「桜井玲香といえばコレ!といえる役を作りたい」…乃木坂46を卒業し6年の現在地、新作舞台は罪を重ねるヒロイン役
俳優・モデルの桜井玲香が10日より東京・有楽町のシアタークリエで上演するミュージカル『ボニー&クライド』(上演台本・演出:瀬戸山美咲、4月17日まで)で伝説的なギャングカップルのヒロインを務める。2019年に乃木坂46を卒業し6年。コンスタントに舞台に立つ、俳優としての気持ちの変化やターニングポイントを語った。

ミュージカル『ボニー&クライド』で実在のギャングカップルに
俳優・モデルの桜井玲香が10日より東京・有楽町のシアタークリエで上演するミュージカル『ボニー&クライド』(上演台本・演出:瀬戸山美咲、4月17日まで)で伝説的なギャングカップルのヒロインを務める。2019年に乃木坂46を卒業し6年。コンスタントに舞台に立つ、俳優としての気持ちの変化やターニングポイントを語った。(取材・文=大宮高史)
1930年代の米国で実在したギャングカップル、クライド・バロウとボニー・パーカー。その人生と壮絶な最期は1967年の映画『俺たちに明日はない』(邦題)でドラマチックに描かれ、その後も映像化や舞台化されてきた。本作のミュージカルは2011年に米ブロードウェイで開幕し、翌12年に日本でも上演、ブラッシュアップを経て22年には英ロンドンで再演された。23年には宝塚歌劇団でも上演されたが、今回は瀬戸山氏が上演台本・演出を手掛ける新演出版となる。桜井はヒロインのボニー(海乃美月とダブルキャスト)を演じ、映画スターを夢見ながらも、運命的に出会い恋に落ちるクライド(柿澤勇人/矢崎広のダブルキャスト)とともに犯罪に手を染めていく。
「このストーリーを知った時、私自身、不思議と『格好いいかも』と思ってしまいました。犯罪を重ねていくのに、ボニーとクライドはあの時代の人々から支持されるんですよ。彼女はスターになりたいという夢を持ちつつ頭も良くて、冷静で現実的な面もあります。夢があるのに田舎町から出られない現実に直面してしまう。その葛藤には共感する部分もありました」
製作発表の場で、桜井のボニー像を瀬戸山氏は「とてもボニーらしく、もがいて生きている強さが魅力的」と発言。この言葉に桜井自身、より気合が入った感じだ。
「光栄でしたし、私の解釈が間違っていなかったと励みになりました。舞台ではクライドと対等にやり合う場面もありますが、色気も大切にして強くて格好いいボニーを追求していくつもりです」

乃木坂46時代から多彩な舞台に「『桜井玲香といえばコレ!』といえる役を」
元アイドルグループのキャプテンらしく、ハキハキと答える姿が印象的だ。そんな桜井は2011年に開催された乃木坂46の第1期オーディションに合格し、芸能界入り。翌12年にシングル『ぐるぐるカーテン』でCDデビュー後、初代キャプテンを務めた。一方で、14年に『Mr. カミナリ』で初舞台を踏むと、その後も次々に舞台に挑戦。シリアスなストレートプレイの『すべての犬は天国へ行く』(15年)、落語家役で徹底したアドリブで笑わせた『じょしらく弐~時かけそば~』(16年)、萩尾望都の名作漫画の舞台化『半神』(18年)などに出演し、ステップアップしてきた。だが“舞台裏”では、いつも高いハードルに苦闘していたという。
「当時は経験も豊富なわけではありませんでしたし、もがいていた記憶ばかりです。それでも周りの皆さんが私にたくさん時間をかけて鍛えてくださって、『必要とされているんだから、自立しないと』という自覚が芽生えていきました」
乃木坂46のキャプテンを任されたものの、「昔からずっと『競争心がない』って言われていました」と自他ともに認める控え目な性格だった。それが舞台経験を重ねることで気持ちが前向きになり、2019年に卒業後もコンスタントに舞台に立ち続けた。
「グループで活動しているときは、チームで引っ張ってもらえる環境もありました。でも1人の俳優としては、『(役を)つかみ取りにいくぞ!』と気概を見せないと選んでいただけないと思っています。ボニーのようにもがいて前に進む感じで、心が強くなったかもしれません」
ストレートプレイ、コメディー、ファンタジーなど、さまざまなジャンルに挑み、着実に引き出しを増やしている。
「2年前にミュージカルコメディー『ファースト・デート』でケイシーという自由奔放なヒロインをやらせていただきました。自分なりに人物造形を変えてみようと、金髪でイケイケな性格のギャルのような女性として演じてみたんです。また、昭和の音楽界が舞台になった『ザ・パンデモニアム・ロック・ショー』(2021年)に出演した時は、自分が生まれる前の文化をたくさん知れて、毎日ウキウキしながらお芝居をしていました。ほかにも、フランス人になったり、革命があったり……今とは縁遠い時代設定の舞台に出演すると、気持ちも燃えます。慣れない衣装さばきで苦戦するのも、いい経験になります」
ミュージカルに対する思いは深まり、今作も創意工夫を凝らすつもりだ。
「私なりのスパイスを利かせて、役作りを認めていただけたときは俳優冥利(みょうり)に尽きます。だから今回も、普段出し切れてない色気や格好よさを解き放っていきたい。ボニーのような気の強い役って、やっていて楽しいし、溜めているエネルギーを発散します!」と言葉に力を込めた。
そして、「『桜井玲香といえばコレ!』といえる役を作りたいです」と瞳をキラリ。
これから挑む、20世紀に名を残したアンチヒロインがまさにハマり役になるかもしれない。劇場では変幻自在に、どんな時代でもたくましく魅力的な生き様を見せていく。
□桜井玲香(さくらい・れいか) 1994年5月16日生まれ、神奈川県出身。2011年に乃木坂46の1期生オーディションに合格。グループ在籍中には、舞台『すべての犬は天国に行く』『じょしらく弐~時かけそば~』『嫌われ松子の一生』『半神』などに出演。2019年に卒業後は、『ダンス オブ ヴァンパイア』(19年)、『ゴースト』(21年)、『DOROTHY(ドロシー)~オズの魔法使い~』(22年)、『ジキル&ハイド』(23年)、『この世界の片隅に』(24年)など多数のミュージカルに出演している。
ヘアメイク:高橋里帆(Happy Star)
スタイリスト:山本杏那
