「スタッフはほとんど見かけないが…」 外国人が殺到のホテル、受付はロボットでも“日本ならではのおもてなし”で魅了

日本を訪れる外国人観光客の間で、ユニークな体験ができると話題になっているホテルがある。HISホテルホールディングスが運営する「変なホテル」だ。ホテルのフロント業務を恐竜や人型ロボットが担当し、最新テクノロジーを駆使したサービスを提供することで、旅行者に新鮮な驚きを与えている。現在、日本国内に20店舗、海外にも2店舗を展開し、宿泊客から高い評価を受けている。人気の理由を探るため、「変なホテル東京 浅草田原町」の支配人で、6施設を統括している伊藤史樹氏に話を聞いた。

世界初の光のホログラムを導入した「変なホテル東京 浅草田原町」の受付【写真:ENCOUNT編集部】
世界初の光のホログラムを導入した「変なホテル東京 浅草田原町」の受付【写真:ENCOUNT編集部】

宿泊客の8割が外国人

 日本を訪れる外国人観光客の間で、ユニークな体験ができると話題になっているホテルがある。HISホテルホールディングスが運営する「変なホテル」だ。ホテルのフロント業務を恐竜や人型ロボットが担当し、最新テクノロジーを駆使したサービスを提供することで、旅行者に新鮮な驚きを与えている。現在、日本国内に20店舗、海外にも2店舗を展開し、宿泊客から高い評価を受けている。人気の理由を探るため、「変なホテル東京 浅草田原町」の支配人で、6施設を統括している伊藤史樹氏に話を聞いた。

「変なホテル」は、「変わり続けることを約束するホテル」というブランドコンセプトのもと、2015年に1号店を開業。19年にオープンした「変なホテル東京 浅草田原町」は、東京メトロ・田原町駅から徒歩3分、浅草駅から徒歩9分という好立地で、成田空港や羽田空港からのアクセスも便利だ。全217室のホテルで、一般的な客室のほかパンダスイートルームもある。1階にはコンビニも入り、気軽に日本の食品や飲み物を購入できるのも宿泊客のうれしいポイントとなっている。

 同チェーンの最大の特徴は、フロントにある。世界初のロボットが働くホテルとしてギネス世界記録(R)に認定。「変なホテル東京 浅草田原町」では、世界初の光のホログラムを導入し、侍や執事、恐竜のキャラクターが宿泊者をお出迎えしている。伊藤氏は「ワクワク感ですよね。非日常を演出するには1番いいものかなと思います」と話す。

 フロントに人を置かないのは、業務の効率化を図る狙いもあった。

「旅行業界でもサービス業に従事する人材が減少しています。フロント業務は常に忙しいわけではなく、例えばチェックイン開始の午後3時から4時は混雑しますが、それ以外の時間帯は手持ち無沙汰になることもあります。そういうところをロボットや光のホログラムを活用することによって、他の業務や新しい取り組みに時間を充てることができます。そういう意味でも非常にメリットが大きいですね」

 一方、外国人宿泊客にとっては、日本のユニークなテクノロジーの一つになり、同ホテルを選ぶ魅力の一つとなる。セルフチェックイン、チェックアウトで多言語に対応。日本語が話せなくても安心して利用することが可能だ。伊藤氏は「ホテルとしてこのような取り組みを行う例は少ない中で、まずは海外のお客様のニーズに応えていくところも、変なホテルならではの取り組み」とアピールした。「変なホテル東京 浅草田原町」では、宿泊客限定で屋上から東京スカイツリーを一望できる特典もある。また、エレベーター内の案内板では雷門や恐竜のシルエットがデザインされており、「写真を撮られる方も多い」と、撮影スポットの一つとなっていることを明かした。

 業績は好調だ。同ホテルでは宿泊客の8割が外国人。外国語の口コミサイトには、「レセプションのホログラムは面白かった。とてもいい経験だった」「恐竜のチェックインは非常に簡単でした」「セルフチェックイン/アウトは早くて便利」「屋上の景色が素晴らしい」「シャワーの水圧もよく、長時間の移動の後のベッドもよかった」「このホテルに泊まるのは今回で4回目です」「スタッフはほとんど見かけないが、サポートが必要な時は、電話で人間の助けを求めることができる」「たくさんある洗濯機の状況がすぐにテレビに映し出されるのは実用的」「すべてが最高。部屋は清潔で新しく改装されていた」など好意的なコメントが寄せられてる。

 物珍しさだけでない。コンセプトの通り、“変化し続けている”ことも人気の理由だ。例えば、ベッドの硬さや薄さ。外国人宿泊客からの意見も参考に、「昨年、関東エリアのいくつかの施設で新しいベッドマットレスに入れ替えました」と一新した。また、海外からの観光客は多様な国籍・文化背景を持つ。特別な要望があれば、可能な限り、配慮している。

「お部屋の広さのこだわりがあったりとか、お部屋番号そのものに対するこだわりがあったりします。国によって部屋番号の数を足して何になるとあまり良くないから、違う部屋がいいとか、中国のお客様だと角部屋はあまり良くないから、逆に真ん中の方にしてほしいという声もある。お客様からリクエストいただいて、日々学びや柔軟な対応につながっているところはあります」。受付はロボットでも、サービスは日本ならではのおもてなしを提供。それが多くのリピーター獲得につながっているという。

 オープン後は順調な船出とは言えなかった。すぐにコロナ禍になり、宿泊需要は激減した。不運に見舞われたが、伊藤氏が掲げたのは“逆転の発想”だった。

「コロナ禍だから(挑戦を)やめるのではなく、コロナ禍でも走り続けようというのは、我々の精神としてもずっと持ち続けているところはありました。お部屋も生き物なので、使われないと痛んでいっちゃうところがあります。売り上げ、利益というところではなくて、いかに宿泊していただけるかを考えて、連泊パックを作ったりしながら、まずは利用していただくことを重視しました。そのタイミングで利用していただいて満足度が上がれば、コロナ禍が明けてからも必ず戻ってきていただける自信がありました」

 空いた時間を生かし、複数の企業とコラボしたコンセプトルームの営業を開始。この時期に行った施策が軌道に乗り、現在はグループとしてはホテル業界最大級となる54企画目のコンセプトルームが実現している。「コロナ禍はピンチでもあり、チャンスでもあった時期かなと思います」と振り返った。

 インバウンドの増加は、勢いが止まりそうない。各ホテルがしのぎを削る中、独特の個性で注目される「変なホテル」。今後は100店舗展開を視野に入れ、新たなサービスの開発や市場開拓を進めていく方針だ。

次のページへ (2/2) 【写真】東京スカイツリーを一望できる屋上からの眺め
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