スカパラ35周年、重ねてきたコラボに隠された“職人技”「採寸してスーツを作っている感覚です」
昨年、デビュー35周年を迎えた東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)が、今月19日にベストアルバム『NO BORDER HITS 2025→2001 ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』をリリースする。メンバーチェンジを繰り返しつつ、一線を走り続けたスカバンド。ENCOUNTはこの機に、バリトンサックスの谷中敦(以下、谷中)とトランペットのNARGO(ナーゴ)を取材した。インタビュー「前編」では、2人に同作に込めた思い、積み重ねてきたコラボ曲の制作エピソードを聞いている。

谷中敦、NARGOインタビュー「前編」
昨年、デビュー35周年を迎えた東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)が、今月19日にベストアルバム『NO BORDER HITS 2025→2001 ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』をリリースする。メンバーチェンジを繰り返しつつ、一線を走り続けたスカバンド。ENCOUNTはこの機に、バリトンサックスの谷中敦(以下、谷中)とトランペットのNARGO(ナーゴ)を取材した。インタビュー「前編」では、2人に同作に込めた思い、積み重ねてきたコラボ曲の制作エピソードを聞いている。(取材・文=よもつ)
1989年にデビューしたスカパラ。ジャマイカ発の「スカ」をベースに、様々な音楽を融合させた独自のサウンドを「トーキョースカ」と称し、日本の音楽シーンに躍り出た。その名を広めたのが、メンバーによる作曲、谷中の作詞でゲストボーカルを迎える「歌モノ」だ。2001~02年に発表された『めくれたオレンジ』(田島貴男)、『カナリヤ鳴く空』(チバユウスケ)、『美しく燃える森』(奥田民生)の「歌モノ」三部作は大ヒット。以降、多くのアーティストとコラボしてきた。『NO BORDER HITS 2025→2001』では、歌モノ中心に全51曲を収録、その歴史を振り返っている。
NARGO「ドラムの茂木欣一が、コンセプトから全ての曲順も考えました。一番新しい曲から過去にさかのぼる構成は、僕らの成長の記録をたどるようで、ナイスアイディアだと思いました。写真を見ているような、その時々の空気感が詰まっています」
同作は、スカパラが掲げる「NO BORDER」の精神を象徴した『Paradise Has No Border』で始まる。「音楽が鳴る場所はパラダイスで、そこにボーダーはない」。その思いが込められた代名詞的な楽曲だ。同曲では、志村けんさん、高橋一生、さかなクンら多彩な著名人とコラボしてきたが、今回も豪華なメンバーが集結。過去にコラボや共演したことのある“スカパラファミリー”からは、田島、奥田、横山裕(SUPER EIGHT)、石原慎也(Saucy Dog)、長屋晴子(緑黄色社会)、さかなクン。そこにイイカワケンと満(共にHEY-SMITH)、浜野謙太(在日ファンク)という手練れの仲間が加わっている。
NARGO「横山君のトランペットは、本当に温かみもあって味のあるいい音で、昔から『良いな』と思っていました。SUPER EIGHTとは何度か共演しているけど、トランペットだけ吹きに来てくれるのは特別ですね。(イイカワケンとの)トランペットソロのバトルは別々に収録しました。僕が後攻で“受け”ですが、収録は僕から先にしました。『どう来るかな』って想像しながら吹きましたけど、素晴らしい完璧なソロを吹いてくれました」
さらに、トランペットと声の出演で、俳優・渡辺謙も参加している。
NARGO「これまでお会いしたことはなかったのですが、渡辺謙さんがトランペットをされているのをテレビで知り、『NO BORDERの精神の象徴になってほしい』と、お声かけさせてもらいました。」
ゲストも“ノーボーダー”なスカパラだが、近年では若い世代との共演も多い。
谷中「僕がいろんな人と仲良くするのが好きなので、フェスなどで仲良くなることが多いですね。『いつか一緒にやりたいです』とおっしゃってくれる方もいて。『笑っていいとも!』じゃないですけど、『僕らの友達の友達はみんな友達』みたいな感覚ですね(笑)。昨年共演した宮崎朝子ちゃん(SHISHAMO)も、『ずっと(共演が)夢だった』とおしゃっていましたが、素晴らしい歌を歌ってくれましたね」
そして、実現していく歌モノは、その世界観が毎回ゲストのイメージにピッタリと合っている。背景には「職人技」があった。
NARGO「(コラボ)曲をご本人に聴いていただき、それからキー設定をします。どのキーにするか半音ずつ全部試します。一番高い音、一番ヒットする音程はどこか、『ここからここの範囲が一番いい』という仮設定をして、そこから半音違いを詰めていく。採寸してスーツを作っている感覚ですね」

