』と、もう細部に到るまで。完全に“僕の趣味”と申し上げたら失礼ですけど、『これがいい』というのを今回作っていただきました」とこだわり抜いた。
さらに「鏡獅子は、宮廷に伝わるお殿様の御衣裳の獅子が施してある手獅子を弥生が手にしたことによって、弥生に獅子が乗り移ります。手獅子は、それだけ魂が宿るような名品である必要がある」と語り、「それには、現代の“魂が宿るような腕を持っている人”に獅子を彫っていただく必要がある。仏陀様を彫る仏師の方にお願いして、今回、手獅子を作っていただきました」と明かした。また「大扇子や茶袱紗(ちゃぶくさ)なども、できる限り自腹で作って、自分の身体に一生懸命染みつかせています」と語った。
