日本は“生死”の議論「タブー扱いされていることが多い」 TBS記者、安楽死は「議論すべき」

TBS系『news23』(月~木曜午後11時、金曜午後11時58分)のメインキャスターである小川彩佳が、9日に都内で開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2025」のトーク付き特別試写会に出席。イベントでは、ドキュメンタリー映画『「安楽死」を考える スイスで最期を迎えた日本人 生きる道を選んだ難病患者』の監督を務めたTBS系『報道特集』記者の西村匡史氏と共に、安楽死に対する考え、メディアとしての発信について語った。

特別試写会に登壇したTBS記者の西村匡史氏と小川彩佳【写真:ENCOUNT編集部】
特別試写会に登壇したTBS記者の西村匡史氏と小川彩佳【写真:ENCOUNT編集部】

迎田さんは22年、安楽死を実施するためスイスに渡った

 TBS系『news23』(月~木曜午後11時、金曜午後11時58分)のメインキャスターである小川彩佳が、9日に都内で開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2025」のトーク付き特別試写会に出席。イベントでは、ドキュメンタリー映画『「安楽死」を考える スイスで最期を迎えた日本人 生きる道を選んだ難病患者』の監督を務めたTBS系『報道特集』記者の西村匡史氏と共に、安楽死に対する考え、メディアとしての発信について語った。

 本作は、23年11月から24年10月に国内最大級のニュースサービス「LINE NEWS」に配信された400万本を超える記事の中から、社会課題を工夫して伝えた記事を表彰する<LINE ジャーナリズム賞>年間大賞に選ばれた『「安楽死」を考える スイスで最期を迎えた日本人 生きる道を選んだ難病患者』。進行性の難病、パーキンソン病を患い、安楽死するためにスイスに渡った迎田良子さん(64)に焦点を当てたドキュメンタリー映画だ。

 迎田さんは22年、安楽死を実施するためスイスに渡った。西村氏は、迎田さんが亡くなる2日前、迎田さんが昔の恋人と訪れた思い出のレストランで食事をしている際、突然パーキンソン病が発症するという衝撃的な出来事を振り返った。

「前菜がきて、『本当においしい。すごく幸せ』って言って、メインがくる前に急に彼女の顔が真っ青になって、手が震えだして、『ごめん、ちょっと今無理だわ』と。パーキンソン病の症状なんです。急にくるんですよね。メインの料理が来る前に、本当に真っ青になって『ちょっと食べられないから、悪いけど休んでいい?』って言って。急激に悪くなる症状を目の当たりにしたことがなかったので。それまで他人から見ると元気に見える場面しかなかったと思うんですけれども、その瞬間、自分がそういう風に思っていた傲慢さも感じたし、本当にキツい中での彼女なりの選択だったんだなと思えた瞬間でした」

 トークを展開する中、小川は西村氏に「安楽死を是とする議論のきっかけになってしまうのはどうなのか……とか、そうした思いもあったと思うんですけれども、安楽死の議論に映画が直結していくことについてはどのように感じますか」と質問。

 西村氏は「安楽死という現実があって、ヨーロッパでは認められている国もあります。もちろん法的で認められてない国がほとんどなんですけど、やっぱり考えないで生きたいっていう気持ちは分かる。でも僕は考えて議論すべきだと思っています。なのでこの映画を通して安楽死について考えてもらうことは自分の意図でもあり、それはありがたいことだと思っています」と持論を展開した。

 また、「自分の周りに介護してる家族がいると、こんなに迷惑かけたんだったら自分は死んだ方がいいなって、特に日本人は思いがち。そのリスクを考えた場合には、非常に大きなリスクがあるので、僕は安楽死に関しては考えて議論すべきだと思っています。それが正しいか悪いかってことは判断がつかないし、未だに結論は出せない、これからも出せないかもしれないと思うんですけれども。そういうリスクが常にあるっていうことを忘れちゃいけない」と伝えた。

 イギリスの学校では、安楽死についてディスカッションされることもあるという。

「これは決して珍しいことではなくて、公立も議論で安楽死をやることは普通なんだと。つまり生き死について常に議論して考えることがベースにあるんです。その措置があるから市民の動きから政治が動くということがあるんですけど、日本は安楽死のみならず、生きる・死ぬってことにタブー扱いをされていることが多いと思う」と西村氏。

「私の個人的な見解ではあるんですけれども、必ず人間は誰しも亡くなるわけであって、命について国民性としては蓋をして考えづらい、そういう風土はあるとは思うんですけれども、私はメディアとして議論すべきであると思う。この映画を作る意味としては、少しでも市民から動いて考えてもらう機会ができるだけ近づけばいいなという思いもあります。政治が動かなくても市民が動いて考えるような措置ができると政治は必ず動いてくるので、そういうきっかけとして、メディアとしてあるべき姿かなと思って作りました」と続けた。

 また、迎田さんの決断に対し、小川は「言葉にするのは難しいところはあるんですけれども」と前置きしながら、「率直に迎田さんという1人の女性を画面を通して拝見した時に、私も迎田さんと言葉を交わしてみたかったなとか、迎田さんと人生の話をしてみたかったなってそんな気持ちにさせられる、とてもお話に深みがあって、いろんな経験をされていて、かっこいい女性だなと思いました」と話した。

「おそらく葛藤してきたさまざまな事象があって、その中で得られた人生観っていうのが、最後の選択につながっていったんだろうなと思いました。ですので、人生の中で編み出されたものが、人生を貫いていくんだと感じましたし、周りの人間が何か口を挟んだりとか、とやかく言えるものではない、そうした領域が確実にあるんだなとそんな風にも思いました。その領域を私自身も、自分の人生の中で育てていかなければならないなという風に思いましたし、それは目の前にある一日一日を大切にすることだったり、周りの家族や自分自身を大切にすることだったりもすると思うので、まさに自分の生き方っていうことを考えさせられた、そんなきっかけになる作品でもあったなと思います」と心境を明かした。

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