「550円で出してるのに」 ネット驚愕の激安夕食…バズっても「あんまり人がこない」ワケは?

何かと物の値段が上がっている昨今で、「うちの宿の夕食550円」に、ネットがどよめいた。アジやヒラメ、タコなどの具だくさん海鮮丼に、蒸しガキ、あら汁に小鉢が何品も……。豪華な定食はSNSで「こんなに美味しそうなのに安過ぎます…!」「東京なら5500円コース」と驚きを呼んでいる。長崎・五島列島にあるローカルな宿泊施設のメニューだという。「算数が苦手なので」と謙遜する店主に、激安価格の秘密について直撃した。

長崎・中通島の新上五島町で個人経営【写真:本人提供】
長崎・中通島の新上五島町で個人経営【写真:本人提供】

長崎・五島列島の1つである中通島の新上五島町で民宿を経営

 何かと物の値段が上がっている昨今で、「うちの宿の夕食550円」に、ネットがどよめいた。アジやヒラメ、タコなどの具だくさん海鮮丼に、蒸しガキ、あら汁に小鉢が何品も……。豪華な定食はSNSで「こんなに美味しそうなのに安過ぎます…!」「東京なら5500円コース」と驚きを呼んでいる。長崎・五島列島にあるローカルな宿泊施設のメニューだという。「算数が苦手なので」と謙遜する店主に、激安価格の秘密について直撃した。

「うちの宿、離島なので夕食550円で出してるのにあんまり人がきません」

 ヒラメ、アジ、タイ、タコ、明太子の海鮮丼と蒸しガキ、ニンジンの葉っぱのサラダ、香の物、タイのあら汁。これで550円だ。自然食材のボリューム満点で、見るからにお腹が空いてくる。ラーメンは「1000円の壁」と言われるほど飲食業界が厳しい昨今、衝撃の価格設定だ。

 ちょっぴり自虐を交えた投稿者は、ねだ(@happynedaland)さん。長崎・五島列島の1つである中通島の新上五島町で民宿を経営。「『焦がれ香(こがれこう)』というカフェ併設の宿泊施設をやっております。宿泊の方は自分がやっていますが、カフェの方はヒゲのマスターと2人で運営しています」と自己紹介を教えてくれた。もともとは、ねださんが知り合いだった宮城・仙台市のカフェがコロナ禍で閉店してしまったことを受け、縁のあった中通島で再建しようという経緯があるという。

 島生活のロケーション。「中通島は長崎から80キロほど西にある、国内ではわりと大きな島です。人口も1万3000人ほどいると言われております。当店は有川港という港から徒歩7分くらいの場所にありますので、旅の拠点としてもご利用いただけます。もちろん海は近いです。徒歩3分で海岸も砂浜もございます。近くにスーパーもございますので、ぱっと見では“島感”がなかったりもするのですが、それでもやっぱりたくさんの素晴らしい景色に囲まれているなぁとつくづく思います」という。

徒歩5分で海の絶景が広がる【写真:本人提供】
徒歩5分で海の絶景が広がる【写真:本人提供】

秘密の一部…「僕の人件費はゼロです(笑)」

 これだけの安さの秘訣(ひけつ)とは? その答えは「地元のスーパーや市場で地場野菜・地場魚が、季節ごとに安く売られているからです。地元のものを仕入れているからです」。地元産の力強さがあるとのことだ。

 魚は近くのスーパーや朝市に出向き、安く上がっている魚をチョイス。「漁師さんや料理人さんに手ほどきを教えてもらいながら、自分でさばいで調理しております。こうすることで価格を抑えています。今回のメニューですと、明太子とタコはもらい物で、田舎あるあるですが、よく島の人たちから食材が届きます(笑)。それも島ならではかなと思うので、出させていただいております。なので、全く同じメニューでは提供できません」。日替わりで、季節に合わせて、“一期一会”の献立が楽しめるというわけだ。

「ちなみに、自分は高IQ団体に所属しているのですが、工夫したり組み合わせたりするのがわりかし得意なので、550円で料理を作れている部分もあるかもしれません。あと、個人でやっていて自分の人件費は加算されておりません(笑)。そこが一番大きいかもですね」。確かに、人件費の課題を解決していることも要因だろう。

 もともとは関東に約20年住んでいたねださん。昨年にこの島に移住したばかりだ。島生活は、目からウロコの経験ばかり。「関東では数千円で売られているようなタイが、ここでは数百円で売られていたりしていて、本当に驚きました。その驚きを観光客の人たちにも味わってもらいたくて、思い切って価格を下げています。最近の観光地は、『観光地価格』などと呼ばれて、本来の価格よりかえって高くなったりしてしまっているのですが、本来その土地のものを驚きの価格で味わったり体験したりできるのが観光の魅力だと、自分は考えています」。地元ならではのよさを届けたいという、熱い思いを語る。

 ねださん自身の暮らしはつつましく、「僕の人件費はゼロです(笑)。ただ、どっちにしろ自分もご飯を食べるので、今まで自炊していたものをお客さんに出して、調理の際の切れ端や捨てていた部分を食べるような生活をしています(笑)。個人でやっている民宿ならではのことかもしれませんが、まあ広告費差し引いて出していると思えばそんなに気になりません」とちょっと苦笑い。「余談ですが、隣の島の魚市場では毎月第一、第三土曜日に、500円で刺身のせ放題の朝市が開催されていまして、そちらも実は人気ですので、ぜひ一度行ってみてください。海上がしけるとお刺身が出せないこともあるかもしれませんが、本当に五島の魚はおいしいです」。五島の魚にほれ込んでいる様子だ。

「夕食550円」の絶品メニューに衝撃【写真:本人提供】
「夕食550円」の絶品メニューに衝撃【写真:本人提供】

「物価高や観光地価格化に対するみんなのストレスみたいなものが、やはりたまっていたんだなぁと思いました」

 激安の夕食は話題をさらい、30万件近い“いいね”を集めており、「めちゃくちゃ凄いだろ!これは」「安すぎます 3000円は取って下さい」「築地で食ったら6000円くらいかかりそう」「倍でも安すぎると思います」「毎日行きたいです」「こんなに美味しそうなのに安過ぎます…!」と驚嘆の声が続々届いている。

 一連の反響を受けて、「ありがたい限りでございます。今ホームページやECなどの構築をしている最中だったので、それが終わってからの方がよかったですけど(笑)。物価高や観光地価格化に対するみんなのストレスみたいなものが、やはりたまっていたんだなぁと思いました。自分もその1人ですので」と実感を語る。

 地方での個人経営には苦労も多いが、やりがいもたくさんあるという。ねださんは“競艇場を作る夢”など、島の今後の振興に思いをはせているといい、「こんなにバズっても、1人で対応しきれないほどは忙しくならないのは、やはり離島ならではだなぁと思いました(笑)。人口問題がこの島にとっても大きなテーマでして、自分の活動を通じて、何か盛り上げていけたりしたらいいなぁと思っております。できるか分かりませんが、550円飯やってる店を増やしたいです(笑)。『この島どうかしてる!!??』みたいなイメージで有名になれば、人いっぱい来てくれるかなみたいな……。アーティスト村とか、工房郡とかでもいいのですが、何か目的地として存在感のあるものを島に作れたらなと思っています」と前を見据えている。

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