堤幸彦監督が語る、仲間由紀恵の魅力 沖縄舞台の映画で10年ぶりタッグ「リアルな魅力を生かしたかった」

堤幸彦監督が10年ぶりに俳優・仲間由紀恵とタッグを組んだのが、映画『STEP OUT にーにーのニライカナイ』(3月7日沖縄県先行公開、3月14日新宿ピカデリー他全国公開)だ。『TRICK』シリーズや舞台『テンペスト』など数々の作品で名コンビを見せた2人が、仲間の故郷・沖縄を舞台に新たな物語を紡いだ。堤監督が語る、仲間の魅力とは……。

10年ぶりに仲間由紀恵とタッグを組んだ堤幸彦監督【写真:増田美咲】
10年ぶりに仲間由紀恵とタッグを組んだ堤幸彦監督【写真:増田美咲】

映画『STEP OUT にーにーのニライカナイ』で10年ぶりタッグ

 堤幸彦監督が10年ぶりに俳優・仲間由紀恵とタッグを組んだのが、映画『STEP OUT にーにーのニライカナイ』(3月7日沖縄県先行公開、3月14日新宿ピカデリー他全国公開)だ。『TRICK』シリーズや舞台『テンペスト』など数々の作品で名コンビを見せた2人が、仲間の故郷・沖縄を舞台に新たな物語を紡いだ。堤監督が語る、仲間の魅力とは……。(取材・文=平辻哲也)

 ドラマ3シーズン、スペシャル3本、劇場版4本が制作された『TRICK』シリーズ(2000~14年)、江戸時代末期の琉球王国を舞台にした舞台『テンペスト』(11年)でタッグを組んできた堤監督&仲間。再タッグは『天空の蜂』(15年)以来10年ぶりになる。

 本作は、音楽やダンスが生活に溶け込んでいる沖縄を舞台に、母と妹と3人で暮らす少年、照屋踊(Soul)がダンススクールで魅力的な少女リサ(伊波れいり)と出会い、ダンスオーディション出場を目指す瑞々しい青春ストーリー。仲間は、息子・踊と、人付き合いが苦手な娘・舞(又吉伶音)を、女手ひとつで育てる母・朱音を演じた。

「私はプライベートで女優と親しくするタイプではありません。そのため、10年ぶりの再会でしたが、まったく変わらない印象でした。会えばすぐに、昨日のことのように話せるし、彼女の演技は相変わらず完璧でした」と堤監督。

 本作は「沖縄ありき」で企画がスタート。5年前から沖縄市出身の35歳の監督・平一紘氏と交流があり、彼の作品に感銘を受けたことがきっかけだった。

「沖縄で何かを作ることは私にとって長年のテーマでした。沖縄は戦争、米軍基地といった負の側面で語られることが多いのですが、たくさんのアーティストを輩出しており、エンタメに夢を持った若者が少なくありません。そんな今の沖縄の姿を描いてみたいと思っていました」

 物語を作るため、沖縄市内でシナリオハンティングした。

「繁華街を歩いていると、ダンススタジオを見つけました。そこでは、風のように舞う子どもたちがいて、『これは映画にすべき作品だ』と直感しました。それで、子どもたちの純粋な情熱を描くことがテーマになりました。それを取り巻く沖縄の独特な家族の風景や社会情勢の中で、純粋さがどう映るのかを考えました。シナリオハンティングから決めるというのは、あまり例のないことです」

 少年少女はオーディションで決める中、母親役には仲間をオファーした。

「プロデューサーを通じてお願いしました。沖縄出身の女優として、お仕事をたくさんされてきましたが、彼女が持つリアルな魅力を生かしたかったです。衣装や髪型、立ち振る舞いも沖縄の女性をリアルに演じてもらえました。彼女は国民的大女優でありながら、地に足のついた人生観を持つ人です。背伸びせず、等身大の姿が魅力的で、どんな役でも自然体に見えるのは、彼女ならではの才能でしょう」

 映画のメイン舞台は沖縄市コザ。仲間は浦添市の出身で、地域的な差には配慮していたという。

「彼女によると、沖縄にもさまざまな地域性があるそうです。北部と南部でも言葉の違いなどもあるようですが、僕にはまったく分かりません。彼女にとって、演じること自体が一つの挑戦だったそうです。しかし、沖縄の観客が違和感を持たないよう、細部までこだわり抜いて演じてくれました。特に、お母さんと息子が海岸で語り合うシーンは、海風と太陽の光が相まって、親子の愛情が際立つ場面になりました」

 本作では平監督が共同監督として名を連ねる。

「連続ドラマでは複数の監督が担当することがあります。今回、私は大人のパートを、平監督には少年少女のパートを撮ってもらいました。言葉の問題や生活様式の違いなど、東京の私には分からない部分も多いので、地元に詳しい彼に任せることが大きな意味を持ちました。平監督は一緒にワイワイ言いながら作るタイプで、とても独自性がありながら、協調性もあるので、共同作業がスムーズでした」と振り返る。

 沖縄を舞台にしたダンス映画を撮った意味についてはこう語る。

「観光地としての沖縄ではなく、そこに根付いた暮らしを描きたかったです。夢を追うこと、実現することの難しさ、そしてその過程の大切さを感じてもらえたらうれしいです。沖縄の役者は平監督のネットワークで選びました。Soulくんや又吉伶音さんはオーディションで選ばれましたが、結果として沖縄アクターズスクール出身者が多く、その層の厚さを改めて感じました。ダンスをしている子たちは、リズム感や動きのセンスがあるので、演技に対しても勘が鋭い。未経験の子どもたちがすばらしい演技を見せてくれました」。今年70歳を迎えるヒットメーカーは若い才能を間近に見て、大いに刺激を受けたようだ。

□堤幸彦(つつみ・ゆきひこ)1955年11月3日生まれ。愛知県出身。88年、森田芳光総監督のオムニバス映画『バカヤロー! 私、怒ってます』の「英語がなんだ」で映画監督デビュー。テレビドラマ『金田一少年の事件簿』(日本テレビ)、『TRICK』(テレビ朝日)シリーズ、『SPEC』(TBS)シリーズは映画化もされ、ドラマと映画それぞれでヒットさせた。2015年には『イニシエーション・ラブ』、『天空の蜂』で第40回記念報知映画賞・監督賞を受賞。その他の映画作品は『明日の記憶』(06年)、『20世紀少年 三部作』(08~09年)、『人魚の眠る家』(18年)、『ファーストラヴ』(21年)、『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』(21年)など。近年では『夏目アラタの結婚』『私にふさわしいホテル』(共に24年)。最新作はDREAMS COME TRUEの中村正人が製作総指揮を務めた『Page30』(4月11日公開)や『THE KILLER GOLDFISH』(5月2日公開)などがある。

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