谷中の“歌モノ”作詞法「歌う人の顔を思い浮かべながら」
谷中「仮縫いだよね」
NARGO「まさにそうですね。半音違うだけで声の張り方が全然変わります。声が一番生きる音域を設定したら、そこから谷中さんが歌詞を書く」
谷中「歌詞を書く時は(ゲストの持ち歌を)一切参照せずに、歌う人の顔を思い浮かべながら書いてます。ちょっとした言い回しや、語尾の違いとかで本人らしさが出せるものなので、最近はそういうところも工夫できるようになりましたね」
ラブソングにするか、応援ソングにするかという曲の方向性も谷中が決めるという。
谷中「みんなに意見をもらいながらですが、基本的には任せていただいています。お題があると書きやすいですね。例えば『教えてウロボロス feat.宮崎朝子(SHISHAMO)』は『離婚弁護士スパイダー』(日本テレビ系)というドラマの主題歌だったので、初めて離婚をテーマに女性の立場から書きました。想像するしかないんですけど、『♪傷ついてほしい せめて同じように』というフレーズが、女性スタッフに『良く分かる』と言われました。朝子ちゃんも気に入ってくれましたね。そういうのを想像しながら書くのは楽しいですね」

他にも、『S.O.S. [Share One Sorrow] feat.Tokyo Tanaka & Jean-Ken Johnny』(MAN WITH A MISSION)は、コロナ禍で「皆で共通して悲しいという状況に悩んでいるのに、いがみ合っているのはなんでだろう」という疑問から、「Share One Sorrow(一つの悲しみを共有する)」というコンセプトが先に決まり、作詞したという。
作詞にかける期間は「長くても2か月程」だというが、期限の数日前に曲が完成し、1、2日で書き上げることもある。
谷中「『ずっと feat.Crystal Kay』とか『ちえのわ feat.峯田和伸』は2時間くらいで書いた覚えがありますね。桜井君(桜井和寿)の『リボン』や宮本君(宮本浩次)の『明日以外すべて燃やせ』は、時間はあったけど進みが遅かったですね。自分なりにむちゃくちゃ悩みました。2人に対して自分の思い入れが特に強すぎたのかもしれない。でも、いいものができました」
毎回、オーダーメイドで作られる「歌モノ」。インタビュー「後編」では、歌モノへの思いや、2人の音楽ルーツについて聞いている。
□東京スカパラダイスオーケストラ 1989年デビュー。スカをベースにした独自のサウンドで、日本を代表するスカバンド。幾度のメンバーチェンジをへて、現在はNARGO、北原雅彦、GAMO、谷中敦、川上つよし、沖祐市、大森はじめ、加藤隆志、茂木欣一の9人。2001年以降、メンバーによる作曲、谷中敦による作詞でゲストボーカルを迎える”歌モノ”を発表。これまで世界32か国で公演を果たし、海外の音楽フェスにも多数出演している。13年、米国最大級の音楽フェス「コーチェラ」で日本人アーティストでは初めてメインステージに立った。21年、東京オリンピックの閉会式に出演した。
